赤星リレー、不完全燃焼2019/10/27

20191027The Garnet Star(μCep)
昨夜から今朝は曇りや小雨の予報でしたが、夜半ごろ少しだけ晴れ間がありました。長くは持たなそうだったので簡単に楽しめる対象を考えた挙げ句、時間の許す範囲で「赤星リレー」をすることにしました。その夜に楽しめる「スペクトルが赤寄りの星」を次々に観察するのです。(「青星リレー」をすることもあります。)「赤星リレー」は眼視確認だけでなく、一応撮影もするスタイル。通常はひとつの星の導入・観察・撮影に15分から20分程度の時間を割り充ててゆきます。

淡い巻雲がひっきりなしに通過していたけれど、雲が少ないところは星座がたどれるくらい晴れていました。まずは晴れ間があった北西に見えているケフェウス座μ星、通称「ガーネット・スター」を導入(左画像)。ファインダーでも良く見えており、赤さ加減が程良くて好きな星のひとつです。

20191027Mu-Cep by AAVSO
ちなみにガーネット・スターは肉眼でも見える脈動変光星(SRC型/semiregular variable)です。右図はアメリカ変光星観測者協会(AAVSO)の観測グラフ。昨日以前の1000日間を描いてみました。周期730日程度と言われますが、右図では700日を割り込んでる様な…?

北天が曇り始めたため、晴れ間が残っていた南天へ。くじら座ο星「ミラ」が薄雲越しに見えるほど明るかったので、ささっと導入。5分ほど撮影したところで曇ってしまいました。微光星まで写し切れていませんが、記念に載せておきます(右下画像)。

20191027Mira(οCet)
このあと幾つか望遠鏡を向けていったのですが、ことごとく雲に追いつかれてしまいました。1時間ほど粘りましたが雲は厚くなるばかり。せめてルビー・スターやクリムゾン・スターを撮りたかった…。

メシエマラソンのようにひとつのテーマを決めて全天から100個程度の天体をリストアップ、それを如何に正確で素早く見て回れるか競う、と言った『観察競技』という楽しみ方をTHE ASTRONOMICAL LEAGUEという団体が行っています。数年前に炭素星(Carbon Star)に興味を持ち、全天の何十個か撮り回る過程でこの『競技』を知りました。

個人的にはのんびり見たい性格なので、競争にしてしまうのはどうかとも思いますが、1等星巡りとか、月のクレーター巡りとか、テーマを打ち立てて見比べる楽しさはよく分かります。リスト完全制覇するのに、別にひと晩限定にしなくてもいいのです。1年かかっても、10年かかっても構わないことです。グループで結果を見せ合って、「どの天体が好きか」「導入に手こずったのはどれか?」などとワイワイ盛り上がるのも楽しいですね。

今回は不完全燃焼でしたが、晴れ間があったら再挑戦したいと思います。一晩で10個から20個程度の天体巡りがちょうどいいペースでしょう。自動導入全盛期ですが、私は昔ながらの「ファインダーのみでマニュアル導入」というローテク挑戦をお勧めします。人間が本来持っている空間認識の感覚が研ぎ澄まされるからです。来年の東京オリンピックに合わせて、みなさんもいかがですか?

【追記】
スペクトルに応じた星のリストを作る上で参考になるのが、大阪教育大学宇宙科学研究室の公開している「スペクトル物語~デジタルアトラス~」です。シンプルですが、とても有用なサイトと思います。

掲載されている恒星のうち、M型やK型をピックアップすると赤やオレンジの星を見ることができます。またO型やB型に望遠鏡を向ければ青白い星が見つかるでしょう。(※ただし見た目の色はこんな単純な分け方で済まないことも覚えておいてください。)例えばオリオン座のα星「ベテルギウス」はM型のページに、同β星「リゲル」はB型のページにありますね。

季節ごとにまとめておくと(→赤経順に並べる等)、星巡りに都合の良いマイリストを作ることができます。こうしたスキルを身に付けるのも大切なことです。等級なども含めて更に暗い星までリスト化したいなら、ヒッパルコス星表などスペクトル型または色指数まで載っている本格的なデータベースを使うと良いでしょう。M型でB-V色指数が2を越える様な星をピックアップすれば、間違いなく「真っ赤」な星リストができます。(例:ガーネット・スター…ヒッパルコスNo.107259、スペクトルM2型、B-V色指数2.242。)なおミラのB-V色指数は0.98で深紅というほどではありませんが、赤色巨星なので、色指数と表面温度との関係が主系列星と異なります。(※星の色合いを決定づけるのは、色指数ではなく表面温度です。)


参考:
台風一過の月夜に輝くミラ(2019/10/13)
ガーネット、ルビー、クリムゾンと言えば?(2018/01/17)

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