勢力を弱めつつ西日本に接近する台風5号2017/08/04


  • 20170731-0900台風5号

    (A) 2017/7/31 9:00JST
  • 20170802-0900台風5号

    (B) 2017/8/2 9:00JST
  • 20170804-0900台風5号

    (C) 2017/8/4 9:00JST

【台風の強さの表現】
表現最大風速下限(以上)最大風速上限(未満)
(無し)34ノット(17m/s)64ノット(33m/s)
強い64ノット(33m/s)85ノット(44m/s)
非常に強い85ノット(44m/s)105ノット(54m/s)
猛烈な105ノット(54m/s)-
※強さの分類はあくまで中心付近の最大風速のみで、台風の総合評価ではありません。これとは別に大きさのクラス分けもあります。詳しくはこちら
台風5号は本日4日正午現在、奄美大島の東約190kmのところにあり、付近に強い風雨をもたらしているようです。気象庁発表の速報値を使って計算したら、7月21日9:00の発生から本日8月4日12:00までの継続時間は339時間(14日3時間)、移動距離は5469.79kmでした。台風寿命については8月2日の記事をどうぞ。

不幸中の幸いなのは勢力がやや弱まったこと。昨夜21時の発表からは中心付近の最大風速が40m/sとなり、「非常に強い台風」から「強い台風」へ格下げになりました(右表参照)。もちろんまだまだ油断できません。これから九州北部豪雨の被災地を暴風域が通る見込みなので心配です。近くのみなさん、どうかお気を付けください。

2017年台風5号・中心付近の変化
上の三つの画像は今日まで二日おきに見た台風5号の全体像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。すべて同じ縮尺です。ナチュラルカラー処理のため、水色に着色した雲は活発に上昇してよく冷えている部分(発達した雨雲)を表しています。

20170801_ISSからの台風5号
また左は可視光による中心付近の変化(画像元:NICTサイエンスクラウド)。この4、5日で劇的に変わりましたね。それぞれの画像で台風の目の締まり具合、周囲を取り巻く雨雲の面積、その雨雲の乱れ具合などを比較観察してみましょう。

(夕方追記)国際宇宙ステーションを含むNASAの衛星からも台風5号の様子が捉えられています。右はNASAニュースからの引用で、8月1日に国際宇宙ステーションから撮影された画像。一連の台風5号関連記事や高解像度画像が引用元に記載されていますので、是非ご覧ください。

2017年の旧暦七夕はとても遅いのです2017/08/05

七夕の星々
8月の今ごろに七夕関連行事が催される地方は少なくありません。「月遅れの七夕」である8月7日が週末とは限らないけれど、集客を期待して日付が近い8月最初の土日という設定でイベントが組まれるのでしょう。ところで「月遅れの七夕」は「旧暦七夕」とは違います。今年の旧暦七夕は…?なんと、8月28日。まだ三週間以上も先ですね。この異例の遅さは1998年以来のこと。じゃ、いったいどれくらいまで遅くなるのでしょう?ちょっと考察してみました。

国立天文台では「旧暦七夕」を「伝統的七夕」と言い換え、2001年より普及に努めています。これに際して、旧暦(太陰太陽暦)での決め方を考慮しつつ、次の様に再定義しました(→国立天文台による解説)。

『二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日』

暦のしきたりや計算に慣れてない方にとっては「なんのこっちゃ?」ですよねぇ(笑)。現在の「処暑」は8月23日あたりですので、上の文は『8月23日以前で8月23日に一番近い新月から7日目が旧暦七夕』という意味。ということは「旧暦七夕は処暑+7日以降にはならない」のです。もし「処暑=新月」となる年なら、そのときの旧暦七夕は「これ以上ないくらい遅い七夕」になるはず。ただし、この計算には落とし穴があります。それは「処暑が固定された日ではない」ということ。他の二十四節気…例えば春分や冬至などが毎年微妙に違うように、処暑も変化します。従って「これ以上ないくらい遅い七夕」の基準も変化してしまうのです。

