超新星が複数発見されている銀河は?2019/05/04

20190503SN2019ehk
4月29日、宵空高く登るかみのけ座のメシエ天体「M100」に超新星が現れ、ポーランドのJarosław Grzegorzekさんにより発見されました。発見光度は16.5等でしたが、その後15等後半まで明るくなっています。

左画像は5月2日から3日にまたがって撮影したもの。薄雲がとめどなく飛来して30分も露出できませんでしたが、超新星が明るくなっていて良く写ってくれました。先日ブラックホール画像が公開されたM87からは見かけ上4°も離れていません。ぜひ望遠鏡を向けてみてください。

古くからの星仲間であるmeinekoさんも5月2日に撮影されていますが、同氏の記事に「超新星が複数発見されているM天体」についての言及があり、とても興味を覚えました。M天体に限らないのですが、これまでにふたつ以上の超新星が発見された銀河は多数あって、「偏りがあるのかな?」と感じていたのです。いい機会なのでざっくり調べてみました。適切なデータベースが見つからなかったので、よく拝見していた超新星サイトのアーカイブを利用させていただきました。

超新星が出現した母天体(Host Galaxy)をM天体、NGC天体、PCG天体、UCG天体、IC天体に絞って集計すると、複数発見されているケースは500個を越えました。この中から特にひとつの銀河で4個以上あったものを下表に掲載しておきます。(※短時間で作業したため、間違いがあるかも知れませんのでご注意ください。)

なお、M100の超新星は今回を入れると6個目となります。M天体の中ではトップクラスに入るでしょうか。もし偏りがあるとしても、宇宙の揺らぎなどではなく人間的な理由…例えば観測者が見やすい天体とか、観測者の住む地域の気候に影響されるとか、そういうことも考慮する必要があるかも知れません…。少なくとも捜索者が少なかった時代については、特にそう思います。

【4個以上の超新星が発見された天体・2019年4月中旬までの集計】
天体名発見された超新星
IC11292003K・2012cs・PSN J15320170+6814480・2018bek
IC51452002dn・2003hy・2010iq・PSN J21542359+1509224
M511945A・1994I・2005cs・2011dh・AT2019abn
M661973R・1989B・1997bs・2009hd・2016cok
M831923A・1945B・1950B・1957D・1968L・1983N
M991967H・1972Q・1986I・2014L
M1001901B・1914A・1959E・1979C・2006X
M1011909A・1951H・1970G・2011fe・PSN J14021678+5426205
NGC3091999ge・2008cx・2012dt・2014ef
NGC10841963P・1996an・1998dl・2009H・2012ec
NGC13161980N・1981D・2006dd・2006mr
NGC13651957C・1983V・2001du・2012fr
NGC14481983S・2001el・2003hn・2014df
NGC15591984J・1986L・2005df・2009ib
NGC21462005V・AT2018iyu・AT2018hvo・2018zd
NGC22071975A・1999ec・2010jp・2013ai
NGC22761962Q・1968V・1968W・1993X・2005dl・2016gfy
NGC24662003gh・ASASSN-14dd・2016iye・AT2016cnz
NGC27481985A・2013ff・PSN J09132750+7627410・2017gkk
NGC27701999eh・2007uy・2008D・2015bh
NGC28411912A・1957A・1972R・1999by
NGC31471972H・1997bq・2006gi・2008fv
NGC31841921B・1921C・1937F・1999gi・2010dn・2016bkv
NGC32562001db・PSN J10275082-4354034・AT2018cux・2018ec
NGC33671986A・1992C・2003aa・2007am・2018kp
NGC36311964A・1965L・1996bu・2016bau
NGC36901992bu・1993G・1998T・2005U・2010O・2010P
NGC39381961U・1964L・2005ay・2017ein
NGC39471972C・2001P・2006aa・2013G
NGC40511983I・2003ie・2010br・AT2018ctz
NGC49391968X・1973J・2008aw・2014B
NGC54681999cp・2002cr・2002ed・2005P・2018dfg
NGC62402000bg・2010gp・2013dc・PSN J16525760+0223367
NGC6641996bw・1997W・1999eb・AT2018dcr
NGC67541998X・1998dq・2000do・2005cu
NGC6822TCP J19445890-1451183・AT2016evg・AT2016erh・AT2016erg・AT2016erf・AT2016esd・AT2016esc・AT2016esb・AT2016esa・AT2017fvz
NGC69071984V・2004bv・2008fq・2014eh
NGC69461917A・1939C・1948B・1968D・1969P・1980K・2002hh・2004et・2008S・2017eaw
NGC69511999el・2000E・2015G・AT2016ejj
NGC73722009hj・2010if・AT2016iyq・AT2017itc
NGC77532006A・2006ch・2013Q・2015ae
PGC599902002bw・2004iq・2008cs・2015cb
UGC47982005mf・2013V・PSN J09084248+4448132・2019cad
UGC70202001cf・2006C・AT2017hat・2019uo



