天気が崩れる前に月をながめる2020/03/04

20200303_097149月
本日4日の関東は曇りや雨のところが多い予報ですが、早々に昨夕から天気が崩れ始めました。日暮れと共に西空に見え始めていた雲は、薄暮の終わりを待たずして上弦過ぎの月を覆い始めます。夜中の星々は最初から諦めていましたが、宵に月面だけでも撮っておこうと早めに準備しておいて正解でした。

なんとか雲の薄い時間を狙って1000コマ×2セット撮影したところで時間切れ。雲は次第に厚くなり始めました。どうにか仕上げたのが左画像です。撮影時の太陽黄経差は約97.15°、撮影高度は約65.7°、月齢8.8。月面X地形やLOVE地形はすっかり日が当たっていますが、まだ陰影が残っているので探し当てることができます。これくらいの月相ではアポロ11号、15号、16号、17号の着陸地点も探しやすいでしょう。いつもの倍の大きさで画像掲載しておきますので、ぜひ特定してみてください。

ティコなど明暗境界に近い光条はほとんど見えないけれど、太陽に面する月の東側にある光条はもうまっ白に輝いていますね。欠け際で恐竜の尻尾のように見えるアペニン山脈のモコモコ感もたまりません。薄く霞んでいたけれど思っていたよりも大気が安定していたので、そこそこ良像になってくれました。早いもので、もう一週間足らずで満月を迎えます。それまでの期間、月の南極側が見やすくなるでしょう。

今日の太陽2020/03/05

20200305太陽
二十四節気の「啓蟄」を迎えましたが、当地・茨城県南部では少し前から少群の蚊柱を目撃するようになってました。梅の花は連日の強風で散り散りになり、季節の巡りが早く感じます。昨日は一日中シトシト雨。今日は昼前から日差しが出始め、同時に風が強まっています。

20200305太陽リム
左は12:20過ぎの太陽。活動領域はありません。右上に大規模なプロミネンスが見えていますが、大気が小刻みに揺れ、おまけに水蒸気が濃いようで解像度が上がりません。左下、南極に近い位置にも明るいプロミネンスが見えました。これだけ高緯度に出るのは珍しいですね。測ったら、ちょうど南緯70°ありました。

今日は花粉光環が酷いだろうと思ったのですが、ほとんど見えません。10m/sに届きそうな強風によるホコリや濃い水蒸気のせいで見え辛くなっているのだろうと思われます。強風はゆっくり弱まりながらも明日夕方まで続きそうです。

今日の太陽2020/03/06

20200306太陽
昨夜から今朝は良く晴れて星月がとてもきれいでしたが、4m/sから5m/sの強風が吹き荒れ、機材を出しての観察は全くできませんでした。今日も良く晴れていますが強い風はまだ残っています。

20200306太陽リム
左は10:20前の太陽。太陽観察は風の影響を避けるため窓越しに室内で行っていますが、それでも窓から吹き込む風で機材が揺れて像が悪化してしまいます。相変わらず活動領域はありません。右上リムのプロミネンスが昨日より盛大に見えました。左下にも小さいものが出てますね。

強風のせいなのか、透明度は高いのに花粉光環がほとんど見えません。でも花粉は濃いようで、私自身の目鼻がダメージを受けています。

またしても月の観察中に天気が崩れる2020/03/07

20200306_13507月
昨夕から宵にかけて晴れていたものの天気は下り坂。明け方に観察したい天体があったので機材を用意していましたが、夜半過ぎには小雨まで降りだして撮影は叶いませんでした。

完全に曇ってしまう前にせめて月面だけでもと望遠鏡を向けました。左は21時少し前の撮影で、太陽黄経差は約135.07°、撮影高度は約76.0°、月齢11.85。大きな画像を掲載しておきますので、月面探険してみてください。南中直前の時間帯だったことと、赤緯が22°を越すような値のため、とても高い位置でした。今年この月相としては最高高度です。当地・茨城県南部は北緯36°前後なので、月赤緯が24°を越す時期が現れる今年後半は最高到達高度が78°に達します。2020年の地心視赤緯を右下図に示しました。みなさんの地域でも計算してみましょう(月南中高度概算=月赤緯−観察地北緯+90)。

2020年・月赤緯と朔望月
月面はちょうどアリスタルコス・クレーターが夜明けを迎える位置でした。コペルニクスやケプラーの光条が見え始まっています。ティコの光条は3月4日撮影画像に比べるとはっきりしましたね。秤動は西側が中央に寄る向きのため、東側が見辛くなっています。月面撮影の最中から薄雲が度々横切り出し、その後は皆曇のち小雨。少なくとも数日間は天気が崩れる予報です。

2000-2040年・月赤緯変化
【余談】
上に記した月の赤緯変化は一定幅ではありません。長期的に見ると緩やかに波打っています。2000年から40年間の赤緯をグラフにしてみました(左図)。上の図はこの中の2020年だけを取り出したもの。そういう目で見ると、年末に向かって振幅が少しずつ増えている意味も理解できるでしょう。

月軌道は黄道面に対しておよそプラスマイナス5.1°の傾き幅があるため、赤道座標系の赤緯最北値を考えると、黄道傾斜角(現在は約23.4°)プラスマイナス5.1°、つまりおおよそ18.3°から28.5°までの変動があるというわけ。この変動周期は約18.6年で繰り返されることが知られています。2020年はちょうど回復期で、これから次第にピークが大きくなってゆくところ。

2024年から翌年にかけて赤緯幅がプラスマイナス28°を越えます。北緯28°以南(奄美大島以南)では南中時の月が天頂を越えて北の空に入ってしまう時期がやって来るでしょう。もはや南中ではなく“北中”ですね。逆に北海道など北緯42°を越える地方では南中高度が20°を下回ります。例えば2024年6月23日0:00すぎに南中を迎える札幌から見た満月は、高度が18°足らずしかありません。月赤緯の振幅が大きい時期は月の出入り方位角の変動幅も大きくなります。国立天文台・暦wiki・月の公転運動「最北と最南」「月軌道の赤道に対する傾き」も参考にしてください。