2022年のうるう秒挿入はなくなりました2022/01/14

2017年1月-2021年12月のLOD累積
今年は年明けから気忙しくて記事に取り上げるのがすっかり遅くなってしまいましたが、毎年1月と7月の一週間経った頃に国際地球回転・基準系事業(INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE /IERS)から発表される報道によると「2022年7月1日(同年6月末UT)のうるう秒挿入はない」とのことです(→IERS News:2022年1月5日UT付けBULLETIN-C63)。これにより、少なくとも今年いっぱいUTC-TAI = -37秒が維持されることが確定しました。

左図は2017年のうるう秒挿入直後を原点として、1日ごとのLOD(Length of Day:1日の実測長)差分値を足してゆき(水色線)、正確な時を刻む原子時計に対して自然に基づく時計がどれだけずれているか(緑線)を表したグラフ。(※今朝時点で発表されている最新測定値は昨年12月14日まで。)また、LODと24時間=86400秒との差の日々の値(薄青線)、および31日移動平均(赤線)をグラフ化したのが右下図です。

2017年1月-2021年12月のLOD差分変化
地球自転を基準にした「自然の一日の長さ」は正確な24時間ではなく、日々変化しています。24時間との差は右グラフの通りプラスマイナス数ミリ秒という小さな値ですが、日々積もり積もると数年もかからず1秒程度ずれてしまう場合もあります。これでは原子時計基準の私達の日常と合わなくなって都合が悪いため、ある程度ずれたら歩調を合わせるため時計を読み替える、というのがうるう秒。これまでずれの量がプラス値、つまり地球の一周が24時間より長い傾向にあったため、うるう秒もプラス(追加)ばかりでした。ところが2年ほど前から地球自転が24時間より短い傾向が続くようになりました。

現在のうるう秒システムが導入された1972年1月以降・今期より前の間で、うるう秒が挿入されずに過ぎた最長期間は1999年1月の挿入直後から2006年1月の挿入直前の7年間、次が2009年1月からの3年半でした。最後にうるう秒が挿入された2017年1月から丸5年経ち、今年も挿入は無いということですから6年間うるう秒無しが確定。間違いなく最長期間に迫る勢いですが、実は状況が異なっているんです。

1962年1月-2021年12月のLOD差分変化
左図は右上図を1962年まで遡って描いたもの。長くうるう秒挿入がない期間の特徴を見ると、このグラフがゼロ付近にあって大きく変化しない(水平に近い=塵が積もっても山にならないほど小さい)ことが分かるでしょう。

でも今期は明らかに違います。全体を通して見てもかなり急激にマイナス側へ落ち込んでいますね。現在たまたまゼロ付近を通過しているから挿入されていないだけです。LOD差分がこんなにマイナスを継続するのは観測値が公開されている1962年以降一度もありませんでした。

もしこのままマイナス側への落ち込みが続けば、史上初の「うるう秒削除」が行われるでしょう。数年前に同じグラフを描いたときは「2020年以降は上昇に転じるだろう」と軽く考えていましたが、一向に増える様子がありません。先のことは全く分からないけれど、小さいのに大きな転換期なんだなと感じます。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

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