月食の準備はできたかな?2025/09/05

20221108月食経過と地球影
皆既月食直前ですが、あまり他のサイトなどに書いてない留意点などを書き出しておきます。

月の視直径変化
★月の大きさは変わる
知っていてもうっかりミスしがちなのが「月の大きさは変わる」ということ。今回のように事前の天気が芳しくないとき、例えば一週間前の月で試し撮りして「写野ぎりぎりに月が収まって良かった」と思っていても、当日全く収まらないことがあるんです。

右図は月食を含む16日間の視直径変化。実はご覧のように地上から見る月は一日の中でも1分角ほど変化があります。仮に8月30日に試し撮りした方は、当日の満月が1割り増しの直径になりますからご注意。基本的に大きく撮るのは良いことなのですが、ギリギリのレイアウトで考えてしまうと失敗します。

★地球影の合成は難しい
地球影の移動(20250908月食前後)
冒頭画像のように月食を並べて地球の影を描こうとするとき、問題になるのが「地球影中心の移動」。当然ですが月食中も地球は公転していますから、地球影もゆっくり動いています。「月周囲に写っている恒星位置を合わせれば影が浮かぶんじゃないの?」と思っている方は、地球影の動きを理解できてにないことになります。

しかも、地球影の移動も月の移動も直線的にはなりません。このあたりは2022年12月14日記事に詳しく書いてありますからご一読ください。右図で、地球影抽出を目的に意識しなくてはならないのは、緑とオレンジのグラフです。多くの月食図は青と赤のグラフ(地心計算)に倣って描かれており、しかも青線上の開始と終了位置を揃えていますから勘違いしやすいのです。月や地球影の動きはとても複雑です。

また、月の方向角も揃える必要があります。赤道儀で追尾している方は問題ありませんが、経緯台タイプのスマート望遠鏡などをお使いの方は画面内の月がどんどん回転しますから、そのまま並べても地球影は出てきません。

★デジカメ撮影はなるべくRAWで
単純なスナップをとるだけなら何でも良いけれど、後で綺麗にプリントしたいとか、独特の色合いを抽出したいとお考えなら必ずRAWフォーマットにしましょう。現像時に色温度を変えることができれば、ターコイズフリンジなども簡単に撮り出せます。なおホワイトバランスは皆既前の満月光によるマニュアル合わせがいいですね。オートは月食進行で色調が意図せず変わってしまうため避けるべき。

皆既月食の色考察(5)

色温度(CT)というのは対象画像をどういう色調にするか(あるいは撮影時に純ホワイトをどこに指定したか)を決める数値で、大抵のRAW現像アプリで変更ができます。ホワイトバランスという呼び方をされる場合もあります。厳密には異なるのですが、概ね同じことができます。上画像は満月および皆既中の月を様々なCTに変換した例。普通はCT=5000から5500あたり(フィルム時代なら昼光色)で白が正しくなります。今回は後半の月が低くなって大気による赤みを帯びたり、薄明が始まって青みが追加されますから要注意。いずれにしてもターコイズフリンジの色を出したいために「トーンカーブで青を強調」「赤を削れ」などと乱暴してはいけません。科学的に正しい処理を目指しましょう。(注:物理で言う色温度の数値とデジカメのCTの数値は色の結果が逆になります。)

CMOSカメラで撮る方はfits保存(ディベイヤー無し)をお勧めします。キャプチャソフトによりますが、たいていはfitsヘッダにホワイトバランスの記録項目がありますから、それを使った色温度変換が可能になります。スタック用動画ならディベイヤー無しでのSer形式一択。fits以外のSerや、Ser以外の動画フォーマットは色変更不可だったり圧縮で色がかなり削られます。配信や簡単閲覧が目的の動画なら何でも良いでしょう。ライブ配信などでターコイズフリンジを出すことは難しいかも知れませんが、映画撮影の要領で色温度変換用フィルターを付けると何とかなるかも知れませんね。

見事に晴れて、多くの皆さんが美しい月食を拝めますよう祈っております。