生き残ればSOHO写野を通過するMAPS彗星2026/03/19

MAPS彗星(C/2026 A1)
クロイツ群として発見されたMAPS彗星(C/2026 A1)は順調に明るくなっているようです。近日点通過まであと半月あまり。どこまで増光するのか楽しみですね。崩壊しなければ4月4日に太陽をぐるっと周り、その前後に太陽観測衛星SOHOの写野を通過するでしょう。

3月18日時点の軌道要素をもとに、SOHOカメラ内をどのように移動するかシミュレートしてみたのが左図および記事下A図。自作プログラムによる作図で、SOHO位置は地球・太陽間に固定のため、わずかな違いはご容赦を。左図はLASCO-C3カメラ(広視野:対角約15.93°)、下A図はLASCO-C2カメラ(狭視野:対角約3.24°)。日時はUTなのでお間違えなく。ネットではC3画像が青色、C2は赤色に着色されたものをよく見かけますが、元々は白黒カメラですから色は後付けです。

図から分かるように、近日点通過時は恐ろしいほど太陽に接近しますね。1000個以上見つかっているクロイツ群彗星の近日点距離を集計すると右下棒グラフのようになります(2026年2月14日記事の図を再掲)。0.0045〜0.006AUの間に発見全体の76%が入り、大元はひとつの天体だったことが示唆されます。太陽半径(=0.0046526AU)に対してMAPS彗星は0.005736AU=太陽半径の約1.23倍のところを通るのです。しかも彗星は太陽系重心に対する移動だから、太陽中心が太陽系重心から少しずれているマージンを考えるとぶつかったり崩れ去る可能性は低くありません。

クロイツ群近日点距離分布
自己崩壊の可能性もありますね。直径が大きければ持ちこたえる、といった話はよく聞きますが、それよりも密度…どれくらい強く凝縮しているかが重要です。「いつの間にか固まった砂糖や粉洗剤」とか「噛まなくても口に広がるハンバーグや鶏肉つみれ」程度のくっつき度合いでは、例え直径100kmでもボロボロに崩れるでしょう。0.2AUあたりで耐えられなくなると聞いたこともあります。MAPS彗星がC3カメラに写り出す4月2日にはもう0.2AUを割り込んでますから、SOHOから見える位置まで生き延びてくれたら万々歳ですね。(SOHOは古いからカメラが先に壊れる心配も…。)

下A図で字が薄くなっている4月4日13時UT前後は太陽の向こう側を通ります。現時点での軌道要素では4日14:24UT(4日23:24JST)ごろ近日点通過なので、彗星核が最も強く軋む時間帯ですね。下B画像は2011年12月の太陽通過で生き残ったクロイツ群・ラブジョイ彗星(C/2011 W3)の動画。クリック再生してください。SOHOのC3画像を白黒反転強調し、尾の淡いところが見やすいように処理しました。背景には天の川や干潟星雲が見えてますね。この彗星が太陽近傍を過ぎる際、トカゲのしっぽ切りのごとく「尾を残して」いった様子が見て取れるでしょう。はてさて、こんなダイナミックな姿をMAPS彗星も見せてくれるかな?期待して待つとしましょう。

  • MAPS彗星(C/2026 A1)

    A.LASCO-C2写野予想
  • SOHOに写ったラブジョイ彗星(C/2011W3)

    B.ラブジョイ彗星(C/2011W3)


【クロイツ群はどこを通る?】
太陽に接近するクロイツ群はとても似た軌道を通るため、地球やSOHOから見る範囲では「いつ近日点を通るか」というタイミングが分かるだけで移動ルートがほぼ確定します。下図は各月ごとにSOHO写野のどこを通って太陽に近づくかシミュレートしたもの。彗星軌道はクロイツ群の平均的な軌道を通るものとしました。(※実際はもう少しばらつきます。)あちこちからやって来るのではなく、ピンク帯のところしか通らないんです。

たくさん見つかったSOHO彗星もこの性質のおかげでクロイツ群か、そうでないかがすぐ分かりました。逆にクロイツ群を探すにはSOHO画像の下記範囲をしらみつぶしに探せば良いのです。MAPS彗星も4月の図の範囲、上記のラブジョイ彗星も12月の範囲に入ってますね。

【クロイツ群彗星がLASCO-C3カメラ内を通るコース】
1月 2月 3月 4月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・1月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・2月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・3月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・4月
5月 6月 7月 8月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・5月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・6月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・7月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・8月
9月 10月 11月 12月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・9月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・10月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・11月
SOHO-C3・クロイツ群通過場所・12月

  • 自作プログラムによる計算です。
  • 実際のクロイツ群は分布の幅があるため、ピンクの帯が少し広がります。
  • この他のマースデン群やメイヤー群などの群彗星も同様にそれぞれの特徴をもった通過位置になります。詳しくはTHE SUNGRAZER PROJECTサイトの「C2/C3 COMET TRACKS」をご覧ください。