海の中の宇宙[2]2017/07/18

海底地形・七草由来-0
(A)
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日本近海の海底地形にある「空、自然、季節に関する名前」を持つ地物めぐり、第二回目です。今回は「七草」に関する名前の海山があるのでご紹介しましょう。場所は左のA図、白い長方形のところ。拡大したものが下のB図です。ここは小笠原諸島の東側で、南鳥島(日本最東端)の西側。伊豆・小笠原海溝を東に越していますから「太平洋プレート」の上ですね。

七草とはまた洒落た命名と思いました。山上憶良も空の上で驚いてるでしょうね。地図を描くと海山が七つずつ、2群に分かれているところが素晴らしい。でも今後の調査で増えちゃったらどうするのでしょう?七草以外の野草名を付けるんでしょうか?日本固有の草花だといいですね。ちなみに命名は概ねひとつのエリアにひとつの特徴を持たせているようで、惑星なら惑星、植物なら植物が、それぞれの地域にまとまっています。干上がった海に住むことになるであろう未来人は「どうしてこの地方は植物名の山ばかりあるんだろう?」って不思議に思うことでしょう。

海底地形・七草由来-1

(B)
北斗七星の配列のように並んだ春の七草海山群から小笠原諸島に向かって山々が連なり、海溝近くで高台になっています。ここは「小笠原海台」と呼ばれ、ここより北を「伊豆・小笠原海溝」、南を「マリアナ海溝」と区別するようです。実際は太平洋プレートがまとまってフィリピン海プレートに沈み込んでいくわけで、北と南とで性質がガラッと変わる訳ではないでしょう。ただ近年はプレートの調査がかなり進み、細かく分けられるようになりました。上になるフィリピン海プレートのうちマリアナ海溝に沿った小さなエリアを「マリアナプレート」と区別するそうです。他にもプレートが細分化され(C図参照)、正直なところ覚えきれません…。

いっぽう沈み込む太平洋プレートに注目すると小笠原海台のところだけ海溝がなくなっているように感じ、見方によっては「海底の山々が隙間(海溝)に食い込んで、沈み込みが渋滞してる」ように考えられるかも知れません。うまい表現が見つかりませんが、海溝に沿った『巨大ファスナー』が海山を噛んじゃった、と言ったら良いのか…。(私の住む茨城の方言だと「海山がたごまってる」という表現がピッタリ!)プレートは滑らかじゃないので、海山もろとも沈み込むと特定のタイミングで上のプレートに引っかかります。

海底地形図+プレート境界
(C)
それが巨大地震のきっかけになるのかも知れませんね。太平洋プレートの境界をぐるりと見渡しても、こんな大規模の食い込みは他に見当たりません。小笠原諸島海域が他よりも一段高いのは、食い込んだ山々がプレートを押し上げた結果かな…?同様のことは伊豆諸島や富士山でも言えそうですね。(※小笠原海台付近で大きな地震が多いことは第三回目のC図をご覧頂けば分かるでしょう。)

七草エリアから北東におよそ1000kmあまりのところで地球最大の単一火山「タム山塊」が発見されたニュースが2013年9月に流れました(→参考記事)。wikipediaによれば裾野の広さは26万km²、対して山麓から山頂までわずか約4400m。これは「山と分からずにうっかり通り過ぎる」ほど緩い傾斜です。C図に描いてある点線円は裾野面積を円で近似したもの。正積図法ではないから地図上で比較できませんが、タム山塊の面積は日本全土の約69%、北海道の約3.1倍に匹敵します。山頂の水深が1980mということで、約20気圧の海水圧が噴火を押さえ込んでくれるのです。

