MAPS彗星の残骸シミュレーション2026/04/06

SOHO・LASCO-C3内のMAPS彗星
MAPS彗星(C/2026 A1)は太陽近くで消滅してしまったようですが、突入していった方向と反対側に明るい吹き出しがSOHOのカメラでとらえられました。左画像はSOHOサイトから引用で、4日と5日の各3:30UTに撮影された画像を比較明合成したもの。この吹き出しが彗星の名残かどうかという議論が持ち上がっています。

個人的には確たる証拠もないのでまだよく分かりませんが、仮に名残だとして、吹き出す方向や速度に矛盾がないのか気になります。そこで、「残骸シミュレーション」をやってみました。

以下、近日点通過日時をTpとします。Tpに対して○時間前あるいは△時間後に彗星が一瞬で気化して質量を失い「ケプラー運動から解放され」、等速度運動に切り替わったとしましょう。このとき○や△にどのような時間を当てはめれば矛盾がないか(あるいはどう設定しても矛盾するか)を自作プログラムで確かめてみました。簡単のために、今回は質量や広がりを持たない「位置のみの崩壊物質」に代表させ、また地球から観測する際の光遅延も計算に入れません。(このため時間軸の10分程度の誤差は黙認します。)詳しい分析は専門家にお任せして、まずは大雑把に知りたいわけです。

MAPS彗星の残骸シミュレーション
色々試しましたが、Tpより後に崩壊した場合は残骸がLASCOカメラの左側へ飛んでしまうためNGでした。従って崩壊したとすればTpより前です。右図は5日10:30UTのLASCO-C3画像をベースに敷き、SOHO位置から見て崩壊物質がどう移動するかのグラフを重ねたもの。黄道座標系による太陽中心の差分表示で、C3カメラのFOVは公式資料に基づき15.93°とします。各グラフは設定消滅時刻に対応し、Tpを開始点として2時間ごと・24時間分を描きました。ベース画像はTpからおよそ20時間後の撮影ですから、その時の位置関係が外れてなければいいわけです。

紫線はTpと同時に崩壊したケースで、20時間後には太陽の左上に移動してしまいました。これはあり得ないですね。いっぽうTpより数時間以上前に崩壊していれば右上へ向かい、方向もあまり変わりませんが、見かけの速さや到達位置はかなり異なります。いちばんフィットしそうなのは「Tpの9〜10時間前に崩壊」というケースで、これを中心にプラスマイナス2時間の範囲で崩壊したならば背景画像の吹き出し領域をうまくカバーすることが分かりました(青線・黄色線)。実際は少しずつ崩壊したと思われますが、最後まで崩壊せずがんばっていたパーツほど高速度で遠くへ飛んだということです。言い換えれば、吹き出しの遠いところほど最も遅くに気化した部分ということ。一見矛盾してるように感じるけれど、ケプラー運動を考えれば近点がいちばん速いので納得でしょう。

なんと彗星は近日点に到達することなく、半日前から壊れ始めていた…というシナリオが浮かび上がるかも知れませんね。時間がなくて他の画像では試していませんが、右上ジェットは少なくともTp+2時間後からC2カメラに写っていますから、その場合は赤線の速度でも遮光マスクに到達できず、もっとTpぎりぎりまで粘っていた部分もあったはず。どういうモデルが正解なのかはもっと色々試さなくてはならないでしょう。

やっつけ仕事なのできわめて正確なシミュレーション、という訳ではないものの、矛盾のない崩壊タイムラインが作れそうな気がしました。ただ、一粒の小さな彗星がこんな大きく明るい吹き出しを作れるだろうかと言うエネルギー収支の疑問は消えません。

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【追記】
左は6日4:30UT(13:30JST)に撮影されたLASCO-C3画像。黄色点線円のところに「MAPS彗星の残骸」がまだ続いています。かなりしつこく残るんですねぇ。通常のコロナなら数時間もすれば画像端まで吹き飛んでしまうのですが…。


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