どのように処暑が変わったとしても「処暑=新月」となる年の旧暦七夕は遅いです。そこで、処暑と新月のマッチングを計算するプログラムを作り、1900年から2100年の201年間、下表の通り三種の条件で年をピックアップしました。結果から大雑把に言えるのは、「処暑は緩やかに早まっているため、昔の七夕ほど少し遅かった」ということ。(※ただしこの期間しか計算してないのでずっと過去までそうなるとは言い切れません。)この計算範囲で一番遅い旧暦七夕は8月30日ですが、1987年を最後に登場しなくなりました。あと2世紀くらい前を計算したら新暦9月1日が旧暦七夕なんていう日が見つかるかも知れません。(※旧暦が廃止され今の暦になったのは1873年(明治6年)のことでした。)

あまり遅いと忘れ去られちゃう旧暦七夕。「夏の星祭りが8月末だなんて遅いよ!」って思われそうですが、これは7月7日という日付だけひとり歩きしてることによる誤解です。俳句での「七夕」は秋の季語。感覚的には初秋のお祭りなんですから。伝統行事もモール街のイベントも一緒くたに「夏休み」とか「週末」といった人間の都合に絡める考え方が、七夕文化を歪ませてしまったのかなぁと感じました。

【遅い旧暦七夕・1900-2100年調べ】
『処暑当日=新月』
新月(旧暦七夕)
『処暑の1日前=新月』
新月(旧暦七夕)
『処暑の2日前=新月』
新月(旧暦七夕)
1911年8月24日(1911年8月30日)
1930年8月24日(1930年8月30日)
1941年8月23日(1941年8月29日)
1987年8月24日(1987年8月30日)
2025年8月23日(2025年8月29日)
2036年8月22日(2036年8月28日)
2055年8月23日(2055年8月29日)
2074年8月23日(2074年8月29日)
2093年8月22日(2093年8月28日)
1903年8月23日(1903年8月29日)
1922年8月23日(1922年8月29日)
1960年8月22日(1960年8月28日)
1979年8月23日(1979年8月29日)
1998年8月22日(1998年8月28日)
2017年8月22日(2017年8月28日)
1933年8月21日(1933年8月27日)
1952年8月21日(1952年8月27日)
2028年8月20日(2028年8月26日)
2047年8月21日(2047年8月27日)
2066年8月21日(2066年8月27日)
2085年8月20日(2085年8月26日)

参考:
アーカイブ:伝統的七夕・中秋の名月の一覧

居座り続けた台風5号で奄美地方が大雨被害2017/08/06


20170805-1800台風5号
強い台風5号は九州の南海上に長時間居座り、奄美地方を中心に大雨を降らせました。今日6日朝時点で台風はゆっくり南東へ移動をしており、今日昼には九州に差しかかり、明日以降もゆっくりと日本を横断するコースに入っています。

左は昨日5日18:00の台風5号の全体像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。ナチュラルカラー処理のため、水色に着色した雲は活発に上昇してよく冷えている部分(発達した雨雲)を表します。四国や関西にも影響を受けたと思われる背の高い雨雲がかかってますね。

気象庁の位置速報を元に台風5号の移動距離や移動速度を計算すると、下図(A)や(B)のようになりました。4日午前中以降は極端に遅くなっているのが分かるでしょうか。4日0:00から6日0:00の48時間でたったの484.8kmしか移動しませんでした。台風自身の強風域直径が560kmですから、直線で考えたら二日間たっても強風域が通過しないことになります。今日6日3:00の時点で台風寿命は378時間、移動距離は5771.57kmに達しました。寿命は観測史上4位に並び、万が一あと3日半生き残ったら1位となります。(※→台風寿命については8月2日の記事参照。)いやはや、恐ろしい…。

  • 2017年台風5号移動速度(170806-0300時点)

