火星の衛星撮影に挑戦2018/08/02

20180802火星と衛星
昨夜から今朝は夜半過ぎまで雲が多く、予定していた観察が思う様にできませんでした。それでも低くなった火星に望遠鏡を向ける時間があったので、念願の「火星の衛星」撮影にチャレンジしました。

前夜までより透明度が落ち、また大気の揺らぎも最悪です。練習のつもりで撮影、画像処理を施してなんとか像を取り出しました(左画像)。火星の衛星であるフォボスとダイモスは共に約11等で、撮影中は全く見えませんから、全ての処理が終わるまで写ってるかどうかも分からないのです。撮影は火星の位置と計算した画角のみが頼りです。

右下図は撮影時刻のGuideによる火星周囲星図。近くにあった同光度程度の恒星も一緒に写り、位置関係も合っていますので、ノイズなどではないことが確認できました。なお衛星像は白黒撮影で、直後に撮影した火星のカラー画像を合成しています。火星から斜めに伸びる筋は望遠鏡の副鏡スパイダーによる回折光条、また格子状に出ているゴーストは撮像素子から投影された回折パターンの内部反射像と思われます。

20180802火星周囲の星図
2年あまり前の前回の接近時にも衛星撮影に挑戦しました。光学系も画像処理方法も全く違いますが、毎回それなりに苦労し、また楽しくチャレンジしています。火星本体が地球から遠い時期は衛星光度も4等級以上暗くなってしまい、また火星に近いため分離撮影が難しくなります。まさに大接近時ならではのテーマと言えましょう。

もう少し早く晴れていたら火星南中と両衛星最大離角のタイミングがバッチリだったのですが、曇っていてダメでした。このような良いチャンスはなかなかありませんが、火星が離れてしまう前に機会があれば、今度は衛星の動きも併せて観察したいと思います。

【付記:両衛星を同時に撮影できる条件とは?】

2018年8月一週目・フォボスとダイモスの動き
「フォボスとダイモスを同時に撮影する」ときの条件を考えてみましょう。例えば両衛星の火星に対する位置は2018年8月最初の六日間なら左図のようになります。火星中心が原点(赤経差=0)にあるものとし、赤経方向=天の東西方向の離角をグラフにしました。

火星の視直径は8月いっぱい20秒角を越えているので、赤経差が0プラスマイナス10秒角内なら間違いなく衛星と火星が重なって見えません。また火星のすぐ側も眩しいため、20秒程度離れていても検出は困難と考えたほうが良いでしょう。できるだけ離角が遠い時期を狙う必要があるのです。火星は衝から日があまり経っていませんので、8月内なら日本全国だいたい真夜中の1時間前から数時間前に南中するでしょう。南中のころ一番高く見えますから、天気の心配さえ無ければ一番鮮明に写せる時間帯です。

2018年8月3日 22:20 - 23:10
2018年8月6日 22:50 - 23:00
2018年8月7日 22:10 - 22:30
2018年8月8日 22:10 - 22:20
2018年8月10日 22:30 - 22:50
2018年8月12日 21:50 - 22:00
2018年8月15日 21:40 - 22:30
2018年8月19日 21:20 - 22:00
2018年8月22日 21:40 - 22:00
2018年8月27日 20:50 - 21:30
2018年8月31日 20:40 - 21:00
この時間帯にちょうど両衛星が火星から離れてくれないと、火星の明るさに負けてしまいます。輝度差が極端に大きな三重星を写す感覚ですね。(※南中時刻は観測地経度に左右されますが、日本は135度プラスマイナス十数度に収まるので、南中時刻のずれ幅は中央値プラスマイナス1時間を越えません。)

ということで「南中時刻プラスマイナス30分に、フォボスが火星から25秒角以上、ダイモスが50秒角以上離れるチャンス」を探すことになります。フォボスが写ればダイモスも問題ないので離角条件を同じにしても構わないのですが、より遠くにあるほうが写しやすいのでこの条件にしました。

概算した結果は右表の通りです。10分刻みの大雑把な計算ですが、ひとつの目安になるでしょう。9月以降でも大丈夫だとは思いますが、だんだん火星も衛星も遠くなり、南中時刻も早くなってきます。チャレンジする方はお早めにどうぞ。

  • 右表の南中時刻は関東基準ですが、日本国内なら問題ないでしょう。
  • 赤経差のみの考慮なので、赤緯差まで考えると離角が若干大きく見込めます。
  • 2つ同時、あるいは南中時にこだわらなければ、ほぼいつでも可能と思います。


参考:
2018年火星の地球接近に関する記事(ブログ内)

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