天宮1号落下、ふりかえり2018/04/03

20180402天宮1号の落下地点
昨日4月2日に天宮1号が太平洋上空で大気圏に再突入し、「落下」という事態になりました。中国当局は「制御下による落下」と主張しているようですが、宇宙関連専門家の大部分は、2016年からずっとコントロールを失ったまま今回に至ったという見方が大半です。依然として最後の状況は分かっておらず謎に満ちたままです。

落ちた場所および最後の一周を左地図に示します。サモア島やクック島の近くですね。日付変更線を跨いだ近くなので見辛いですがご容赦ください。発表された落下時刻は日本時間で9:15または9:16ですが、この地図は3分程度ズレています。元々概算なので1分内外の誤差が含まれることに加え、急激な軌道変化による予測と実際のズレもあると思われます。いくつかのニュースで「どの陸地からも一番離れている海上地点(Oceanic pole of inaccessibility)」…俗称「ポイント・ネモ」で知られる海域に近いと報道されましたが、実際はかなり遠いです。(※天宮1号の軌道傾斜角が約42.7°なので、南緯49°近くのポイント・ネモまで到達できません。)また用済み人工衛星を誘導して落下させる「宇宙船の墓場(Spacecraft cemetery→Wikipedia)」からも少し遠いです。

地図を見るとわずか二十数分前に京都や滋賀、三重などの上空を通っています(右下図)。このときの高度は100kmから120kmの間と考えられ、領空侵犯ギリギリでした。お近くの方、Jアラートなどの警報は鳴ったでしょうか?それとも、道行く街の人は何の関心も危機感もない、いつもと変わらない年度初めだったでしょうか?しっかり調べたわけではありませんが、今回の落下に関して国内での公共期間からの追跡モニターや現在位置情報等が全く流れなかったことに驚きました。私が知らなかっただけ?

20180402天宮1号の落下直前・日本付近
「どうせ落ちない」「自分は大丈夫」「人に当たる確率は宝くじ一等より低いんでしょ?」「回りは誰も騒いでないよ?」といった声をたくさんたくさん聞きました。これって地震とか火山噴火とか津波の時に良く聞いた言い訳ですね。正常性バイアスに変な集団心理まで加わった結果でしょうか。

安心なら安心で良いのです。なにも四六時中気を張らなきゃいけないなんて言いません。落下の危険は限りなく低いとしてもゼロではないから、「安心できる根拠」が欲しいと思いませんか?ミサイルのような攻撃性がなくても、せめて「高度が高いのでまだ落ちません」とか「どこの街を何時に通過しました」「落下地点はここでした」といった公的な情報を、最後の一日だけで良いから国や公共機関が逐一かつ大々的に伝えるべきだったのではと感じました。(全メディアを見てたわけじゃないから、どこかの放送局でL字テロップなど流れたのかも知れませんが…。)

災害が起きたとき、後付けで「想定外だった」等どんな言い訳もまかり通ってしまう時代。そろそろそんな時代遅れの思考と決別すべきでは…と考えた次第です。

参考:
2018年春に落下予想の「天宮1号」に関する記事(ブログ内)

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