わずかな星空も貴重な出会いのチャンス2016/04/12

20160412チュリュモフ・ ゲラシメンコ彗星(67P)
昨夕から快晴に転じた空模様。夜間も晴れが期待できましたが、思ったほど雲が取れませんでした。明け方近くまで思い出したようにドドッと雲が押し寄せてきます。それでも月明かりのない貴重な晴れ間でしたから、計画していた観察をなるべく実施しました。

まず日付が12日に変わる真夜中をまたぐ時間に、チュリュモフ・ ゲラシメンコ彗星(67P)を撮影しました。この彗星は16等近くまで暗くなっていますので本来私の機材では射程外なのですが、ちょうど先週後半から今週頭にかけて「しし座のトリプレット」と呼ばれるM65・M66・NGC3628の3つの明るい銀河に囲まれた領域を横切っていたのです(左画像)。

20160412チュリュモフ・ ゲラシメンコ彗星(67P)
とても貴重なチャンスでしたから、「彗星と一緒に写ったらラッキー」という気持ちで撮影しました。果たして彗星は……とりあえず「何かいるようだ」程度の光芒でした(右画像・楕円内)。度々雲の通過で撮影中断。同じ機材で撮った約2ヶ月前・2月9日の画像でさえギリギリだったので、これはもう仕方ないですね。銀河と同じくらい明るかったら、さぞ見応えがあったことでしょう。

20160412リニア彗星(252P)
いっぽう、夜半にはもう昇っているリニア彗星(252P)も南中を待って3時半ごろ撮影しました。こちらはまだカメラの液晶ファインダーで確認できますが、ひところよりずっと暗くなりましたね。もうこの機材では見栄えがしなくなりました。

右画像の画角は約5.3°×3.5°、上方向が天の北方向、彗星位置基準の合成処理です。動きが遅くなったので、あまり恒星がぶれなくなりました。


もうひとつ、この時期にどうしても撮っておきたい天体がありました。小惑星9422です。この天体は星仲間のみなさんが私の名を命名してくださった小惑星なのです。命名時、私は長期入院する重篤な状態でした。

20160412小惑星9422(KUBONIWA)
いったん退院し現在も通院闘病中ですが、こうした計らいにどれほど勇気づけられたことでしょう。麻痺であまり動かなくなった自分の手足と機材でこの星を捕らえることがみなさんへの恩返しと、機会をうかがっていた次第です。

とは言え、小惑星9422は光害地+小規模な私の機材ではほぼ限界の超難物でした。右下は2014年始めから2020年末までの光度グラフ。これを見ると2014年冬(退院した年です)に16等台になったのを最後に、ほとんどの時期はアマチュアの望遠鏡で補足できないレベル。次のピークの2018年冬まで待たなくてはいけません。でも先々の健康状態は全く分かりませんので、少ない可能性も最大限活かす必要があります。


小惑星9422光度変化
その可能性が今年4月の18等台になる短い期間でした。ただし南に低く、光害の影響が深刻です。昨夜は透明度もかなり悪い上に雲の通過もあったのですが、1時間たっぷり撮影し、小惑星の動きに合わせて合成することでどうにか光を捕まえられたようです(左上画像・矢印位置)。貴重な晴れ間に心から感謝ですね。

何年か健康が維持できたら、また次の機会にもチャレンジし続けたいと願っています。

参考:
リニア彗星(252P)に関係する記事(ブログ内)

今日の太陽2016/04/12

20160412太陽
明け方から良く晴れています。朝の気温は低く、そういえば桜に雪が降ったニュースも聞いたことを思い出しました。

20160412太陽リム
左は9:50頃の太陽。大気は比較的落ち着いていました。大きな黒点は今日も健在で、太陽観察メガネのみで簡単に見つかりました。小さく明るい領域も見えますね。プロミネンスは今日もほとんど見えません。