西方最大離角を迎えた金星2023/10/24

20231024金星
今朝方、金星が西方最大離角を迎えました。望遠鏡では半月状に見える時期です。

左画像は24日5時過ぎに撮影した金星で、太陽離角は約46.413°、輝面率は約50.502%、視直径は約24.076″。ずいぶん小さくなりましたね。明るいけれど、もうファインダーでは形が分かりませんでした。

次の黄経外合は2024年6月5日00:33:26、赤経外合は2024年6月4日23:56:27。内合から今日までわずか2ヶ月あまりでしたが、いまの状態からだんだん丸くなって外合に至る過程はその三倍以上かかるのです。2022年10月22日記事内の図に示した通り、次の外合は二日間近く太陽に完全に掩蔽されてしまうため、望遠鏡などで見ることはできません。太陽と金星が両方見える望遠鏡があったら面白いんですけどね。

前後しますが、昨夕は雲が多くて月が観察できなかったけれど、夜半前には回復して安定した星空がやってきました。0:40頃観察・撮影した木星が下A画像。大気に大きな揺らぎはなかったものの、細かい乱れ持続していました。雲の往来が無かっただけでもありがたいですね。衝のおよそ10日前となりました。

大気が比較的安定していたため、金星撮影前にシリウスも撮ってみました(下B画像)。今期観た何回かの中では一番落ち着いた星像になりました。酷いときはシリウスBが結像しないので、シーイングの目安になります。(※各画像の拡大率は異なります。)

  • 20231024木星

    A.木星
  • 20231024シリウス

    B.シリウス


小惑星'Aylo'chaxnimの撮影に挑戦2023/09/24

20230919小惑星'Aylo'chaxnim(594913/2020AV2)
現在知られている小惑星は火星と木星に挟まれたエリアを回る、いわゆる「メインベルト小惑星」が多いですが、これに属さない、地球近くまでやって来る「地球近傍小惑星」などもあります。これらは地球に対する軌道に応じて四つのグループに分けられています(→2019年5月21日記事の図参照)。ところがちっぽけな太陽系にも更に色々あるもので、地球の内側を回る金星の軌道より更に内側を回る小惑星も発見されています。それが小惑星'Aylo'chaxnim(594913)。発見当時は小惑星2020AV2と呼ばれました。9月19日明け方に良く晴れたので、この小惑星撮影にチャレンジしてみました。

この小惑星は前述の四グループのアティラ群に属しますが、金星より内側を回るので直接地球に近づくことはありません。現在知られている小惑星の中で、遠日点距離(太陽からもっとも遠ざかる距離)が一番小さいとのこと。東方最大離角・西方最大離角が金星より小さいんです。プラスマイナス5年ほど計算したところ最大でも41°あまりに留まっており、最大光度も16等どまりですから、非常に暗い天体を低空で撮影しなければならない訳です。位置が分かっていても撮りづらいのですから、よくもまぁ発見できたものだと感心。

計算上は2023年9月18日5:51に西方最大離角を迎えていました。明け方の黄道がそそり立つ時期なので撮影にはグッドタイミング。18日は霧が濃くてダメでしたが、19日は透明度の良い空を迎え千載一遇のチャンス。未明に木星を撮影したあと機材をフォーメーションチェンジし、小惑星'Aylo'chaxnimに望遠鏡を向けました。とは言え薄明に追い立てられながらの作業なのでバタバタです。該当位置に星像らしき光が見えます(冒頭画像)。ただ、予報光度17.87等で限界ギリギリ。これがノイズではないという保証もありません。

実は約2年前に一度挑戦したのですが、雲が湧いて十分な露出が得られませんでした。ずっと機会を待ち、ようやく今回3倍近く露出できたけれど、まだ確信が持てません。朝や夕に頻繁に見えていてもなかなか「光度・高度・天気」が揃わず好条件にならないのです。下は8月から12月頭までの小惑星位置(ステラナビゲーター使用/各日0時計算)。B図の背景は9月18日4:00の様子。次の外合は2023年12月8日21:08ごろ、その次の東方最大離角は2024年3月21日(離角約31.1°)、その次の内合は2024年4月25日5:17ごろ…と続きます。まだ今月いっぱいは明け方に何とか写せるかもしれません。可能ならチャレンジしたいと思います。

  • 小惑星'Aylo'chaxnim(594913/2020AV2)

    A.
  • 小惑星'Aylo'chaxnim(594913/2020AV2)

    B.


穏やかな夜の太陽系巡り2023/07/25

20230724_07303月
昨夕は少し雲があったものの、前夜のような薄くベタッと広がる雲ではなかったので期待しつつ夕暮れを過ごしました。日没後に待ちすぎると月が建物に隠れたしまうため、まだ明るいうちに観察・撮影。

20230724月面トリミング
左画像は24日19:25頃の撮影で、太陽黄経差は約73.03°、撮影高度は約31.06°、月齢は6.66。26日に上弦ですから、だいぶ膨らみましたね。危難の海が更に端に追いやられ、肩身の狭い感じ。テオフィルスの月面グーからアルタイ断崖にかけて良く見えています。少し明るくなりすぎましたが、ラモントや晴れの海のリッジなども確認できました。南部の明暗境界で大口を空けているのはマウロリクス。

