普段はあまり使われませんが、台風には番号だけでなく「アジア名」が付けられています。台風に関わる14の国からなる「台風委員会」が命名提案リスト順に割り当てている名称です（2000年台風1号以降）。このうち、日本の提案名に「星座」の名が充てられていることはご存じの方も多いでしょう。「大気現象である台風とイメージ上の関連がある天空にあり、かつ、人々に親しまれていること」という理由が気象庁の解説に書いてあります。片や海洋航行や陸移動の方位確認に欠かせないものであり、片や人の行路を妨げる元凶ですね。

諸般の事情で発生時に書けませんでしたが、27日9:00に日本の南東はるか沖合で台風13号「クジラ／KUJIRA」が発生、本日3:00から暴風域を伴うようになりました。左上画像は本日9:00の衛星画像（画像元：RAMMB／画像処理・地図等は筆者）。ナチュラルカラー処理のため、薄水色の雲は活発に上昇した氷粒状態、白やグレイの雲は低層の水粒状態を表します。台風中心の緯度は九州と同程度ですが、経度は随分東に離れてますから日本への影響は少ないでしょう。今後北北東へ離れる予報です。

この台風13号のアジア名「クジラ」も日本の提案である星座名、そう、くじら座です。ギリシャ神話ではケートスと呼ばれる海の化け物で、勇者ペルセウスが使った怪物メデューサの首によって石化、生贄となっていたアンドロメダ姫を救った物語が有名。ほとんどの星座は地中海近隣の神話から生まれたので、日本語とは言っても日本文化由来の言葉ではありませんね。アジア名をつける理由のひとつ「アジア各国・地域の文化の尊重と連帯の強化、相互理解を推進すること」の意から遠ざかってしまうのでは、と感じるのは私だけではないはず…？

それはともかく、これまで出てきた星座名台風はどれくらいなのか調べてみました。命名リストは加盟14カ国が10個ずつ提案するので、通常は14個の台風ごとに同じ国の提案名が巡ります（下表の間隔個数）。ただし台風監視域外から越境する台風もあるため、14個より多くなることがあります。この場合は他地域で付けられた名称を引き継ぎます。直近の例だと、2018年台風14号と同年台風29号の間隔が15個になってますが、ハリケーン「HECTOR」が日付変更線を超えて台風17号HECTORになり、1個ずれたためです。

どこかの国で甚大な被害が出た台風の場合は、以降にその名前を使わず「欠番」とし、同じ国が別の追加名を補填することになってます。星座名台風の例では下表・表下部コメントにある通り、WASHI（わし座）とHATO（はと座）が欠番となりました。これ以外は3回ないし4回使用されています。今回の台風13号は4回目のクジラですね。