台風3号が先島諸島に接近2017/07/03


20170703-0000ひまわりB13
台風3号は発生から1日も経たないうちに、先島諸島を通過しました。

左は3日0:00JST(2日15:00UTC)の気象衛星ひまわり画像(バンド13)。いつも見ているNICTサイエンスクラウドの配信が止まっているようなので、NOAA/RAMMB経由で入手した画像を処理し、経緯線・地図を描き加えて掲載します。水色の点線円は台風中心の直径1000km円、色付いたところは雨雲が発達している部分です。

画像右上に九州や四国が見え、中央付近が沖縄本島。そのすぐ左下の真っ赤なかたまりが台風中心部で、その中に石垣島や西表島が入っています。両島への最接近は推定1:30頃でした。不幸中の幸いでこの台風は暴風圏がなく(あくまで現時点)比較的弱めの台風なので、油断しなければやり過ごせるでしょう。むしろ怖いのは刺激を受けた梅雨前線が活発化すること。画像の同時刻、既に活発であった梅雨前線の影響で能登半島付近が大雨になっていました。兎にも角にも、お近くの方は十分注意してくださいね。

20170703-0900台風3号
【12:00追記】
NICTサイエンスクラウドの配信が復旧したようなので、今朝9:00の可視画像も右に掲載しておきます。台風中心は先島諸島を通り過ぎたようですが、南側から流れ込む雲がすごいですね。これ、赤道辺りまで伸びているんですよ。まさかそこまで向心力が働いているとは思いませんが…。

この時点で新潟県や福島県で大雨が降っていました。また気象庁予報に寄れば、本日3日21:00の予報円に暴風域が追加されていました。

7月28日にポリマの掩蔽&グレージングがあります2017/07/03

20170728おとめ座と木星
宵空に輝く木星は明日4日に「東矩」という状態を迎えます。長方形のことを「矩形」とも表現するように、「矩」というのは直角という意味。つまり、地球から見て木星が太陽の東側90°のところに来たよ、ということです。大雑把に考えると太陽が西に沈む時に木星は真南にくる訳ですから、日がとっぷり暮れた頃の木星は低くなり始めてると言えるでしょう。

木星は現在おとめ座のα星「スピカ」に再接近しつつありますが、反対におとめ座γ星「ポリマ」から遠ざかりつつあります(左のステラナビゲーター星図参照)。7月1日に月と木星がとても接近していましたが、同様にスピカもポリマも「月に隠される可能性がある明るい星」として知られます。実際に約2ヶ月前の5月7日にポリマが月に隠される掩蔽現象がありました。そして同様の現象が来る7月28日にも起こります。プレミアムフライデーなので(笑)、観察可能なみなさんは是非ご覧ください。記事下に予報マップを掲載しましたが、今回は静岡県南西から鳥取県西を結ぶラインが南限となるグレージング(接食掩蔽)になります。つまりポリマが月の南側をかすめる訳ですね。(※前回は東北地方が北限のグレージングでした。)お近くのみなさん、出番ですよ。なお残念ながら予報ラインより南西の地方では現象が起こりません。(月の南側をポリマが通過してゆきます。)

前出の5月の記事に書きましたが、ポリマは明るい二重星。正確に書くと3.48等の主星Aと3.53等の伴星Bが互いに回り合う実視連星です。右下図は現在分かっている軌道要素をもとに描いたポリマの軌道図(軌道要素はSixth Catalog of Orbits of Visual Binary Starsを使用、計算と描画は自作プログラム)。十数年前の離角は現在の14%程度。そのころ小型望遠鏡で全く分離できなかったポリマA&Bも今年2017年7月は2.646″まで離れ、分離できるようになりました。

ポリマ軌道図(共通重心原点)
重星によるグレージングや掩蔽は「星が段階を追って消える/出現する」ように見え、とても貴重です。今回の月は高度が低いのではっきり見えるかどうかは分かりませんが、観察にトライしなければ何も見えません。まずは望遠鏡を向けてみましょう。3日前の7月25日に水星の掩蔽があり、こちらも低高度なので予行演習になりますね。

