熊本地震が発生してから間もなく1ヶ月。そろそろ気が緩んだり、逆に疲弊しきってくる頃かも知れません。東日本大震災時、私も当地・茨城で経験しました。当時は多くの児童を預かる仕事でしたから、一瞬も気を抜けませんでした。

地震の回数や累計の多さが報道され注目されています。誰にも分かりやすい数値なので飛びつきがちですが、「毎日回数チェックしてるから地震の様子は分かってる」とか「回数が減ってきたから安心」などと誤解してませんか？

地震回数で地震全体の盛衰をおおよそ計り知ることはできるでしょうが、それ以上のもっとすごい事が分かっちゃう数値ではありません。（分かるというなら教えて欲しい…）おまけに、いま報道されてるのは熊本・大分を全部ひっくるめた、あまりに広範囲すぎるカウントです。「地震の全体回数が減った」という報道で「自分に都合良い、安心できる根拠」を得たつもりになってしまうのは、人間心理の陥りやすい罠です。（こういった人間心理に興味がある方は「認知バイアス」「正常性バイアス」「確証バイアス」などの勉強をお勧めします。）

落雷に例えると分かりやすいでしょう。平地にいる私たちの頭上に雷雲が停滞したとき、みなさんはどんな判断をしますか？「雷の音がまだ遠い」「落ちた回数が少ない」「さっき近くに落ちたばかり」といったことは「自分は絶対落雷に遭わない」根拠にはなりません。そんな思い違いをしないよう、あまたある落雷防止広報にも必ず書いてあります。まったく同じではないにせよ、地震もこの教訓に倣うことができます。

4月14日21時まで九州の方々は安心して暮らしていたことを思いだしてください。その安心の源は何でしたか？「ずっと大地震が起きてない」という確率的根拠ではなかったでしょうか？

「大きな地震があったけど、遠いので関係ない」

「地震の回数が減ったから、もう大きな揺れは来ない」

「揺れがあったばかりだから、続けて二度も起きない」

そんなことありません。雷と同じです。たまたま無かったことも、たまたま有ったことも、単なる自然現象です。絶対起きないという理由が無い以上「いつか絶対に起きます」。もちろんいたずらに不安を煽るつもりでは無く、それが地球環境の実体なのだということをお伝えしたいのです。

回数が気になるのは理解できるし無駄だとは言いませんが、回数ばかり指折り数えて精神を消耗するのだったら、震源の動向そのものを注視したほうがずっと役に立ちます。「増えた、減った」だけではなく、緩やかに変動している地震状態を十分に理解してください。また熊本以外、九州以外でも、日本は毎日どこかが揺れていますから他人事ではありません。

災害は誰彼構わず飲み込みます。「専門知識がない」「興味ない」という理由で避けてはくれません。どなたでも、もっとデータを深く見ましょう。分からなければ分かる人に習いましょう。自力でデータを読み解く力を身につけましょう。自然災害が多い国に住む私たちは、義務教育に火山や地震、台風や水害などの授業をみっちり取り入れてもおかしくないのに、現状はそうなっていません。自然に対する適切な観察眼と判断力を普段から養い、生活基盤を組み立て、日本を運営してほしいと強く願っています。

右に並ぶ図は4月22日記事のGoogleMapを使い、それぞれの期間に起こった地震震央を全て重ねて描いた地図です。何が読み取れるでしょうか？ご参考まで。（北緯30°から34.5°まで、東経128°から132.8°までの矩形内で、マグニチュード1以上のもののみを気象庁発表・震源リストから抽出して描きました。地図画像のキャプチャですので、移動や部分拡大などはできません。）

参考：
2016年熊本地震に関係する記事（ブログ内）