留となる火星、再びアンタレスへ向かう2016/06/29


2016年火星の動き
約1ヶ月前に地球へ接近した火星。今日現在見かけの大きさは接近時よりも1割ほど小さくなったけれど、まだ十分に見ごろです。でも日本は雨季のまっただ中。当地茨城もご多分に漏れず、時々雲間から存在を確認したり、望遠鏡を用意する間に曇るといった切ない状況でした。

4月下旬にさそり座のアンタレスへ接近(4月30日観察記事参照)した後、しばらくアンタレスから遠ざかる方向に移動していた火星ですが、明日6月30日に「留」を迎えます(左図/ステラナビゲーターによる/惑星は6月30日の位置)。

地球から見た火星は黄道に近い空を東へ西へと行ったり来たりして見えます。公転によって動く方向、つまり西側(図の右側)から東側へ向かうときを順行、その反対を逆行と言います。トラック競技に例えると、地球が火星を内側から追い越すとき、相手の火星は進む方向とは逆に動いて見える(自分に対して後ろへ遅れてゆく)ので、逆行が起こるのですね。この時期に太陽と反対に位置する「衝」や地球接近を迎えるのです。

順行から逆行、逆行から順行に方向転換するには見かけの一時停止が伴いますね。これが留。厳密には「黄道座標系で黄経移動が止まる留」「赤道座標系で赤経移動が止まる留」の二種類を区別して考える必要がありますが、火星でのふたつのズレはほぼ2日以内。留は英語でStationaryですが、カタカナで「ステーショナリー」と書くと文房具(Stationery)と間違えそうな言葉です。

火星接近図
※クリックでアーカイブに移動
火星は明日の留のあと順行に戻ります。8月下旬にはふたたびアンタレスに大接近。見かけの話だけれど、ここ数十年ではもっとも近い位置関係になります。その後も2年間順行を続け、次の地球接近の少し前に逆行へ転じるのです。ちなみに、現在さそり座の頭部をうろうろしているように見える火星ですが、実は5月下旬から8月頭までは西隣のてんびん座の領域。だから、8月にならないと「さそり座にお帰りなさいませ」と言えません。

2016年火星の地球接近をいろいろ観察してきましたが、接近に関して基本データがまとまったサイトは少なく、断片的なのが多いなと感じました。そこで、「アーカイブ・火星の地球接近」を作っておくことにしました。NASA・HORIZONSによる詳細な計算を行い、1950年から2050年までのすべての火星接近をピックアップ。日時や距離を表にしました。5月29日記事に掲載した接近図もこの100年間に拡張し、描き直しました。必要な方はアーカイブをご利用ください。2年後2018年7月31日の大接近が楽しみですね。