珍しい金環日食が見えました ― 2012/05/21
★2012年5月21日(月)の金環日食について
2012年5月21日に全国的に日食が見られました。特に関東から九州の太平洋側では「金環日食(金環食)」という大変珍しい日食になりました。国内で金環日食が見られるのは約25年ぶりで、当地茨城県全域でも金環食となったのです。茨城県内としては170年ぶり、次に県内で見られるのは300年後です。これに先立ち、つくば星の会や私個人として1年あまり前から日食現象の解説や安全な観察方法などを講座や授業の形式で行いました。小学校、公民館、市民向けホールなどで多くのみなさんと時間を共有できたことは最高の経験です。自宅に居ながらにして一生ものの天文現象が見られたのですが、残念ながら雲があって見えなかった地方もあったとき聞きます。ささやかですが当日の様子をWeb上にも記しておこうと思います。なお次項の「太陽投影機を作ろう」などで述べている日食の安全な観察法は、今後も起こるであろう全ての日食や普段の太陽観察に必要な知識です。ぜひ参考にしてください。
◎今回の金環日食経過時刻(茨城県水戸市での計算)
内容 | 時刻 | 備考 |
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日食の始まり | 6:20 | 太陽が少しずつ欠けてきます。金環日食になるまでは「部分日食」と呼ばれます。 |
金環日食の始まり | 7:34 | 太陽がドーナツ状の形になり始めます。 |
金環日食最大 | 7:36 | きれいなリングになります。このあと次第にドーナツ形が終わりに近づきます。 |
金環日食の終わり | 7:39 | これ以降はまた部分日食になります。 |
日食の終わり | 9:05 | 部分日食が終わります。 |
★日食観察に使える「ピンホール式太陽投影機」
日食は滅多に起きない現象(参考:アーカイブ「日食の一覧」)なので、ぜひ多くの皆さんに観察していただきたいと思います。ただし太陽はこの世でもっとも眩しく、観察は失明や火傷、時期によっては熱中症などの危険が常に伴います。安全に観察する方法を十分に学んでおく必要があります。特にお子さんを保護・指導する立場の方は不十分な知識のまま観察しないようにしてくださいね。ここでは直接観察による失明のリスクをなくす比較的安全な観察方法として、右画像のような「ピンホール式投影機」の作り方をご紹介します。これは実際に今回の金環日食の講座で多くのみなさんに作っていただいた教材で、小学生くらいの方でも工作可能です。用意するのは方眼マス目の入った工作用紙1枚、画用紙か不要ハガキの切れ端(5cm四方)、ハサミ(カッター)、定規、アルミホイル(アルミテープ)、裁縫針(画鋲)、セロテープなどです。(※脚部は各自で工夫しましょう。)工作の方法や応用・指導する大人の方向けの考察などをまとめて、下記にPDF資料を作ってあります。設計図を元に特大サイズにすると、肉眼黒点などを確認することも可能です。ぜひご家庭や学校などで工作して、日食を安全に観察してください。資料は非営利の範囲で自由に配布、引用して構いません。
※上記ピンホール同様の原理として人気があるのが、「木もれ日による日食観察」(下左画像)、「穴の開いたお菓子による日食投影」(下中画像)などもあります。工夫してみてください。下右画像は上の投影機による今回の金環日食の像です。
★金環日食画像を提供します
2012年5月21日に見られた金環日食の可視光撮影画像です。学校教育・福祉関係での利用や、個人的な鑑賞、ブログ引用など、非営利の範囲で自由にお使いください。だいたい時間順に並べてあります。一部雲がかかっているため、やや見づらい画像もありますのでご了承ください。画像は全て天の北極が上になっています(見かけの上下と異なります)。画像は予告なく入れ替えや削除することがあります。用語については末尾の表を参照してください。呼び方 | 内容 |
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第一接触 | 月縁が外側から太陽縁に接すること。以降、第二接触までは部分日食です。 |
第二接触 | 月が太陽縁内に全て入り込む瞬間(金環日食の開始)のことです。 |
第三接触 | 月が太陽縁内から出始める瞬間(金環日食の終了)のことです。以降、第四接食までは部分日食です。 |
第四接触 | 月縁が太陽縁から完全に出て行く瞬間。日食が完全に終了します。 |
ベイリーズビーズ | 月縁のデコボコと太陽縁が重なり、断片的な光に見える部分のことです。 |
撮影・著作:久保庭敦男(みゃお/当ブログ管理者・つくば星の会事務局)