昼も夜も晴れない1月2020/01/27

梅の花
関東の気象測候をしている幾つかの気象台が行っていた「目視観測」が一部廃止または機械による自動化され、まもなく1年が経ちます。当地・茨城県にある水戸気象台もその対象でした。少なくとも私にとって重要な値である「雲量」を観測していた県内唯一の地点だったのですが、2019年1月を最後に観測が中止されています。専門官による公的な観測値だっただけに代替が効かず、残念でなりません。

今年1月はまだ終わってませんが、今日から明日は絶望的なお天気。残り数日も怪しい。大雑把な感触として、この1月はあまり晴れなかったなぁと感じています。人間の感覚は時々化けるため、独立した複数ソースによるクロスチェックが欠かせません。例えば当ブログを開始した2014年秋以降、私は日中に晴れたら高い確率で太陽観察してきました。一瞬だけ晴れたから観察できた等の曖昧な日もありますが、「太陽観察できるほど雲が少ない時間があった」という意味では、観察回数が晴天率や雲量をある程度反映してると考えて良いでしょう。1月の太陽観察日数を数えると次の通りでした。

  • 2015年……23日
  • 2016年……25日
  • 2017年……25日
  • 2018年……23日
  • 2019年……24日
  • 2020年……16日(2020年1月27日現在)


これらの数値は「2020年1月の茨城は例年より天気が悪そうだ」との裏付けになると考えられます。(※旬ごとに数えると悪天が下旬に偏ってることも分かります。)2017年11月3日のブログ記事で気象台観測による「天気出現率」を使った茨城県水戸市の統計グラフ(右下図)を示しました。私の居住地は県南地区なので水戸から少し距離がありますが、この天気出現率は関東平野部でだいたい似た傾向と思われます。統計によれば1月は7割から8割の確率で晴れるはずで、上の太陽観察日数も2019年まではその通りになっています。ところが、今年はどう考えても低いですね。

天気出現率・水戸
夜間はどうでしょうか?実は気象台観測でも夜間の雲量は見ていませんし、日照率などの数値から夜間の推定もできません。運良く星仲間のかすてんさんが簡易的ながら2007年2月以降毎日の『星天日』を記録しており、本日のブログ記事でも同様に嘆いておられました。使用許可を頂いたので、かすてんさん計測の天体観望可能月別日数を図化してみました。

2007年1月はデータが無いそうなので、2008年から年ごとに夜数を示したのが下A図。季節毎にカウントし、積み上げグラフにしました。季節の分け方によって夜数が変化しますが、ここでは二分二至のある月から三ヶ月という分け方にしてあります。従って冬期は前年12月が含まれます。ここで気を付けていただきたいのは「天体観察可能な判断基準」。かすてんさんによれば「月が明るい夜は快星でも含まない」「判断は夜のごく一部」などといった曖昧さがあり、完璧なものではないとのこと。それでも長期に渡る夜間の空情報は滅多にお目にかかれませんから、とても貴重で素晴らしいと思います。比較のために気象庁アメダスデータを使い、近くのアメダスポイントである茨城県つくばの「日照率」を同じ季節区切りで集計・正規化したものを示します(下B図)。日照率は日中の空模様のみを表しますが、明らかに連動していませんね。「昼の天気が夜も続くわけではない」ということが何となく分かるでしょう。

年次に関係なく月毎の串刺し統計で夜数がどう変化するかも見てみました(下C図)。これは前述の天気出現率に近い傾向が出ます。かすてんさんによると今年1月のカウントは12夜(26日時点)、いっぽうグラフの1月平均夜数は20日越え。夜も例年より晴れなかったことが裏付けられます。グラフの極値幅も興味深いですね。春先から梅雨前、および梅雨明けの時期は星夜数が下がるだけでなく振れ幅が広くなるのが分かるでしょう。自分が観察してきた「夜の天気」感覚とも一致します。「そんなの当たり前」と思わずに、少しでも客観視できるような数値化が大切だと思うのです。微妙に変化する気候変化を見抜くことは、なかなか機械化できませんからね。

  • 天体観察可能な夜数の変化

    A.天体観察可能な夜数(年集計)
  • 日照率の変化

    B.日照率(年集計)
  • 天体観察可能な夜数

    C.天体観察可能な夜数(月集計)


【付記】
上記の「天気出現率」は曇りと晴れの区分けを雲量に頼っています。従って、今後全国で雲量の目視観測が廃止されたら、従来通りの天気出現率が集計できなくなるでしょう。日照時間などで再定義するしかないわけで、そうなると今までの出現率とは連続性が途切れますから、ゼロから作り直す必要が出てきます。

この記事ではたかが天気の統計に過ぎない話ですが、人の目で気象観測できる技術を磨いたり、それを後世に伝えることを途切れさせてはならないと思います。「災害で電気系統・通信系統をロストしたため気象データが得られない」といったことは昨年起きた自然災害を振り返るまでもなく想定される事態であり、機械にどっぷり頼る世の中の脆さは誰の目にも明らかではないでしょうか。どんなに世の中が発達しようと、人間の手足を使って「灯台守」を続けることは未来を照らし続けるために必要不可欠です。


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