アステリズム探訪[3]:飛ぶ鷲2017/06/22

わし座の中に別の鷲がいる!?(下画像にマウスカーソルを乗せる前に探してみましょう。大きな画像は記事末をどうぞ。)


「飛ぶ鷲」の場所
「わし座」はAD100年台にまとめられたプトレマイオス48星座のひとつ。夏の大三角の一端をになう星座だけれど、わし座そのものを結ぶのは意外に難しい。同じ鳥類のはくちょう座に比べ特徴が薄く、どこが頭でどこが翼かも全く分かりません。そんな中で一応目立ってくれるのは1等星アルタイル(α星)を中心としたβ星、γ星の三つ星。明るいアルタイルのおかげで、光害がある街中でも三つ星を双眼鏡で探し出せるのです。

アルタイルは「飛ぶ鷲」という意味を持つアラビア語。わし座の首から背中を構成するβ・α・γの三つ星だけを取り出し、「翼を広げて飛ぶ鷲」をイメージする見立てもあるようです(左上のステラナビゲーター星図参照)。現在のわし座の形状は正確な星図がまとめられ始めた16世紀以降の体系を色濃く反映していますが、2000年も前のプトレマイオスはもっと小さな星座を描いていたのかも知れませんね。わし座全体も、アルタイル単独も、β・α・γの三つ星も、すべて「鷲」。どれだけ鷲が好きなんでしょ?

フラムスチード・や座周辺
左図はアステリズム探訪[2]でも引用したフラムスチード星図のや座付近(オーストラリア国立図書館より引用)。「飛ぶ鷲」とや座は正確に南北関係にあります。矢の長さ(αSgeからγSgeまで)と三つ星の長さはほぼ同じですから、一緒に探して確認してみましょう。

わし座の学名はAquila、略号はAql。α星(アルタイル)は0.75等で、別名はご存じ「彦星」。β星は3.7等、γ星は2.7等。画像を見ると分かりますがγ星はかなり赤寄りの色(スペクトルはK3型)で、双眼鏡でも感じ取れるでしょう。対してβ星は太陽に近い色合い(同、G8型)、またアルタイルは若干青みがかった色(同、A7型)。信号機のようですが、並びが日本の道路で見られるものと違ってて惜しい。

彦星をはさむβとγは七夕伝説の中で織姫との間にできた二人のこどもとされます。周囲は天の川に包まれており、背景が細かな星で埋め尽くされている“砂浜”のようなところ。鷲だけでなく、川辺に戯れる牽牛父子の姿も想像してみてくださいね。

  • 昇る鷲m1

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  • 昇る鷲m2

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  • 昇る鷲m3

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