海上で再発達するサイクロン「OWEN」2018/12/12


20181212-0000UTサイクロンOWEN
今年も森林火災や熱波被害など自然災害が報告されているオーストラリアですが、今日現在、北部のカーペンタリア湾ではTropical Cyclone「OWEN」が勢力を強めています。左は今日12日9:00JST(0:00UT)の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。画像中央の渦巻きがOWENです。南半球ですので、日本にやって来る台風とは渦が反対巻きですね。

実はこのサイクロン、11月末にヨーク岬半島を挟んで遥か東のソロモン海で発生したもの。オーストラリアからかなり離れたところで12月3日前後に「Tropical Storm」レベルの強さになりました。その後すぐ衰えながら西進し、ヨーク岬半島を横断してきたのです(右下図参照)。

20181212サイクロンOWEN
このまま消えるだろうと思いきや、カーペンタリア湾に入った途端に急成長を遂げ、今後数日内には最大風速80ノット越えという予報がJoint Tyhoon Warning Centerから出て、驚かされました。いわゆる「復活台風」のような状態です。進路もふたたび東進に転じ、やって来たコースを逆走、その後はオーストラリア東海岸に沿って南下するようです。

いま南半球は北半球で言うところの真夏に突入してますが、カーペンタリア湾は今に限らず多くの季節で30度以上、北半球の冬期に相当する6月前後でも沖合で25度以上をキープする海です。左下図はNOAAが公開している海面温度(Sea Surface Temperature/SST)を使って、今日現在最新の12月10日SSTデータを前出地図にマッピングさせたもの。湾内がとても暖かいことが分かりますね。他からやって来た弱い嵐を再び発達させるだけのエネルギーを湛えているようです。

20181210海面水温
日本付近では経験上「いったん上陸した台風は弱まって、海上へ出た後に再発達することはない」という思いこみがありますが、赤道近隣ではそうならないことが多いでしょう。フィリピン付近でも今年の1号、9号、29号などのように諸島を通り過ぎて南シナ海に入ってから発達した台風がありました。

「嵐は陸を過ぎたら勝手に弱まる」のは日本付近に限った話で、それも絶対そうなるとは言えないことです。日本に生まれ、一生涯日本から出ないならともかく、我が国の非常識が他国では当たり前といったことは気象に限らず良くある話。諸外国独自のお国事情を知っておいて損はないと思います。