リュウグウの母天体候補を観察・その22019/05/05

20190505小惑星Polana
長いゴールデンウィークの割に当地・茨城県南部の夜がしっかり晴れたのは昨日まで一夜もありません。でも昨日の夜半前から今朝にやっと安定した晴れ間が訪れ、新月夜を堪能することができました。4月28日記事で取り上げた小惑星リュウグウの母天体候補観察が中途半端だったため、明け方の観察目標に据えてさっそく準備。

小惑星たちは明け方にやっと昇ってくるやぎ座にいますから、1回の観察でひとつ撮影が時間的限界。前回はオイラリア(495 Eulalia)を撮影したので、今朝はポラナ(142 Polana)にしました。1時間近く露出して半分は薄明にかかってしまいましたが、明るいポラナは鮮明に写ってくれました(左画像)。移動量はオイラリアと同程度です。

ポラナが登るあいだせっかくの快星なので、いくつか天体を撮影しながら待ちました。夜半前から日付越しに狙ったのは天頂を通過していた「かみのけ座銀河団(Abell 1656)」(下A画像)。数え切れないほどの銀河が写っています。2017年5月1日記事のヘルクレス座銀河団(Abell 2151)のように銀河のキャプションを付けようと思いましたが、丸1日かかりそうなので諦めます…。いずれ時間が余ったときにでも…。

その後木星に続いて南中を迎えつつある三裂星雲(M20)をロックオン(下B画像)。夜半前は霞んでいましたが、この頃になると透明度が少し上がってきました。光害たっぷりの平地で撮ってますが、工夫すればこれだけ写ってくれるので有り難いですね。ただ、やや低空なのでスカイフラットの補正がなかなか困難です。

また好条件での天宮2号通過があったので、ポラナ撮影と平行して観察しました(下C画像)。面白かったのは天宮2号がイリジウム衛星のように一瞬オレンジ色に輝いたこと。マイナス2等くらいはあったでしょうか。偶然にも太陽電池パドルが太陽を反射したのだと思われます。天宮2号でこれを見たのは初めてでした。(※9秒露出+1秒間欠で撮ってますので、衛星の軌跡が点線になっています。実際に一瞬消えるわけではありません。)

  • 20190505かみのけ座銀河団

    A.かみのけ座銀河団(Abell 1656)
  • 20190505三裂星雲

    B.三裂星雲(M20)
  • 20190505天宮2号

    C.天宮2号パス


参考:
リュウグウの母天体候補を観察(2019/04/28)
リュウグウの母天体候補を観察・その3(2019/05/16)

今日の太陽とハロ現象2019/05/05

20190505太陽
明け方まで晴れていましたが、日が高くなると少し雲が出て日差しが弱くなりました。天気がまた不安定になっているようです。

20190505太陽リム
左は13:30過ぎの太陽。薄雲がなかなか取れないので、そのまま撮影しました。活動領域12740は今日も7:34JSTごろをピークとしたC2.1クラスのフレアが発生しました。淡いダークフィラメントが近くにあるようです。プロミネンスは左上や左下に特徴的なものが確認できます。右リム側にも結構出てますね。

昼前後にはごく淡い内暈が出ていましたが、その直下を良く見ると、絶望的に淡くて短い環水平アークが出現していました(下A画像)。これは慣れてないと見逃すレベル。デジカメ画像より肉眼で見たほうが発色など分かりやすかったです。午後太陽が少し低くなってくると内暈がはっきりしてきました(下B画像)。上下に比べて左右がはっきり見えないので、外接ハロの成分が多めなのかも知れません。

  • 20190505環水平アーク

    A.環水平アーク
  • 20190505内暈

    B.内暈


アヤメの季節にアイリス星雲2019/05/06

20190506アイリス星雲
昨夕は霞んでいたものの良く晴れ渡っていました。疲れていたので夜半まで仮眠、その後起きてみるとまだ晴れています。予報では曇りだったのでラッキーと思い、明け方の小惑星リュウグウ母天体候補観察に期待して準備しました。

明け方まで南天の天体でも撮ろうかと撮影開始した途端、南から大量の雲が…。仕方なく星が見えるエリアに写野を変えつつ再撮影するも晴れ間が5分と持たず、写野はどんどん北へ北へ。北アメリカ星雲を経てとうとう北天のアイリス星雲までたどり着いてしまいました。この星雲も薄雲越しに15分程度しか撮影できませんでしたが、いちおう今朝方の唯一の成果。ザラザラだし不完全ですが掲載しておきます。みずがめ座η群と思われる流星が雲間に見えたのは願ってもない幸運でした。

ケフェウス座のアイリス星雲は梅雨が終わる時期から初秋に撮り頃なので、一晩中北極星より高くならないこの時期にはまだ不向きでしょう。でも、考えてみればこどもの日や立夏にアイリス星雲を撮るのも乙なもの。困難なことに敢えて挑戦するのもアマチュアならでは。無意味だとか、効率悪いとか言って最初から壁を立てることなく、自由な発想でやってみる過程が楽しいではありませんか。