今日の太陽2018/01/30

20180130太陽
当地・茨城県では昨夜から今朝にかけ、特に県央や県北で夜半前を中心に降雪がありました。私の住まいは県南ですが、こちらは小雨で済みました。その後明け方近くまで霧に覆われ、晴れたのは薄明が始まる頃。朝からはよく晴れています。

20180130太陽リム
左は11:20過ぎの太陽。よく晴れているのに大気の揺らぎが大きく、やや不鮮明でした。光球面は静穏です。右上リムにあった大きなプロミネンスは消えており、左上リムのものは光球内に入ってきました。また昨日の観察で左下にぼんやり見えたプロミネンスも連続して見えてますね。

草津白根山にできたクレーター・チェーン2018/01/30

20180127-GSI草津白根山・航空機SAR
草津白根山の本白根山付近で1月23日に発生した噴火から一週間。監視カメラや地震計がない場所での噴火には、多くの人が驚かされたことでしょう。冬まっただ中なので雪や雪雲も多く、直接の視認観測が困難なシーズンでもありますね。28日夜から今度は山形県の蔵王山で火山性微動を観測というニュースもあり、不安の種が増えました。。

昨日に国土地理院が発表した航空機による合成開口レーダー(SAR/Synthetic Aperture Radar)観測の画像を見ました。左に資料の一部を引用します。(元資料はこちら。)赤矢印のところが今回噴火したとされる位置。特に2本の矢印で挟まれた火口は横に伸びた形状で、複数の火口が鎖状になったような形状です。

これを見てクレーター・チェーンを思い浮かべた天文ファンは多いことでしょう。月面など大気がない太陽系天体に多く見られるクレーターは、火山の火口に似た形状です。現在ではクレーターが火山由来ではなく、小天体がぶつかった跡、いわゆる「インパクトクレーター」であるとされます。クレーター・チェーンあるいはチェーン・クレーターというのは、小天体が落下する前に何らかの理由で崩壊し、複数の隕石となって一方向に並んでぶつかったものと言われます。

分裂したシューメイカー・レビー第9彗星


20060322シュワスマン・ワハマン第3彗星
1993年に発見されたシューメイカー・レビー第9彗星(右画像上/NASA-HST画像より引用)は「木星に捕獲され、潮汐力によって頭部が多数に分裂した彗星」として有名になりました。最終的に木星へ衝突し、黒い痕の列を見たときは衝撃でした。またこれも2006年春頃リアルタイムで見たシュワスマン・ワハマン第3彗星(73P/右画像下)も数十個もの彗星核に分かれた彗星でした。頭部が分裂する彗星はたまにあり、こういう天体が月面にぶつかればクレーター・チェーンになるわけです。

シーイングの良い夜によく調整された望遠鏡で月を眺めると、あちこちにクレーター・チェーンが見つかります。下のA図は有名なクレーター「コペルニクス」付近を月探査機LROの標高データを使って描いたもの(→参考記事)。ざっと見ただけでも赤矢印のあたりにクレーターが列を成していますね。B画像は拙いですが同じコペルニクスの実写を並べました。またC画像は2016年2月28日記事に載せたアポロ16号着陸地付近。この画像下中央にも左右に並ぶクレーター・チェーンがありますよ。


  • コペルニクス(LRO-dem)

    A.コペルニクス(LRO標高データ)
  • 20150430コペルニクス

    B.コペルニクス
  • 20160228アポロ16号着陸地付近

    C.アポロ16号着陸地付近


富士山周辺の赤色立体図
今回のクレーター・チェーンは火山由来ですから、月面にあるようなものではなく、地球の火山に見られる火口列に近いものでしょう。火口が列を成すクレーター・チェーンは富士山や大島三原山を始め、様々な火山で見られるようです。

左図は国土交通省・富士砂防事務所が公開している富士山周辺の赤色立体図から抜粋引用した地図。(元資料はこちらから。)御庭、奥庭近くの火口列や長尾山近くの氷穴火口列はよく知られています。個人的に印象深いのは三原山の火口列。リアルタイムで噴火のニュースを見た世代なら、列になった噴水のごとく横並びに吹き出す噴火の映像を覚えていることでしょう。海外ではハワイのキラウエア火山にある、そのものずばり「Chain of Craters Road」沿いの火口列が有名ですね。そう言えば「すばる望遠鏡」の建っているマウナケア山も休火山とは言え火山なので、大丈夫でしょうか?

皮膚病の中には血管や神経に沿って発症するものがあると聞きます。脳卒中や心筋梗塞なども血管位置や血流に大きく関わる病気です。現代の噴火予知は「必要最小限の触診で体内の大病を見つける」ような心許ない手法に頼っています。もし地下を縦横無尽に流れるマグマをレントゲンのように直接診る方法があれば、あるいは医療マイクロロボットのように高温高圧に耐えうるセンサーユニットを地球へ“注射”して内部の「マグマ梗塞」を見つけ出すような方法を開発すれば、噴火予測も格段に進歩するでしょうか。昨年はジェット機で台風の真上まで飛び、計器を直接投下して構造解析をする試みも始まりました。日本ならではの環境と大胆な発想、技術を活かして噴火の悲劇を未然に防いでほしいものです。