ハリケーンIRMAはアメリカへ2017/09/10


20170909-2100UT衛星画像
カリブの島々を襲っているふたつのハリケーン。西寄りのIRMAのほうは昨日一日カテゴリー5と4とを行ったり来たり。9日21:00UT(10日6:00JST)には勢力をカテゴリー3まで落としながらキューバ北岸を抜けつつあり、今後はフロリダ半島側へ進むようです。いっぽう東側のJOSEはカテゴリー4を維持し、今が一番強烈な時期を迎えている様子。

左は9日21:00UT(10日6:00JST)の衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。大きな渦を作るIRMAの姿が不気味です。でも目が小さくなっており、風が少し弱まっていることが分かるでしょう。

20170910ハリケーン経路
IRMAの位置や勢力の情報は9月7日の記事に蓄積していますので参考にしてください。

右図は発生から10日3:00UT(12:00JST)までの両ハリケーン経路(速報値)。JOSEの経路がIRMAを横切り、北寄りに進んでいますね。アメリカの北東側へ接近する前に弱まってくる予報が出ています。

ハリケーンと台風の比較
(追記)中心勢力の衰勢ばかりが言われますが、実は今日のIRMA、勢力が衰えたけれど台風で言うところの「強風域」や「暴風域」は過去最大に広がっています。台風との比較をしてみたかったので、過去の同緯度付近で強大化した2015年台風16号と並べてみました(左/ひまわり画像はNICTサイエンスクラウドより)。衛星との位置関係や縮尺はほぼ同一ですから、直接比較できます。16号画像のほうは2015年8月20日15:00JSTのもので、左上に東日本や北海道が写っていますよ。

今年の15号などもそうですが、日本ではこの規模の大型台風が年間1、2個は来ているので、台風に見慣れているとハリケーンが小規模に見えます。それでも被害が大きいのは地形状況や嵐の動き、そして普段からの備え方や心構えが違うのかな…などと漠然と感じています。

今日の太陽2017/09/10

20170910太陽
昨夜から今朝は曇り。今日朝からもやや雲が多めです。午前中風が出てきたので、少し日が差したときを見計らって早めに太陽観察を済ませました。

左は10:10頃の太陽。Xクラスフレアを連発した活動領域12673はリム近くになり、その辺りが少し膨らんで見えます。実際に膨らんでいるわけではなく、光が強いのでそう写るのでしょう。大きな黒点のある12674も縁に近づきましたね。このあたりに右下リム画像に示したABCのプロミネンスが確認できます。BとCはXフレアの頃から見えていたもののようです。ちなみに今日も8時から9時にかけてMクラスに届くフレアが観測されました。

20170910太陽リム
光球中央やや上の12677と12678も昨日よりはっきりしました。また、左リムには新たな黒点を伴う領域が確認できます。プロミネンスはDの形が気になりました。Eはとても淡いけれどBやCよりも高く、地球10個分くらい上がっているようです。宙に浮いたFは昨日から続いてますね。その上に乱立して入る部分も見事でした。今日の太陽は面白い!

探査機「OSIRIS-REx」のスイングバイを観察しよう2017/09/10

OSIRIS-REx
日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が2014年12月に打ち上げられてから先月末でほぼ1000日が通過しましたが、順調に飛行を続けているようです。アメリカも同様の小惑星探査機「オサイリス・レックス/OSIRIS-REx」(左画像)を2016年9月8日に打ち上げました。小惑星の物質を持ち帰る「サンプルリターン」という目標まで一緒です。

このOSIRIS-RExは今月23日に地球引力を利用して推進力を上げるスイングバイを行います。はやぶさ2のときも日本を挙げての観測キャンペーンが展開されましたが、同胞であるOSIRIS-RExも日米共同観測キャンペーンが実施されるようです(→はやぶさ2サイトの関連ニュース)。そこで、観察してみたいという方向けに概要星図を作っておきます。ベテラン観測家には不要と思いますが、当ブログは観測経験が浅い方向けに作っていますから、「多少の経験はあるけど自分で星図が作れない」といった状況を想定しました。

