雨の七夕2020/07/07

天の川と七夕の星々
本日は新暦の七夕。残念ながら全国的にお天気が悪く、特に九州付近では長期に渡る大雨で災害が多数発生しています。せめて被害が最小限であってほしいと星に願わずにはいられません。

左は半月ほど前の晴れた夜に撮影した天の川と七夕の星々。梅雨時でも、街中でも、よく晴れてくれさえすればこうして銀河に群がる星々を目の当たりにできます。異常な気候が常態化しつつありますが、わたしたち自身はもちろん、後世のこどもたちが星々の美しさを忘れない程度には快星の確率を維持できる環境を守りたいですね。

今年の「伝統的七夕」は8月25日とのこと。今日から一ヶ月半ほど先の話になります。ずいぶん遅いなあとも思いますが、三年前の2017年は8月28日でしたから、もっと遅い日もあるわけです。もともと秋の季語でもある旧暦七夕が現代暦の8月下旬に執り行われるのは至極当然。イベント消化に明け暮れる今のわたしたちがせっかちなのでしょう。

国立天文台では伝統的七夕の日を次のように定めています。

二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150°になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目。(暦Wikiから引用

このルールを過去や未来に適用して計算した場合、どのように日付が変化するかグラフにしたのが下A図です。お月さまのサイクルが絡むため2020年3月20日記事の春分変化グラフほど規則的ではありませんが、処暑の変化が伝統的七夕の日付に少なからず影響を与えていることが見て取れます。また1900-2100年の間にどれくらいの期間で何回起きるか計算したのが下B図。それなりに頻度がばらつきますね。最早で7月31日(1968年・2006年・2044年)、最遅だと8月30日(1911年・1930年・1987年)になりました。8月末の七夕というのもなかなか楽しそう。今度こそ晴れますように。

  • 伝統的七夕の日付変化

    A.伝統的七夕の日付変化
  • 伝統的七夕の日付分布

    B.伝統的七夕の日付分布


2021年1月のうるう秒挿入はありません2020/07/08

LOD差分の変化
2020年はうるう年でしたが、これとは別に「うるう秒」の挿入は行われませんでした。次に調整が入るとしたら2021年1月1日0:00UT直前のはずですが、国際地球回転・基準系事業(INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE /IERS)のNEWS BULLETINで「2021年1月1日(前年12月末UT)のうるう秒挿入はない」との正式発表が本日ありました。よってUTC-TAI = -37秒が維持されます。

うるう秒調整は世界時で12月末または6月末に行う決まりです。日本時間なら元旦9:00直前または7月1日9:00直前。今年1月7日記事で「最近は1日の長さLOD(Length of Day:1日の実測長)が86400秒からあまりずれない傾向にある」ということを書きました。左上図はこのことをグラフ化したもの。2019年半ば以降、差分の値はおおむねプラスマイナス0.5ミリ秒に収まっていますね。グラフがゼロより上が長期間続けばうるう秒挿入、ゼロより下が長期間続けばうるう秒削除が必要になるのです。

2017年1月-2020年5月末LOD累積
右図は2017年のうるう秒挿入直後を原点として、1日ごとの差分実測値を足してゆき、正確な時を刻む原子時計に対して自然に基づく世界時がどれだけずれているか表したグラフ。データが公開されている今年6月頭頃まででマイナス250秒あまりです。最近は青グラフの傾きが緩やかですので、今後もしばらくうるう秒調整は行われないでしょう。

2019年夏や秋のように万が一青グラフが下降に転じ、それがしばらく続くようなら、この調整制度で初の「うるう秒削除」が行われます。実際どうなるかは全く分かりませんが、ちょっとだけ楽しみです。

なお今回調べていて気づいたのですが、IERSで発行しているBULLETINの月間観測値と、別途まとめられているEARTH ORIENTATION PARAMETERSの長期データの値とで、LODやその誤差範囲などにごくわずかな差があることに気付きました。グラフを見ても全くわからない量ですが、当記事のグラフはEOP長期データに基づいて描いています。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

今日の太陽2020/07/08

20200708太陽
今日午前までの数日間、風速10m/s越えの暴風+ときどき雨というお天気が続きました。雨だけ、あるいは風だけだったらまだしも、両方いっぺんでは台風と何ら変わりません。どうしたというのでしょう?

