日暈と月暈の奇跡的コラボはいつ起きる?2020/06/04

20200603太陽の内暈
当地・茨城県南部はいまだ冴えない空模様が続いています。時折雲が薄くなって日が差しますが、太陽観察させてもらえる晴れ間すらないほど。

左は昨日3日16時前に見えた内暈。あまりハッキリしたものではありませんが、概ね半周以上つながって見えていました。他にハロ現象が見えないかしばらく粘ったけれど、何も確認できず…。新しい黒点が出たそうですが、太陽観察はできませんでした。気温と湿度が高く、不快な一日。30度を越す真夏日地点は64箇所に上り、肌寒かった6月1日を除けば5月30日からずっと50地点越えが続いています。

20200603月の内暈
こんな天気がくすぶる日は夜にも同じ様な気象光学現象が起こるもの。案の定、夜になって南中頃の月を見ると暈が見えました(右画像)。なんとなく外接ハロも出ていたようです。星の存在はほとんど分かりません。しばらくすると雲が厚くなり、月も見えなくなりました。

ところで、昼も夜も暈が見えるような天気のとき思い出すのがNASA「Astronomy Picture of the Day(通称APOD)」2015年4月3日号に載っていた一枚の画像。これを見た衝撃は忘れられません。リンク先をご覧いただくと分かるように、10時間をおいて同じ位置から撮影した2枚の写真…太陽の内暈と月の内暈、それに前景まで含め半々でピタリとつなげているのです。いつかこのような写真を撮りたいと思ってしまいました。

似た画像がUSRA「Earth Science Picture of the Day(通称EPOD)」2017年6月26日号にも載っています。同じ撮影位置・同じアングル・同じカメラというのは一緒ですが、APODのほうが10時間差の組写真なのに対し、EPODは撮影日が18日も違う組写真です。また写真分割も縦と横で違いますね。EPODは横分割なので、上側に地上が写っておらず、「同じ位置から撮った」ことを信じたとしても方位や高度を微妙にシフトして一致させた疑いが残ってしまいました。(それなら私の上の画像でもできてしまいます。)まぁそこは信じるとして…。

【太陽と月の赤緯が近い日】
日付赤緯差
(°)
太陽黄経差
(°)
月齢
2020年3月11日0.86207.4216.98
2020年4月6日-0.43159.2413.23
2020年10月1日1.27177.7114.17
2021年3月28日-1.13178.2915.19
2022年9月12日0.95209.1716.28
2023年3月9日1.46204.3017.33
2023年4月4日-1.21162.3713.90
2024年3月24日1.06173.2614.25
2024年9月18日-0.56187.8515.54
2025年9月9日1.60205.6217.37
2025年10月5日1.78159.5213.80
2026年3月5日-0.71206.1816.12
2026年9月25日-1.82167.1514.48
2027年3月21日1.50169.6813.23
2027年9月16日1.30188.0215.89
2028年3月11日-0.38188.7115.18
2028年9月5日-1.73198.2716.18
2028年10月1日1.89158.0312.86
2029年3月2日-1.23207.5617.19
2029年9月21日-1.28168.5813.18
2030年9月12日-0.25189.5014.66

  • 自作プログラムによる計算で、2020年から2030年まで下記ふたつの条件を満たす日を調べました。
  • 条件1:12:00JSTの太陽赤緯と翌0:00JSTの月赤緯の差が2°以内であること(太陽より月が北ならプラス)。
  • 条件2:上記時刻における月の太陽黄経差が150°から210°の範囲に入ること(概ね月齢12から17に相当/180°なら満月)。
それぞれの写真で“撮影の難しさ”がどれほど変わるか考えてみましょう。海外の気象事情は分かりませんが、日本に限って言えば、内暈は比較的見つけやすい現象です。昨日のように太陽と月の暈がどちらも出現するというのはそう珍しくありません。前出の組写真のすごいところは暈の大きさが同じ…という点じゃなくて、「同じアングルで撮った太陽と月の位置が一致している」ところなんです。

撮影位置を変えない前提なら太陽や月の日周ルートは「各天体の赤緯」で決まります。つまり赤緯がだいたい一緒なら、定点カメラに対して月も太陽も同じ位置に写ってくれるわけです。暈全体を写すなら短辺画角が最低50°程度の広角レンズが必要ですから、赤緯に1、2°の差があってもあまり目立たないでしょう。太陽と月の動きは日々バラバラなので、各赤緯が頻繁に一致することはないと直感でも分かりますが、完全一致などと厳しいことを言わなければひと月に1回程度はチャンスがあります。

ただしこれは月齢を考えない場合。太陽はともかく、月暈は満月に近くなければはっきりしません。満月期に限ると赤緯差が少ないタイミングは「年に数回」まで減ってしまうんです。また、同一日(24時間内)の撮影ということにこだわらなければ赤緯が近い回数はかなり増えます。月に一回は必ず満月期がやってきますから、何日かずらすことで太陽の赤緯に一致させれば良いわけです。EPODのような「赤緯一致まで待って撮影する」方法なら比較的モノにできるでしょう。だからこそAPODの画像には度肝を抜かれたのです。

向こう10年余りの満月期で「同一日に赤緯が近い」条件を満たしそうな日を計算し、左表に掲載しました。チャレンジしたい方はご利用ください。日付が春と秋に集中していますが、どうしてこうなるか考えてみましょう。空模様までは分かりませんから、これらの日に昨日のような暈が持続しやすい天気がやってくることに期待!!

【補足】
上では内暈を中心に考えましたが、「太陽と月が同じルートを通る」ことで分かる対比は他にもいろいろ考えられるでしょう。道に並ぶ街路樹やビル街の影なども、上記表の日付に太陽と月とで適切なオフセット時間をおいてタイムラプス撮影すれば、光源や影の方向が一緒なのに「昼」と「夜」という大きな違いがあるトリック動画だって撮影可能です。あるいは、上記表の日付にダイヤモンド富士が見える場所なら、半日後に近い場所からパール富士も見えるということです。頭を柔らかくして面白いアイディアを考えてくださいね。


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