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【七草に関する名前が付いた海底地形リスト】
海底地形名属名承認年水深
ふじばかま海底崖(Fujibakama Escarpment)海底崖(Escarpment)2001年
はぎ海山(Hagi Seamount)海山(Seamount)2002年4920m
すすき海山(Susuki Seamount)海山(Seamount)2002年2230m
ふじばかま海山(Fujibakama Seamount)海山(Seamount)2001年2240m
なでしこ海山(Nadeshiko Seamount)海山(Seamount)2002年2060m
おみなえし海山(Ominaeshi Seamount)海山(Seamount)2001年3600m
くずはな海山(Kuzuhana Seamount)海山(Seamount)2002年4650m
ききょう海山(Kikyo Seamount)海山(Seamount)2002年1810m
秋の七草海山群(Aki-No-Nanakusa Seamounts)海山群(Seamounts)2002年
せり海山(Seri Seamount)海山(Seamount)2001年2500m
なずな海山(Nazuna Seamount)海山(Seamount)2002年2700m
はこべ海山(Hakobe Seamount)海山(Seamount)2002年1300m
すずな海山(Suzuna Seamount)海山(Seamount)2002年1400m
ごぎょう海山(Gogyo Seamount)海山(Seamount)2001年2900m
ほとけのざ平頂海山(Hotokenoza Guyot)平頂海山(Guyot)2002年120m
すずしろ海山(Suzushiro Seamount)海山(Seamount)2002年1200m
春の七草海山群(Haru-No-Nanakusa Seamounts)海山群(Seamounts)2002年

  • 海底地形リストは登録位置が北から南に向かって掲載しています。元ファイルにデータ記載が無い項目は「−」表記です。
  • 元ファイルの地物は点(ポイント)、線(ライン)、面(ポリゴン)のいずれかで登録されています。点の場合は小さな赤丸、線と面(アウトラインのみ)はピンク線に分けて描画しました。
  • 同じ海山でも点登録と面登録があったり、広がりを持つ地物が点登録といったチグハグさが目立ちますが、元データがそうなっています。いずれ改善されるでしょう。
  • 地図左上の段彩凡例は水深/標高です。標高0m以上の陸域は段彩パレットで白色系にしていますが、精度が高くないため海岸線や湖面などの水際でやや不明瞭になります。(意図的に海岸線や等高線は描いていません。)
  • 点の座標が地物の位置から若干ずれて見えるところがあります。これも精度不足が原因と思われます。
  • 幾何学的なくぼみやキャタピラー痕のような凹凸があちこちありますが、主に元データのエラーと思われます。(船の航路やソナーの向きが影響するでしょう。)こういうのを何年もかけて修正しながら、地形データはバージョンアップをくり返してきました。
  • 描画はGMT(ver.5.4.2/Mac版)を使用しました。簡単のため地理的図法ではなく直交座標にしました。詳しく見ていただくため大きな画像にしてます。小さな画面で見ている方、ごめんなさい。


新潟や福島で大雨です2017/07/18

20170718-0700気象衛星画像
昨夜から今日夜明け前にかけて、当地・茨城県では時々雷雨となりました。昨夕からしばらく雨雲をモニターしていたのですが、新潟、福島、茨城北部にかけて大雨の地域がひっきりなしに続いてビックリしました。

昨夕の時点で佐渡の西に大きな豪雨帯があったのでヤバいなと思ったのですが、結局深夜から今日昼までの間に記録的短時間大雨情報が5回も発表になる事態となりました。左は今朝7時の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。朝の可視画像は雲の陰影がはっきりするため判りやすいのですが、新潟や福島に発達した雲がかかっていますね。

下には気象庁サイトから降雨ナウキャストを引用し、17日22時から18日12時まで1時間おきの手動アニメーションを載せました。下部ボタンで降雨の変化をご覧ください。先日の九州豪雨ほどではないですが、降雨帯があまり大きく移動せず、長時間に渡り同じ地域に大量の雨が降っているのが分かるでしょう。福島や新潟では24時間雨量が100mmを越した地域もあちこちに出ています。これに加えて今日昼前から全国的に雷雨地域が爆発的に増えました。当地も他人事ではありませんが、みなさんどうかお気を付けて。




20170718薄明光線
(19:00追記)午後に発達した雷雲があちこちに天気急変をもたらしました。17:10には京都府伏見区付近で約90mmの記録的短時間大雨となったようです。また東京や神奈川、千葉南部でも激しい雷雨でした。数センチの雹が降ったとの報告もあります。

下は気象庁サイトからの引用で、15時、16時、17時の関西と関東の降雨ナウキャスト。夕方前から九州でも大雨のところが散見されます。ちなみに当地・茨城は夕方になって日が差し、日没後は朱色の薄明光線が空を飾りました(右画像)。いつになったら日本の空は穏やかになるのでしょうか…。

  • 170718京都降雨
  • 170718関東南部降雨


参考:
アーカイブ:記録的短時間大雨情報のリスト