外惑星の見かけの大きさはどれくらい変化するの?2015/08/29

外惑星の大きさ比較(火星・木星)
8月27日に木星が合となったのに続き、月末の8月31日には海王星が衝となります。衝と合は正反対の向きですから、実際の宇宙空間でも両惑星は地球をはさんでそれぞれの軌道の真反対に位置していることになります。当地ではこのところ星夜が少なく、8月に入ってから一晩中晴れたという記憶が数えるほどもありません。天王星や海王星が見ごろなのですが、なんとも残念…。

ところで、外惑星は衝や合のタイミングで地球に一番近くなったり(地球最近)、一番離れたり(地球最遠)します。紙に太陽を中心としたふたつの軌道を描き、どういう時が一番近いか(遠いか)を考えれば、それが衝や合の図になっていることに気付くでしょう。ただし厳密には地球や各惑星の軌道が楕円のため、同時ではなく少しずれます。でも何ヶ月も離れてしまうことはありません。記事下部に表を載せましたが、そこには五つの外惑星について2015年近辺での地球最近・最遠およびその近辺の合と衝を載せてあります。

地球に近い惑星は大きく、逆に遠ければ小さく見えるわけですが、私は純粋に外惑星の大きさを比較した画像を見たことがありません。そもそも惑星なら合近くの写真を撮ることができませんからね。(明るい金星ならなんとかこのような比較画像を作ることが可能です。)仕方ないので、パソコン内のシミュレーションで比べてみました。
外惑星の大きさ比較(土星・天王星・海王星)
まず下の様な日付の表をアーカイブ・惑星カレンダーから抽出し、Stellariumというソフトで各日の外惑星を表示させました。全画像のスケールは統一していますので、異なる惑星同士の比較もOK。火星・木星が左上図、土星・天王星・海王星が右図です。各図とも上段が最遠(小さい)、下段は最近(大きい)となっています。

遠いものほど差が付かないのは当然ですが、逆に近い火星や木星でこんなに差が付くのには驚きです。前述の惑星カレンダーに載っている範囲で「さらに一番大きく見える日」も下表に載せておきました。少しでも大きく見たい方は長生きが必要そうですね(笑)。

【外惑星・地球最近&地球最遠時における視直径の変化】
外惑星名地球最遠(視直径:秒角)最遠付近の合地球最近(視直径:秒角)最近付近の衝一番大きい地球最近(視直径:秒角)倍率
火星2015年7月11日(3.62)2015年6月15日2016年5月31日(18.60)2016年5月22日2035年9月11日(24.61)6.80
木星2015年8月27日(30.77)2015年8月27日2015年2月6日(45.30)2015年2月7日2022年9月26日(49.81)1.62
土星2015年11月30日(15.05)2015年11月30日2015年5月23日(18.45)2015年5月23日2032年12月25日(20.60)1.37
天王星2015年4月7日(3.34)2015年4月6日2015年10月11日(3.69)2015年10月12日2039年1月18日(3.97)1.19
海王星2015年2月27日(2.16)2015年2月26日2015年8月31日(2.31)2015年9月1日2039年10月25日(2.32)1.07
※地球最近と最遠の日付は年内(年内に起こらない場合は来年)、また一番大きい地球最近の日付は2015年以降2039年までの範囲で計算しました。
※倍率は表内「一番大きい地球最近の視直径」÷「今年の地球最遠の視直径」で求めた値です。視直径の単位については下の補記を参考にしてください。

補記:
天体の見かけの幅や2天体間の見かけの距離は定規が使えませんから、「角度」を使って天球上の幅や距離を表現します。例えば、真東の水平にある天体と真南の水平にある天体の見かけの距離は「離角90度」です。同様に「水平と天頂は離角90度」ですね。月など大きさがある天体の両端の幅も角度を測れますから「視直径○○度」などと表せます。二重星の隙間、彗星の尾の長さ、小惑星の見かけの移動距離、虹や暈の直径など、空の観察では様々な場面で使われています。

ご存じのようにぐるっと一周360度です。一周の360分の1が1度(1°)ですが、1度はだいたい満月2つ分くらい。惑星の見かけは更に小さく、1度を60分割した1分(1')や、1分を60分割した1秒(1")という単位を使います。

直感的に分かりづらいですが、簡単に例えると平均的な人の髪の毛(0.08mm)を約16.5m離れて見た幅が1秒、約55cmまで近づいた場合は30秒になります。1秒のオーダーは肉眼で分解できません。また0.5mmのシャープペンシルの芯を約1.7m離れて見た幅が1分です。これは目のいい人なら見えるでしょう。実際に1分くらいの大きさがある黒点は、望遠鏡がなくても太陽観察フィルターだけで「肉眼黒点」として見えますね。時間の単位と間違えないよう敢えて「度角、分角、秒角」と言ったり、「12°34'56"」というように記号を使うことが多いです。