最近、金星の姿が見えないけれど…2016/05/27

20160527-0206SOHO画像
ちかごろ木星や火星、土星が夜空を賑わせているけど、金星の話はさっぱり聞きませんね。「気持ちいい季節で表に出る機会も多いから、青空の金星を探してみたいんだけど…」という方もいらっしゃるでしょう。でも残念!金星はいま見えないシーズン。

「アーカイブ:昼間に月と金星が近い日」には2016年3月7日以降、月を頼りに金星を探すチャンスが書いてありません。代わりに書いてあるのは「2016年6月7日・外合」。「合」とは太陽と向きが一致することで、「衝」と逆の意味です。金星はあと10日程で太陽と同じ方向になるということです。外合をはさんで前後約2ヶ月は太陽から15°以内にいます。

左画像は宇宙から太陽を観測しているSOHO衛星(ESA・NASA)の画像。今朝2:06JST(=前日17:06UT)の撮影です。中央の白い円が太陽位置(遮蔽されてます)。太陽の右やや下に写ってる明るい横線付きの光が金星です。こんなに太陽に近くては、私たちがうかつに観察できませんね。

面白いことに、この画像におうし座のプレアデス星団(すばる)やヒアデス星団が写っています。なかなかナイスなタイミング。右のステラナビゲーター星図を参考に探してみましょう。星占いに詳しい方なら「太陽が位置するのが誕生日の星座」って聞いたことあるでしょう。「4月下旬から5月中旬生まれはおうし座」ですから、だいたい合ってますね。(※誕生日の星=黄道十二宮が生まれた昔々は太陽の見かけ位置が少しずれていました。)

せっかくですから、下のStellariumによるシミュレーション星図もご覧ください。これは今朝、5月27日7:20頃の空の様子です。私たちが空を見上げた縦横の向きではなく、地軸の南北方向を上下、赤道方向を左右にしています。図Aは青空付き、図Bは「青空がなかったとしたら…」という設定です。金星やすばるはこんなところにいたんですね。


  • 図A

  • 図B

図AやBに描いてある青線の目盛りは「赤道座標」、「天の赤道」は地球の赤道面の延長が空に描く線、そして「黄道」は地球軌道面の延長が空に描く線です。黄道が横切る星座をセレクトしたのが「黄道十二宮」。太陽は地球軌道面にいるのですから、必ず黄道上のどこかにいます。ご覧のように天の赤道は黄道と一致しません。天の赤道と黄道とが交差する位置が「春分点」と「秋分点」で、ここに太陽がいるときがそれぞれ「春分」「秋分」です。どうですか、いくつかご存じの単語と結びついてきましたか?

春分点から90°東(左方向)へ行ったところ、つまり図中の6h(=90°)縦線上の青矢印で太陽がもっとも天の赤道から離れますね。ここまで太陽が来ると「夏至」なのです。太陽はいま正に夏至に向かっていますよ。青空のなかに星座は見えませんが、こんな図を思い浮かべながら誕生日星座や二分二至などを思い浮かべると、グーンと世界が深まります。

ちなみにこれらの図では地面が斜めになってしまいますが、左図のように現場をやや離れて眺めれば合点がいくでしょう。普段私たちはこの斜め具合を意識せず生活していますから、赤道座標とか黄道座標などの話を持ち出されるとにわかには理解できず、チンプンカンプンなのです。

図Bで、夏至の太陽位置は天の赤道から何度離れているでしょうか?この角度は地軸の傾きとどんな関係?また、青矢印は天の北(北極星近く)を向いているけれど、この矢印と地面とのなす角は緯度とどんな関係?……いずれも高校生くらいまでに習うようなことですが、地面と垂直に暮らす私たちには馴染みの薄い事柄でしょうか?ここが理解できると、惑星の見え方や昼間の金星探しなどにも大いに役立つのですけれど。