計算してみるとバレンタイン・ドームにおける太陽高度が0.19°でした。ひょっとしたら一部に光が当たり始めているかも?と思い、フレームあたりの露出を4倍に伸ばして撮影すると、東側が微かに光っているのが分かりました(右画像上部)。それから中央付近より南側にかけての明暗境界上に、ほぼ南北に並ぶ破線状の山列が印象的でした(右画像・赤矢印)。定規をあてても本当に直線かつ南北に並んでいました。こんなにも幾何学的な配列がランダムな地形に隠されていたなんて驚きです。

20230724小惑星Psyche
梅雨時の晴れ間に一度撮影し、機材トラブルで不完全燃焼だった小惑星プシケのやり直し撮影がまだでしたので、月が建物に隠れたタイミングで撮ってみました。すでに南西に低くなりつつあったため、建物と建物の隙間から1時間露出が限界。しかもいざ仕上げたら光害だらけでフラットも合わないしカラーバランスも無茶苦茶。仕方がないから白黒仕上げです(右画像)。

遅れていたプシケ行き探査機サイキも、順調に進めば二ヶ月ちょっとで打ち上げられる予定です。打ち上げの頃のプシケは薄明終了と共に南西に沈んでしまいますから、何とかその前に記録できて良かった…。

日付が今日になり、夜明け前のタイミングを見計らって土星と木星を観察撮影。大気の状態はまずまずでした。ただ、明け方の時間帯は近くの国道を大型トラックがバンバン走っており、その振動をまともに食らいます。何もかもうまくゆく環境はなかなか実現しませんね。

土星の衛星を確認しようと露出を伸ばしたら、どうも土星に寄りそう位置に何か見えるような気がしました。気になったので簡単に撮影してスタックするとディオネがひっついていました。他に、エンケラドゥスも見つかりました。明るい天体の近くだと分かりにくい…。自分の眼が正常だったことに一安心。木星は大赤斑が出てきたタイミングを狙いました。だんだん細かい模様が見えるようになってきて嬉しい限り。

  • 20230725土星

    A.25日明け方の土星
  • 20230725土星衛星

    B.25日明け方の土星の衛星
  • 20230725木星

    C.25日明け方の木星


20230725-0500JST気象衛星ひまわり
【追記】
後日調べたところ、気象衛星ひまわりの25日5:00撮影画像にこの月がきれいに写っていました(左画像)。もちろん時系列から、当記事画像の9.5時間あとに衛星がとらえたものです。細かいところは見えませんが、マウロリクスに光が当たっていることから月齢が進んでいると分かるでしょう。※衛星画像では地球以外がとても暗いため、左画像では宇宙空間を明るく処理してあります。月と地球が接しているところは大気の影響で歪んでいます。


梅雨の合間の太陽系巡り2023/06/17

20230616金星
昨夜から今朝にかけ、久しぶりに晴れました。よし、太陽系巡りでもしようかと思い立ったものの、肝心のお月様は新月期。仕方がないので宵の明星からスタートです。

今月4日の東方最大離角から二週間近く過ぎ、金星はおなかが凹んできました。視直径もひと回り大きいですね。最大光輝は7月7日、最大光度は7月12日。もうすぐです。近くにプレセペ星団(M44)が輝いていましたが、13日の最接近から数日過ぎて2.4°ほど離角があったので、望遠鏡での撮影は諦めました。

並んでいた火星も拡大撮影してみました(下A画像)。金星画像と同縮尺ですが、いやぁ小さい!シーイングがかなり悪かったこともあり、模様の詳細は分かりません。ただスタックしてみると上側(北側)に極冠らしき明るさが感じられ、また右下が暗くなっているのは大シルチスと思われます。高々20cmでここまで分かるのかと逆に感心してしまいました。

17日明け方には南中に近づいた土星にも望遠鏡を向けました(下B画像)。だいぶ撮影しやすい位置になったものの、シーイングの悪さは明け方まで残りました。土星も少しだけ大きくなっています。また、わずかながら傾き加減も違ってきたように感じます。明けの明星のフリをして東に登ってきた木星も撮ってみましたが(下C画像)、ユラユラが酷すぎました。かろうじて大赤斑が中央をわずかに過ぎていることが分かり、おかげでStellariumの位置ズレが確認できました。

  • 20230616火星

    A.火星
  • 20230617土星

    B.土星
  • 20230617木星

    C.木星


(15時追記)金星撮影後、南中していた小惑星プシケに望遠鏡を向けてみました。この小惑星は探査機「サイキ」が向かう対象で、金属に富むと言われています。当初サイキは昨年8月から10月の間に打ち上げ予定だったものの、改修のため延期されていました。最近のニュースでは今年10月打ち上げの目処が立ったとのこと。小惑星は現在11等前半でてんびん座を移動中。下D画像では中央に明るく写っていますが、残念ながら赤緯軸方向に謎の振動があり、全部の星が縦長になってしまいました。あらためて機会を作り撮影しようと思います。

続いて日付をまたぎATLAS彗星(C/2023E1)を撮影(下E画像)。順調に行けば約三週間後に北極星近くで光度ピークを迎えます。明確には分からないものの、南東に向かう尾がうっすら写っています。緑のコマが大きく広がって美しいですね。今が一番の見頃ですから、梅雨の晴れ間を狙って望遠鏡を向けてみてください。

  • 20230616小惑星プシケ

    D.小惑星プシケ
  • 20230616_アトラス彗星(C/2023E1)

    E.ATLAS彗星(C/2023E1)