昼からは風も弱まり、外出できるほどになりました。夕方遅くにちょっとだけ広がった青空から日が差したので、高度15°まで下がった太陽を観察しました。遠日点通過後初の太陽観察です。

20200708太陽リム
左は17:30の撮影。もう光球が正円ではなくかなりひしゃげています。左上リムにやや大きいプロミネンスが確認できました。黒点はほぼなくなってしまいましたが、中央やや右上に活動領域12766があり、さらに昨日まで左半球にも小さな黒点群が2群あったのを確認しています。磁場がほとんど消えてしまったので今日は見えません。短命でもこうしてジワジワと黒点が出るようになってきたので、いよいよ新たな太陽周期に突入したのかなと実感しています。

信じがたい8日間の積算降水量2020/07/09

20200709-0600JST
今日も当地・茨城県南部は朝から強い雨が降った時間があり、大きな地震も起きました。左は今朝6:00JSTの衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。相変わらず雲に覆われて列島の形が確認できず、かろうじて北海道が分かる程度。昨年に比べかなり雨量が多いように感じますが、これは私の住む地方だけではないでしょう。(※ちなみに画像右下に見える茶色の雲は西之島の噴煙です。)

7月の雨は梅雨明けまでの前半に降水量が集中する…というわけではありません。もちろん地形や年ごとに変化する気圧配置などの影響もあるでしょうが、下旬も含めてまんべんなく降るようです。

7月の降水量日々平年値
年間降水量が多い太平洋側に面した三点…「屋久島」「魚梁瀬」「尾鷲」を選び、7月の日降水量平年値をグラフ化してみました(右図)。多少の変動はありますが、前半に偏ってはいませんね。むしろ下旬のほうが多いことに驚きです。

今年の7月はニュースが追いきれないくらい日本各地で災害が発生しています。月初めの1日から昨日8日までのアメダスデータが出揃ったので、降水量合計がどこまで達しているかを全ポイント集計してみました。また、その値が「7月の総降水量平年値」と比べてどうだったかも計算し、即席で申し訳ありませんが地図化してみました(下A-D図)。大きめに仕上げたので、気になるところを詳しく調べてみてください。ただし「新設ポイントで平年値が出ていない」など、計算できないところも全体の14%ほどありますからご留意ください。

8日間ですから、単純に考えれば月全体の四分の一を消化したに過ぎません。前述のように上旬に偏るわけではないですから、数日の降水量が「既に7月総降水量に達している」とのニュースを聞く度に、そんなバカなと思うわけです。ところが、まだまだ甘かった…。8日間合計が平年値以上だったのは291地点もあり、そのうち16地点で平年値の2倍に達したところも!さらに鹿児島県鹿屋(カノヤ)ポイントでは3.01倍というとんでもない降水量でした。この地における年間降水量の44%がわずか8日間で降ってしまった計算です。

前述のように計算できなくてやむを得ず「通常並」の表記にしてあるところがあるので、ご自身の近所は大丈夫だと過信しないようにしてください。九州や中部・東海の話題が多いですが、よく見れば北海道から沖縄まで至るところで降水量過多です。まだ7月は半分も終わってませんよ。

  • 2020年7月1-8日の降水量・北日本

    A.北日本
  • 2020年7月1-8日の降水量・東日本

    B.東日本


  • 2020年7月1-8日の降水量・西日本

    C.西日本
  • 2020年7月1-8日の降水量・諸島

    D.島しょ部


【平年値問題】

鹿屋・積算降水量
気象庁では平年値を「西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新」としています。(※ただし算術平均ではなく、平滑化の工程を踏んで「均して」あります。)今使われているのは「1981-2010年の30年間による平年値」で、2011年5月から使われています。

気温、降水量、日照などの評価に使われる平年値ですが、このルールだと来年春からは「1991-2020年の30年間による平年値」に差し替えられます。基準が変わるため、今年の評価と来年の評価を比べるときは「同じ基準で比べているかどうか」という注意が必要になりますね。例えば左図は記事に登場した鹿児島県鹿屋ポイントのグラフですが、来年は赤点線位置が変わってしまいます。もし縦軸がmmではなく平年比(%)だった場合、来年の同じ時期に新平年値で描いたグラフと直接比較ができなくなるでしょう。

また20年ぶんの共通期間があるとは言え、10年間ずれることで近年の気候変動の極端化・常態化が平年値そのものに与える影響もしっかり把握しておく必要がありそうです。(平年値の変化を詳しく分析したような論文があれば読んでみたい!)