    (A) 台風5号移動速度
  • 2017年台風5号移動距離(170806-0300時点)

    (B) 台風5号移動距離

今回移動の遅さによって大きな被害をもたらしているのは、強風よりも大雨のようです。下図(C)から(F)の4枚は気象庁サイトからの引用で、4日12:00から12時間おき本日0:00までの降雨状況。いいですか、「2時間おき」じゃないですよ、「12時間おき」ですよ。本当に居座ってほとんど動いてないのが分かりますね。こんな状態見たことありません。長時間の大雨で、昨日5日だけでも奄美地方に6回もの記録的短時間大雨情報が出ました。記録的短時間大雨って「数年に一度の大雨」場合によっては「数十年に一度の大雨」です。それがひとつの地方に一日6回ってあり得ないでしょう。

  • 20170804-1200降雨

    (C) 2017年8月4日 12:00降雨
  • 20170805-0000降雨

    (D) 2017年8月5日 00:00降雨
  • 20170805-1200降雨

    (E) 2017年8月5日 12:00降雨
  • 20170806-0000降雨

    (F) 2017年8月6日-00:00降雨

奄美地方の雨量変化を見るため、九州北部豪雨秋田豪雨と同様にグラフ化しました。それが下図(G)と(H)です。気象庁アメダス10分降水量データを使っており、(G)図は雨量データを直接描いたグラフ、(H)図は4日0:00をゼロとして雨量を積み立てたグラフ。比較参考として、九州北部豪雨のグラフも掲載しました。スケールを統一してあるので直接比較可能です。 これによると今回の雨量増加は九州北部豪雨を越していますね。今日朝の時点ではまだ強い雨が続いており、現地の方々がとても心配です。

1976年台風17号
(追記)奄美大島の名瀬では6日9:50までの72時間降水量の日最大値が649.0mmを記録しました。これは1976年9月12日の1012mmに次ぐ記録で、年間降水量平年値(2837.7mm)の22.9%に相当します。なお1976年のトップ記録も台風によるもの。右の1976年台風17号経路図を見ると、記録が出る前の三日間はほとんど移動せず、奄美群島と屋久島の中間近くに留まっていたことが分かるでしょう。(※気象庁ベストトラックを使って作図しました。黄緑色部分は熱帯低気圧です。)

  • 20170804雨量1

    (G) 奄美付近の雨量
    (2017年8月4日0:00から3日間)
  • 20170804雨量2

    (H) 奄美付近の積算雨量
    (2017年8月4日0:00から3日間)

  • 20170704雨量1

    (I) 九州豪雨の雨量
    (2017年7月4日0:00から3日間)
  • 20170704雨量2

    (J) 九州豪雨の積算雨量
    (2017年7月4日0:00から3日間)


参考:
アーカイブ:記録的短時間大雨情報のリスト

今日の太陽2017/08/06

20170806太陽
今日は二の丑。今年二回目の「土用の丑の日」です。一の丑は7月25日で日干支は癸丑(みずのとうし)、今日8月6日の日干支は乙丑(きのとうし)。微妙に違う丑です。(→詳しくは7月25日の記事をどうぞ。

当地・茨城はほぼ曇りの毎日が何週も続いています。昼夜関わらずたまに晴れてくれますが、安定しません。今日夕刻前に「雨が降ってる」と近くの知人からメールがありビックリしました。でもその1時間余り前は晴れ間が広がっていて、太陽観察もできました。

20170806太陽リム
左画像の撮影は14:45頃。晴れているようでも光量がかなり落ちているので、薄雲がかかっていることが分かります。見ると久々の黒点が出ていました。ここは活動領域12670ですね。不鮮明ながらいくつかのプロミネンスが大きく伸びているのも分かりました。

今日で土用が明け、明日から暦の上では秋が始まります。蒸し暑い日が続きますが、人知れず季節はゆっくり移ろい行くのです。