薄雲の向こうの月2021/03/25

20210324_12510月
週末に向かって天気がやんわり下り始めました。昨夕は一応晴れていたものの、低空は霞、上空は薄い絹雲が出ています。夜半には月に暈が出始めました。

日が変わろうとするころ一時的に晴れていたため、望遠鏡を月に向けてみました。シーイングは思ったほど乱れていませんが、透明度は落ちています。一応撮影を試みたのですが(左画像)、あまりコマ数を取得できないうちに雲が濃くなってしまいました。おかげで腰のない像になっています。

もう虹の入り江がすっかり朝。シラー・クレーターも見え始めました。上弦前から月を見てなかったので急に大きくなった感じ。久しぶりに見た知人の子が大きくなっててビックリ…という感じに似てます。観察が終わる頃は2等星がやっとという空模様。もう来週まで見えないのかな?

ところで私が月面写真を仕上げるとき、特定の目的がない限り月北極方向を画像上方向に一致させます。かなり前からのこだわりで、クレーター位置を頼りに回転誤差を0.1°程度まで追い込むのです。位置合わせに必要な基準月面図を描く自作ソフトを20年ほど前に設計しました。何度も進化させ、ここ数日かけて第5世代のバージョンアップを行っています。「観測地から見た特定日時の月面クレーター配置を正確に描く」。ただそれだけの機能ですが、とても思い入れがあります。精度を一桁上げるだけでも秤動や月運動、観測地表現、時刻管理など多岐にわたるアルゴリズムの精度向上が必要で、ものすごく勉強になります。

月面に限らず何かを比較する時、印象や思い込みに左右されないよう、科学的な作法に則ったやり方が必要になるでしょう。「何を基準にどれを比べるか」「どの程度の精度で行うか」「正確さをどう担保するか」などはケースバイケースで構わないことですが、私の場合は「月の南北を基準に0.1°内の精度」を維持した上で、月面地形の配置とか影の方向などをご覧いただきたいと考えてきました。わざわざ大っぴらには宣伝しませんが、今後も大切にしたいこだわりです。

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