金星と木星が夕空で接近中2019/11/22

20191121金星と木星の接近
可視惑星は恒星より明るく見える場合が多いですが、特に金星と木星は全天中1位と2位の座(太陽と月を除く)。その両星が、最近夕空で接近しているのですから、普段天文に全く興味がない方々でも帰宅途中など気付くのではないでしょうか。

当地・茨城はこのところ夕方になると雲が湧いてしまうお天気でしたが、昨日21日は丸一日快晴でした。そこで、カメラを手に夕方の散歩がてら撮影に出かけました。近所の桜は半分以上葉が落ち、残ったものも紅葉や黄葉でした。枝だけになってしまった街路樹もあります。西空低空から淡い反薄明光線が伸び、行き着く先にはビーナスベルトが見えました。

お気に入りの場所に着くと、まだ明るい空に二つの惑星が見えています。紅葉や枯れ枝、たわわにぶら下がるモミジバフウの実などを構図にいれ、季節の黄昏が分かる様にしてみました(左上画像/画角はおよそ15°×10°)。時間が経つにつれて両惑星以外の星も見え出しましたから、それも分かる様に強調してあります。木星は衛星まで分かりますね。まだ真っ暗ではないからはっきりしませんが、画像上側に干潟星雲(M8)や三裂星雲(M20)も入っており、左のモミジバフウの向こうにいて座の「ミルクポット」や、そこから立ち上る「銀河の湯気」付近があります。なお、これだけ接近しておきながら、両惑星は別々の星座域にあるのが笑えます。

昨夕の離角は3.5°程度でしたが、ふたつの惑星は24日夕方に1.5°弱まで大接近します。随分前からベランダで見える天気のときに観察しており、接近前後の一週間ほど記録に残そうと思っていました。でも残念なことに今日は雨が降っており、数日は天気が崩れる予報。次に見るときはすっかり離れているでしょうか…。28日や29日には細い月も一緒に並びます。以前にも記事にしましたが、月・金星・木星の会合はなかなか起こりませんので、晴れたらぜひまぶたに焼き付けてくださいね。

【金星と木星の接近日・2019年−2024年】
日付時刻天体1天体2最接近
離角
2019年
1月23日(水)
0:15金星
(-4.3等)
木星
(-1.9等)
2.4°
2019年
11月24日(日)
21:30金星
(-3.9等)
木星
(-1.9等)
1.4°
2021年
2月11日(木)
23:43金星
(-3.9等)
木星
(-2.0等)
0.43°
2022年
5月1日(日)
5:56金星
(-4.1等)
木星
(-2.1等)
0.23°
2023年
3月2日(木)
14:05金星
(-4.0等)
木星
(-2.1等)
0.49°
2024年
5月23日(木)
17:19金星
(-3.9等)
木星
(-2.0等)
0.19°
今年は1月下旬の明け方にも金星と木星が接近していましたので運が良い人は二回楽しめたのですが、両惑星は来年にかけて離れてしまいます。次の接近である2021年2月11日は太陽から10°しか離れてないのでほぼ見えないでしょう。さらに次の接近は2022年5月1日で、このとき金星と木星は明け方の空で満月直径の半分程度まで大接近します。その数日前は月も一緒ですから、夢の様な光景を見ることができるかも知れませんね。

前出記事にも掲載しましたが、月・金星・木星相互の離角グラフを1年ごとに今年から6年ぶん作図してみました(下A−F図/自作プログラムによる計算値)。縦軸が離角を表し、グラフ下部のクリーム色範囲は離角5°以内。ここに入れば誰もが「近い」と感じます。またグラフが上端に達する(180°離れる)と二つの天体が自分を挟んで空の正反対にいることになります。

グラフが薄い色になっているところは該当天体のどちらかと太陽との離角が15°以内になっていることを表します。月なら新月前後、金星なら内合や外合前後、木星なら合前後の期間で、これらのケースでは「たとえ接近してても太陽に近くて見づらい」ことを意味します。

お月様の満ち欠け周期に合わせて「月と金星/緑線」、あるいは「月と木星/青線」のグラフはおよそ1ヶ月周期で上下します。ところが「金星と木星/赤線」は年に1回あるかないか。今年の様に太陽から離れた位置で二回も見ることができたケースはとても珍しいのです。両惑星接近のタイミングで月が近くにいなければ(=赤青緑グラフが同時期に下端へ達する)、三天体接近は起こりません。今後の観察スケジュールにお役立てください。

  • 2019年・月・金星・木星の離角

    A.2019年
  • 2020年・月・金星・木星の離角

    B.2020年
  • 2021年・月・金星・木星の離角

    C.2021年


  • 2022年・月・金星・木星の離角

    D.2022年
  • 2023年・月・金星・木星の離角

    E.2023年
  • 2024年・月・金星・木星の離角

    F.2024年


参考:
アーカイブ「天体の接近現象一覧」
超接近を迎えた金星と土星・明け方編(2016/01/09)
超接近を迎えた金星と土星・昼間編(2016/01/09)

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