下の予報マップの見方を説明しましょう。星月マーカーをクリックすると各県庁所在地などで計算した掩蔽データが表示されます。潜入は恒星が月に隠されること、出現は月から恒星が現れることです。マーカーから離れた地方のみなさんは、自分の居場所を囲む最短三ヶ所のデータから推測しましょう。5月8日の記事に前回の観察記録があるので、観察の参考にしてください。

グレージング予報ラインは赤丸アイコンが並ぶ赤い線が「ゼロライン」。観察天体中心・月の縁(月面地形を考えない計算上の理想曲線)・観察者の三体が一直線になるところです。それに対して緑線は2kmおきの「マイナスライン」、青線は「プラスライン」。ゼロラインに対してマイナス側に離れるほど恒星が月縁の内側を通り、接食ではなく掩蔽になります。反対にプラス側に離れるほど恒星は月縁から離れ、現象は起きなくなります。線をクリックすると何キロ離れたラインか表示できます。赤丸アイコンをクリックするとその地点でのグレージング予想時刻、月高度、方位、カスプ角が表示されます。実際の月面は凸凹しているので、ゼロラインにこだわらず色々なラインに布陣した多人数で観察すると、天体の明滅から地形が浮かび上がる、というとても面白い現象なのです。

通常のグレージングではプラスマイナスの補助線を50mとか100m程度の間隔で描きます。今回とても広く描いてあるのは、対象が重星であるからです。地図下の月縁図を見ると分かりますが、ここで言うゼロラインは「ポリマAとBの共通重心位置」に対する計算。月縁図の0km線上に恒星本体はありません。オレンジ線両端の黄色点が実際の恒星位置(上がポリマB、下がA)なのです。このことを勘違いしないようにしましょう。ゼロライン上で観察するとポリマAは隠されませんから、この図通りに現象が起きたら「ときどきポリマB光度ぶんの減光がある」ように見えるでしょう。両星とも完全に消えるようにするには、少なくとも2km以上マイナス側で観察する必要があります。ポリマAとポリマBそれぞれの「ゼロライン」は地上で13.6kmほど離れているのです。初めて観察する方にはややこしすぎてハードル高いかも知れませんが、何事も経験。三次元的に想像しながら挑んでくださいね。


【2017/07/28・γVir(ポリマ)のグレージングおよび掩蔽・予報データ】
※下に地図が表示されないときは、記事タイトルをクリックしてこの記事単独表示させてみましょう。それでも表示されないときはデータ用サーバーが止まっているか、データメンテナンス中の可能性が高いです。
         

20170728月縁図

月縁図(東経136.5°計算)
  • グレージングの予報ラインは南限です。恒星は月の南側の縁に接します。恒星は重星ですので観察場所の選定に気を付けてください。

  • 予報ラインはゼロライン(赤線)を基準にして2kmおきに描いています。ラインをクリックするとライン名称が表示されます。表示される距離は右の月縁図縦軸に対応します。

  • 赤丸アイコンのデータは標高が一律30mで計算しています。標高が異なる所では現象内容や時刻が若干ずれます。

  • 望遠鏡アイコンをドラッグすると、三脚下×印の緯度・経度・標高を測定して地図下(欄外)に表示できます。必要に応じてお使いください。なおGoogleMapの標高は実際よりずれていますので、あくまで目安に。

  • 予報データはOccult(v.4)による計算です。予報値は概算ですので精密観測には向きません。観察時間は余裕を持って取り組んでください。


参考:
アーカイブ:1.5等星以上の掩蔽

長崎に上陸した台風3号2017/07/04


20170704-0900台風3号
台風3号「NANMADOL」は本日8時ごろ長崎に上陸しました。明日朝までに本州南部に沿って東に進む見込みとのことです。

左は9:00の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。赤点円は台風中心の直径1000km円。活発な活動を見せる梅雨前線と共に日本の大部分を雲が覆っていますね。台風に覆われた九州・四国や、前線が横切る北陸・東北南部にかけて大雨になっているところがあります。

降水量10日間合計(2017/7/3)
右図(気象庁サイトから引用)のように、この10日間合計で200mm以上の雨を記録した地域が、更に追加の大雨に襲われている事態なのです。お近くのみなさん、どうか気を付けてお過ごしください。

