SLIMは見つからず…2023/10/22

20231022_SLIM試写
昨夜から今朝にかけては、夜半まで曇り時々小雨、夜半からは徐々に快星。思っていたより回復が遅かったので何を観察しようか迷いましたが透明度が冬並に良かったので、月面を目指している小型月着陸実証機「SLIM」が写るかどうか試してみました。

今朝4時JST時点で地心から約1186000kmまで遠ざかってしまったため、できるだけ正確にコンポジットしました。いわゆるメトカーフコンポジットでは直線状の動きしかスタッキングできません。100分を越える総露出の間にSLIMは曲線的&等速では無い複雑な見かけ上の動きをしていたので、その移動に従って一枚ずつ位置をずらしながら合成しました(左画像)。とても根気が要ります。

画像の赤丸中心付近が予想位置なのですが、残念ながらSLIMらしき姿を見いだすことはできませんでした。遠いせいかも知れないし、太陽反射の位相が悪かったかも知れないし、シーイングの乱れで背景に埋もれてしまったのかも知れません。チャレンジし続けることに意味があると思いますので、地球に近くなったらまた試してみます。

撮影中、オリオン座流星群の群流星と思われる0等級の明るい流れ星が見えました。明け方は今期初(?)の気温一桁台でした。

参考:
SLIMはどこを飛んでいる?(2023/10/04)

AmazonのProject Kuiper試験機をとらえる2023/10/18

20231018_KUIPER-P2
大手ECサイトで有名なAmazonの衛星コンステレーション計画「Project Kuiper」がついに始動です。先行するスペースXのスターリンクは最終的に12000基に及ぶ衛星運用を目指していますが、Amazonのほうも3200基という計画目標を掲げているようです。

さる10月6日、Project Kuiperの試験衛星2基が打ち上げられました。軌道傾斜が約30°ということなので、当地・茨城県南部からは最大高度もせいぜい30°前後です。この2基がちょうど今日明け方に高くなったので、捕捉できるか試してみました。

20231018_KUIPER-P1
ふたつの試験機はKuiperSat-1(2)またはKuiper-P1(P2)などと呼ばれます。似たルートを前後して飛行しているので、写野を変えず撮影しました。左上画像が先行するKuiper-P2、3分あまり遅れて右画像のKuiper-P1が通過しました。天文薄明開始直後でしたが、モニターPCでぎりぎりの暗さでした。丁寧に画像処理しないとノイズや背景光に埋もれてしまいます。

実はひと晩前(17日明け方)も撮影したのですが、今回より薄明が進んだ中だったため、原画上で光跡がやっと分かる程度。薄明が多いとうまく写せないことが分かり、再挑戦した次第。ちなみに背景はうさぎ座とはと座とおおいぬ座の境界付近です。実機がこれと同等なのか、また軌道はどうなるのか、まだ全く分かりません。最近は低空を写すとすさまじい数の衛星が通過します。インフラなどがあれこれ便利になるのは分かるけれど、予期できない弊害がありそうで怖いですね…。

20231018木星
前後しますが、1時ごろから木星を観察・撮影(左画像)。ちょうど大赤斑が通過中でした。本当はもう1時間早く、中央通過ごろ撮影したかったけれど、夜半過ぎまで雲量3、4割あって叶いませんでした。シーイングはやや悪く、小刻みな揺れよりも大きな揺れが目立ちました。衝まであと半月です。

小惑星探査機サイキを捕捉2023/10/16

20231016小惑星探査機サイキ
一昨日夜から昨日にかけてまとまった雨が降り、久しぶりに空気がしっとりしました。夜は回復したもののやや強めの風が残り、気流も乱れているようです。さすがに惑星強拡大は難しいだろうと早々に諦めました。

そう言えば遅れに遅れていた小惑星探査機サイキ(※正確にはサイキはミッション名)がようやく二日前に打ち上げられたニュースを小耳に挟んでいたので、位置を調べると…なんと、とても狙いやすいふたご座を飛んでいることが分かりました。小さい探査機ですから何等で見えるか分かりませんが、こんなベストタイミングに無視できようはずありません。

小惑星探査機サイキの位置
夜半を過ぎて風も徐々に収まり、雲の通過も無くなりました。移動まで考慮して画角を決め、撮影開始。1時間ほどのコマ数で見事捉えることができました(左画像)。撮影時点で地心距離1088032.5kmほどでしたから、月よりもずっと遠いですね。右図はJPL-HORIZONS計算の地心位置をステラナビゲーターで描いたもの。実際は地表からの観察なので日周運動によって赤経方向に波打って見えます。

探査機サイキが向かう小惑星サイキ(16 Psyche/スペルは同じでプシケと読むことが多い)は今年7月25日などに撮影しましたが、追撮影できないまま太陽に近くなってしまいました。12月19日ごろ合になりますので、また来期に撮影するとしましょう。それにしても探査機と小惑星の名前が一緒なのは混乱しますねぇ…。

20231016_ハートレイ彗星(103P)
探査機撮影後に時間が余ったので、すぐ近くにいたハートレイ彗星(103P)に望遠鏡を向けました(左画像)。つい10日ほど前に光度のピークを迎えており、これから急速に暗くなる予定です。西向きに短い尾が出ていますかね?とても大きな緑のコマが美しいので、ぜひご覧になってください。

XRISM観察、三夜目2023/10/07

20231007_XRISM
本日は宵空に少し雲が残り、透明度も落ちていたものの、星は見えそうです。5日から行っているX線分光撮像衛星「XRISM」の確実な撮影も三日目を迎え、夕空での確認最終日として観察してみました。

この三日間は18時過ぎ(薄明中)に高度40°付近で南中するという、観察には最良の期間。本日も準備は滞りなく進みましたが、昨日までより少し高度が低いため隣家の屋根とのクリアランスがギリギリです。二日間はやぎ座の頭付近で捉まえたので、今宵はいて座側に移動、より南中に近い&高い位置で写野を固定しました。

太陽光照り返しの位相角を考えれば、南中時よりも東側でより明るくなると考えたのですが、撮影した左上画像を見るとまさにそうなっていますね。だんだんピントがぼけたわけではありません、念のため。ちなみに今回も2秒露出の比較明合成です。

20231007_H-2A_debris
1.5分あまり先行するH-2Aのデブリも撮影しました(右画像)。薄明中ながら、しっかり写ってくれました。両方とも3cm双眼鏡で探してみたけれど見つからず。手持ちだったのがいけなかったようです。次回行うとしたら明け方なので、今度はしっかり固定した双眼鏡で見てみましょう。

一連の宵空観察は今回で終わりますが、XRISMの活躍はまだこれからのお話。折りに触れて撮影してみようと考えています。