さようなら、ボリソフ彗星2019/12/09

20191209ボリソフ彗星(2I・C/2019Q4)
昨夜から今朝にかけてもよく晴れ、透明度はグッと上がりました。天気や月齢、そして住宅地のため低空が観察できない環境を考えると、我が家からのボリソフ彗星(2I・C/2019Q4)はいよいよ最後の夜。(たぶん。)気を引き締めて観察に取りかかりました。

湿度が前夜より10%程低く、2時台にはもう氷点下。でも霜や凍結はほとんど見られません。光害はあるけれど低空の4等星が肉眼で判別できます。星像も落ち着いていました。住宅や街路樹などの障害物を抜けて写野に入ってきたところから薄明開始まで90分近く撮り続けることができました。

ところが彗星基準でコンポジットすると、彗星が見当たりません。なんと、恒星の軌跡にドンピシャで重なってしまったのです。幸い露出最後のコマでしたから、コンポジット枚数を二枚減らして事なきを得ました。最終夜にポカをやらかさなくて良かった…。写りも上々で、北西に向かう短い尾も健在ですね。どこからやって来たのか、どこへ向かうのか分からないけれど、ここまでの長旅お疲れ様でした、ボリソフ彗星さん。

(※なお、九州や南西諸島などでは1月初めくらいまで引き続き観察可能ですし、南半球はこれから本格的な観察シーズンを迎えます。すぐ消え去ってしまうわけではありません。)

昨夜の月2019/12/09

20191208_13666月(ミネラルムーン)
昨夜(12月8日)21時台に撮影しておいた南中過ぎの月を、ミネラルムーン色調で仕上げてみました。画像の上下方向が概ね天の南北方向です。

この色調による仕上げは12月4日の月面Xデーに続いて2回目。モノトーンの明暗だけでは分かり得ない様々な情報が頭に飛び込んできますね。青味の強いところは酸化チタンが豊富な領域、オレンジや赤味が強ければチタンや酸化鉄が少ない領域、また同じ色相なら明るい色ほど新しく、暗い(濃い)色ほど太陽放射による風化が進んでいるとされています。

酸化チタンや酸化鉄は、多いところで15wt%から20wt%(wt%は質量パーセント濃度)を越えるとんでもない含有率だそうで、資源が枯渇している人間社会にしてみれば喉から手が出る様な天体ですね。

もっとはっきり色分離したいところですが、私の技量ではこれが精一杯。元々満月相でないと色味の抽出が難しいですし、シーイングや機材性能の問題もあります。撮影当夜のシーイングはひどいものでしたが、月位置が比較的高い空だったので大気による色収差の悪影響が軽くて済みました。色彩を極限まで強調するので、色収差があると見苦しくなるのです。今後もいくつかの月相について撮りためていきたいと考えてます。