太陽面の「向き」のお話し2017/07/04

2017日面中央緯度

(A) 2017年・日面中央緯度

2017日面中央経度

(B) 2017年・日面中央経度

2017日面方向角

(C) 2017年・日面方向角
今日は地球が遠日点を通過する日。2017年のなかでは太陽からもっとも遠ざかり、太陽が小さく見える日です。毎年この日に近日点通過日(太陽にもっとも近い日・今年は1月4日)との太陽比較をするのですが、あいにく台風接近中で全く晴れそうにありません。そこで、太陽に関する別のお話をしましょう。

ご存じのように太陽は丸く見え、黒点が見えていれば数日間表面を観察するだけで位置を変えることが分かります。地球同様に「自転」しているのですね。ただ、地球上の固い地形が自転する「剛体回転」と違って、太陽はガスのかたまりです。詳しく観察すると黒点の場所によって移動速度が異なることが分かります。(※微分回転とか差動回転と言います。)中学や高校の理科、あるいは天文クラブなどで継続黒点観察をした経験がある方は実感できるでしょう。当サイトで頻繁に掲載している太陽画像でもうかがい知ることができますよ。

太陽自転を調べるには黒点位置を記述する何らかの方法を考えなくてはいけません。ところが目印など何も無い太陽で正確な位置を定義することは、実を言うとなかなか難しい問題です。今でこそ自転周期や自転軸の傾き、その変化が分かっていますが、全く知らない状態から調べるのはとても大変でしょう。海のど真ん中で漂流する小舟を追うような話だからです。

右に並んでいる図は現在分かっている太陽自転をもとに数式を立てて描いた2017年のグラフ。太陽の向き、つまり太陽面に定めた座標や自転軸が地球から見てどんなふうに見えるかは、「太陽中央の緯度と経度、自転軸と天の北極方向とがなす角」という3つの角度で示すことが通例です。(→参考:国立天文台サイト「太陽の自転軸」。)便宜上の緯度経度を設定し、それを使って黒点の場所を記録すれば、位置の変化を追ったり他の黒点との相対関係が分かりますね。言うまでもありませんが、緯度経度が0°の地点に何かがある訳ではないのです。地球上の地物と決定的に違うのは「黒点やフレアの位置は動く」ということ。ひょっこりひょうたん島みたいな感じです(古っ!)。

太陽の自転軸は地球の軌道面に垂直ではなく、7°あまり傾いています。このため1年周期で太陽北極側が地球側に傾いたり(中央緯度がプラス)、太陽南極側が地球側に傾いて(中央緯度がマイナス)見えます。A図はそれを表しています。いっぽう自転は地球から見て約27日周期なので、中央経度はこの周期で0°から360°まで変化します。B図を見ると中央経度が減る回転ですから、自転軸の北を上にすると左側から右側へ回って見えます。C図の角度は少しややこしいですが、赤道座標系に対して自転軸がどれだけ傾いているか、ということです。ブラスマイナス26°あまりの振れ幅ですが、大きな原因として地球の自転軸が23°あまり傾いていることが挙げられるでしょう。3つの図のうちB図は毎年変わりますが、他の2つは小さな変化です。

見た目にどれくらい違いがあるか、中央緯度を例に見てみましょう。昨年2016年の例ですが、プラスマイナスのピーク近くで撮影した3月6日と9月7日の太陽像に、経度緯度を描いて下に掲載しました。私のブログでは特に断りがない限り太陽画像の自転軸を上下方向に揃えています。このためNと書いてある赤線方向が天の北方向になります。(※C図とプラスマイナスの方向が逆転するのでご注意。)また中央の青い+印は太陽中央。+印の目盛を読むと当日の中央緯度経度になっています。

「つるっとして目印が無いもの」に基準を定める小難しさを少し感じていただけたでしょうか?ひとくちに自転と言っても実体は様々。表面の模様の変化に留まらず、例えば木星のように表層と内部(磁場)とで自転周期が異なる天体もあります。天体のみならず、社会とか、人の心とか、あらゆる場面が漠然として、目印がありませんね。そんなとき、みなさんだったらどのような方法で「基準と向き」を定めてゆきますか?

  • 20160306太陽

    (D) 2016年3月6日の太陽
  • 20160907太陽

    (E) 2016年9月7日の太陽