OSIRIS-REx星図A
OSIRIS-RExが地球へ最接近するのは23日2時JST頃ですが、この時間は日本から見えない空を飛んでいます。日本で見えるのは直前の22日日没後暗くなった頃から夜半前にかけてとなるでしょう。右星図は21日0時から23日0時にかけて探査機の位置を示したもの。かなり目印に乏しい位置で想像より低いと思いますから、必ず事前に実際の空でこの図の星々を探してみてください。

大きく移動する天体を追うときは事前リハーサルのときも当日の恒星位置をきちんと再現すると良いでしょう。例えば22日20時の星空は「5日前の17日なら20時+5×3.93(分)=20:19:39の恒星位置とほぼ同じ」という性質を利用してください。視界を遮る障害物の有無や光害状況のチェックも忘れずに。なおこの手の観測では、いくつか気を付けなくてはいけないことがあります。

  • OSIRIS-RExは肉眼で直接見ることができません。望遠鏡を使っても眼視観測は難しいと思われます。
  • 従って、望遠鏡で写真を撮って像を見つけ出すという方法が可能な方向けの対象となるでしょう。
  • OSIRIS-RExは地球に近いところを通るため、観測場所によって見える方向が少し変化します。(最接近時は地表から17000km。)
  • 軌道の微調整が行われる可能性もあります。その場合こうしたブログでの告知は間に合いません。
  • 光度予測はできません。また時間が遅くなるほど接近して明るくなるけれど、23時以降は急速に高度が低くなるので大気減光で暗くなるでしょう。更には移動が速くなるほど写真写りが極端に悪くなります。(→止まっているハエと飛んでいるハエとを撮り比べてみましょう。)

OSIRIS-REx星図D
観測地によるずれは時に大きな問題となります。試しに国内でどれくらいずれるかを1枚の星図に描いたものが左図。当ブログ基本位置である茨城県つくば市と、札幌、福岡、那覇をサンプルとしました。大雑把には北側の観測者ほど南にずれ、西の観測者ほど東にずれて見えます。また遅い時間ほど地球に近くなるため、ずれる量も大きくなります。

この観測時間帯なら最大でも1°程度のずれなので、例えば数度四方の写野がある光学系なら、4ヶ所のうち一番近いところの星図を使えば対象が大きく外れることなく「写野内のどこかに写る」と思われます。ずれを見越して全国各地の星図を作るのは現実的ではありませんから、この4ヶ所に絞った星図を下に掲載しました。一番良い対処法は「みなさんが星図を作るスキルを身につける」こと。どんな観測分野でも上達するために星図スキルは必須ですから、こういう機会にトライしてはいかがでしょうか。

確実に見える現象を見るのと違って、今回のような観察は結果が分からないところに面白さがあります。はてさてOSIRIS-RExはどんな見え方をするでしょうか?みなさんの観察が成功することを願っています。

  • osiris-rex星図・つくば1

    つくばA
  • osiris-rex星図・つくば2

    つくばB
  • osiris-rex星図・つくば3

    つくばC

  • osiris-rex星図・札幌1

    札幌A
  • osiris-rex星図・札幌2

    札幌B
  • osiris-rex星図・札幌3

    札幌C

  • osiris-rex星図・福岡1

    福岡A
  • osiris-rex星図・福岡2

    福岡B
  • osiris-rex星図・福岡3

    福岡C

  • osiris-rex星図・那覇1

    那覇A
  • osiris-rex星図・那覇2

    那覇B
  • osiris-rex星図・那覇3

    那覇C

※全て接近前夜=9月22日夜の星図です。A→B→Cの順に時間帯が遅くなります。星図は全て赤道座標系ですから上方向が天の北です。

※この星図は9月21日午前のJPL-HORIZONSによる計算位置を元にステラナビゲーターで作図したものです。当日まで変更しませんので、それまでに起こるかも知れない軌道修正などは反映されません。ご注意ください。また各位置は県庁所在地座標で、標高は一律30mの設定です。

参考:
はやぶさ2は小惑星を見つけられるかな?(2017/04/21)
はやぶさ2、打ち上げ二周年(2016/12/03)
いま探査機はやぶさ2はどこ?(2016/07/25)
いってらっしゃい、探査機「はやぶさ2」(2015/12/03)