初めての恒星間移動天体か?「A/2017 U1」2017/10/28

★この天体は、後にオウムアムア(ʻOumuamua)という正式名称が付きました。符号も「A/2017 U1」、「C/2017 U1」、「1l/2017 U1」と変遷しています。

A/2017 U1
私たちは太陽系のことをよく知っている(つもり)が故に、地球に接近する小惑星などの天体を「太陽引力に捕まった天体」、つまり太陽系に属した天体だと思い込みがちです。ところが先週19日に発見され「A/2017 U1」という仮の名が付いた天体は、どうも太陽系の外からやってきてどこかへ去って行く天体という可能性が高いそうです。上はNASAサイトからの引用で、A/2017 U1の運動シミュレーション。(元サイトはこちら。)たまたま地球近くに来たため、ハワイ大学のパンスターズ望遠鏡で発見されたようです。

小惑星や彗星などの小天体は周期的に太陽を回るものだけでなく、何千年、何万年といった長周期、または、たった一度しか太陽系中心近くにやってこない天体も存在します。それらも含めて、広い意味で太陽系近傍に群れを成す天体というイメージがあります。遠くから来る天体の起源を「オールトの雲」のような仮説領域に押し込める考え方も、「最外周まで含めて太陽系は閉じている」思考に捕らわれてるからではないでしょうか。よく説明図にある太陽系外殻のようなオールト雲のイメージを私はどうしても描けなくて、「どうして外周に球体を作ってしまうのか」分かりません。

むしろ「広大な空間に退屈している幼児さんがいっぱいいて、所々にいる保育士さんに集まっていく」イメージを持っています。保育士さん(恒星)の回りは空間密度の偏りが激しく、また誰にも捕まらない自由な幼児さん(小天体)もたくさん駆け回っている…そんな宇宙ですね。当然ながら実際ははるか外側まで宇宙はつながっています。地球大気が微粒子を弾くように「太陽系外から飛来する小天体を何らかの作用が拒んでいる」といった理論は今のところ聞いたことがありません。今回発見されたA/2017 U1は小惑星か彗星かも分からない天体ですが、何らかの理由で「太陽系外の別の恒星間からやってきた」と見なされたわけです。肝心なその理由がニュースに明記されてないので分かりませんが、文意を汲むと「異常な移動速度」と「通常の太陽周回軌道に当てはまらない」ことがキーになっているようです。

MPC(Minor Planet Center)には暫定で双曲線軌道が発表になっていました。(※楕円軌道以外の天体はすべて『一度きり』です。)あまり意味が無いかも知れませんが、太陽近傍の軌道図と、地球から見たA/2017 U1の視位置(1985年から2050年まで計算)を描いてみました(下のA・B・C図)。C図を見ると分かりますが、天体はこと座のほうからやってきて、地球軌道の南側で『スイングバイ』するようにヘアピンカーブをして、ペガスス座のほうに飛び去っていくようです。(※発見時点で既に去りつつありました。)視位置を示す薄紫曲線の右上と左の端点はこの星図の反対側でつながっています。また渦巻きを描くのは地球公転によって視点が回る「年周視差」の結果で、通常の長周期彗星などでも見られる現象。対象天体そのものの動きではありません。ともかく、この発見が事実だとすれば「恒星間移動天体」の初来日(日=太陽)ということで、めでたい!…のかな?

  • A/2017 U1星図1

  • A/2017 U1星図2

  • A/2017 U1星図3


  • 星図はステラナビゲーターによります。
  • ステラナビゲーターではこの天体の位置推算がエラーを起こすので、別途自作プログラムで計算したものを表示させています。
  • 軌道要素は記事掲載時点でMPCに載っていたものです。そもそも単純な二次曲線軌道で良いのかどうか、現時点では分かりません。遠い過去や未来では位置がずれてしまう可能性もあります。
  • 「A/2017 U1」という名称は今後変わる可能性があります。