NGC4454の赤い超新星をやっと撮影2020/12/04

20201204_SN2020abgq in NGC4454
昨夜は宵からよく晴れていましたが、夜半前に雲の大群が押し寄せてしまいました。せっかく月面Kを良いタイミングで眺めようと思っていたのに残念。曇り空は回復することなく今日3時過ぎまで続いていましたが、その後急速に回復。二日前に撮りそびれていたNGC4454の超新星SN2020abgq(12月1日明け方に板垣公一さん発見)をやっと撮影することができました。

発見時の光度は16.3等、その後の分光観測でType-Iaと判明したそうです。カラーで撮ってみると驚きの赤さ(左画像)。ちょっと珍しい光景ですね。光度は維持しているようで、しばらく楽しめそうなスーパーノバです。画像内には小さな銀河が多数写っていました。夜明けぎりぎりまで撮っていたのですが、明け方の空はもう春の大曲線が高くなり始め、春の銀河まつりが始まってるんだなと悟った次第。

時間は遡りますが、昨夜23時ころまで月が電線密集方向だったため、火星を眺めつつ時間を過ごしていました。湿度が高くてやや霞んでいたものの、シーイングがとても酷いというほどではありません。久しぶりに見る火星は視直径14″角まで小さくなり、本当に遠くなったと感じました(下A画像)。下B画像として今年最接近時近くに撮影した画像を同縮尺で掲載しました。こんなに違うんですよ。それでも次の大接近(2035年9月)の間に起こる「最も遠い接近(=小接近/2027年2月)」の火星はこれより少し小さいのです。

だいぶ欠けてしまったけれど、欠け際左上部には大シルチスの広がりがぼんやり分かります。右下方に伸びるチュレニーからキンメリアにかけても見えますね。南極冠は心眼で見てもさすがに無理か…。A画像撮影時の火星Lsは約325°。火星の南半球は夏が終わりつつあり、来年2月一週目頃秋分を迎えます。

  • 20201203火星

    A.2020年12月3日の火星
  • 20201007火星

    B.2020年10月7日の火星


今日の太陽2020/12/04

20201204太陽
朝のうち少し雲があったけれど、日が高くなると快晴になりました。日向は暖かく、乾燥しています。あと三日で二十四節気の「大雪」。あまり季節感に合っていませんね。

20201204太陽リム
左は10:20頃の太陽。大きな黒点を有する12786とその周辺に集う12785、12788は随分リムに近くなりました。12789および赤道を挟んで北半球唯一の12787も中央を過ぎましたね。小振りな黒点のある12790が12789の後を追っています。もうひとつ、同緯度の左リム付近から新しい領域が入ってきました。目立つ黒点は無いようです。

やや小さいながらしっかりしたプロミネンスが目立ちました。

探査機はやぶさ2が飛ぶ宙を写す2020/12/05

20201204宵・探査機はやぶさ2が飛ぶ星域
いよいよ小惑星探査機はやぶさ2がサンプルリターンを終えてカプセル投下する日となりました。長旅を支えてくれたすべての方々にお礼を言いたい。と同時に、最終段階で何が起こるか分かりませんから、本当に何もかも終わるまで気を抜かないで欲しいものです。

昨夜から今朝にかけて天気が下っています。5日夜にダメ元ではやぶさ2を撮ってみようと準備してきましたが、当日も微妙な雲行き予報。そこで、前夜となる4日宵に飛行星域を撮影しておこうと思い立ちました。夕方からチラホラ雲が流れていましたが、該当方向は何とか晴れています。とにかく暗くて移動も速いため、画質無視で超高感度高速撮影を何パターンか試してみました(左画像)。撮影後ほどなく全天曇りとなりました。

高々20cmの小さな望遠鏡、しかも光害化が進む街中。湿気も多い季節です。限界等級の移動天体ですから、こうして全工程を何度も試行錯誤しておくことは重要な意味を持つというわけですね。プロであれ、アマチュアであれ、この信条は変わらないでしょう。

画像中央付近に間違いなくはやぶさ2がいるはずですが、他に何通りか合成法や画像処理アルゴリズムを試しても、いずれの画像もはやぶさ2の実像は得られませんでした。何百枚も撮るのでPCだって限界まで使わねばなりません。ですが、できることしかやらない微温湯生活より、不可能にチャレンジしてこその人生。たとえ結果が失敗でも嘆くことはない、そこで得るものは、時として成功したときより大きいと思うのです。

おかえりなさい&いってらっしゃい、はやぶさ22020/12/06

20201205探査機はやぶさ2飛行星域
探査機はやぶさ2は無事カプセル投下に成功、その後次なるミッションへ旅立ちました。カプセル分離が成功しなかった場合、一緒に落下させる可能性もゼロではなかったから一安心。カプセルのほうも本日2:30JST前に大気圏へリエントリーし、星空を横切る大火球となって地上へ戻ったようです。

昨夜から今日2時頃までは地球近くを離脱してゆくはやぶさ2が見えるラストチャンスでした。晴れた地方では天文台の望遠鏡で捉えたところもあったようですが、私も小さな望遠鏡でトライしてみました。ところが当地・茨城は朝から小雨模様。なんということでしょう…。

夕方までそのままの悪天が続き、機材準備すらできません。夜になっても雲が多くて半ば諦めていましたが、奇跡的に20時台後半から雲が途切れ、22時前まで雲量が半分まで落ちました。大急ぎで準備、超高感度短時間露出で50カットほど撮ったところで雲に覆われました。以降回復することはありませんでした。該当方向が見えていたのはほんの20分ほど。一晩前のリハーサルで色々気付いた改善点が大いに役立ちました。

左上画像は探査機の移動に合わせてコンポジットしたもの。いやぁ、たった7分間なのに速いですね。中央付近にはやぶさ2がいるはずです。候補となりそうな像はいくつかあるけれど、残念ながら特定は困難。というのも、「おかえりはやぶさ2観測キャンペーン」から送られてきた位置情報が小数以下二桁というあまりに荒い精度だったから。写野内にあることは確かだとしても、潜在的な位置誤差が大きい(原画上で優に10ピクセルを越えてしまう)ままでは一点にコンポジットすることすらできない話です。

例えば1.00という値だったら0.005から1.014までの可能性があるということです。ここまで酷くないにしても、もしその半分の潜在誤差0.005°(1ヶ月弱前の火星直径くらい)として、私の機器構成では原画上で30ピクセルの差(=左上画像内の一番明るい星の幅くらい)。メトカーフコンポジットの場合、残差のために対象天体が「点像」ではなく「線状」に合成されてしまうのです。技術的に無理だったのなら仕方ないけれど、もう少し何とかならなかったのかなぁ…。

せめて冬空のような透明感のある晴れ間だったらもう1等暗いレベルを写すことができたという心残りはあるけど、ともかく、望遠鏡を向けて「おかえりなさい&いってらっしゃい」を言える時間が持てたことは本当に幸せでした。叡智に至る道はこういった積み重ねであることをしみじみ感じつつ。