今日の太陽とハロ現象2020/06/02

20200602太陽
5月中盤から続く不安定な天気は6月に入っても変わりません。前線由来ではないにしろ、梅雨であるかのようなぐずついた空模様が続きます。太陽・月・星ともに観察できないのは辛い…

今日の午後遅くになって薄雲越しながら日が差してきたので、なかば強引に太陽観察しました。薄雲と大気の乱れでボケボケですが…。

20200602太陽リム
左は16:20過ぎの太陽。冬ならもう日没時刻です。左上の明るく見える部分は活動領域12764と採番されました。この領域は5月末にM1クラスのフレアを起こした場所ですが、今日現在は可視光でも黒点が認められず、白斑があるのみでした。他にも中央やや下に活発な領域があります。磁場画像で確認すると、両方とも第25太陽周期ですね。右上リムにはものすごく大きなプロミネンス。角張っていて、なんとも不思議な形です。高さは地球直径の6、7倍はあるでしょう。右端リムにもやや高いものが見えてきました。

太陽観察と前後して、空に幻日が見えていました(下A画像)。左右とも見えますが、右側は幻日環を伴って長く伸びていました(下B画像)。しばらく明瞭でしたが、次第に低層の雲に隠されてしまいました。それでも1時間程度は確認できました。他にもごく淡い内暈が写っています。

  • 20200602夕方西空

    A.夕方西空の様子
  • 20200602幻日

    B.幻日(上:左の幻日、下:右の幻日)


日暈と月暈の奇跡的コラボはいつ起きる?2020/06/04

20200603太陽の内暈
当地・茨城県南部はいまだ冴えない空模様が続いています。時折雲が薄くなって日が差しますが、太陽観察させてもらえる晴れ間すらないほど。

左は昨日3日16時前に見えた内暈。あまりハッキリしたものではありませんが、概ね半周以上つながって見えていました。他にハロ現象が見えないかしばらく粘ったけれど、何も確認できず…。新しい黒点が出たそうですが、太陽観察はできませんでした。気温と湿度が高く、不快な一日。30度を越す真夏日地点は64箇所に上り、肌寒かった6月1日を除けば5月30日からずっと50地点越えが続いています。

20200603月の内暈
こんな天気がくすぶる日は夜にも同じ様な気象光学現象が起こるもの。案の定、夜になって南中頃の月を見ると暈が見えました(右画像)。なんとなく外接ハロも出ていたようです。星の存在はほとんど分かりません。しばらくすると雲が厚くなり、月も見えなくなりました。

ところで、昼も夜も暈が見えるような天気のとき思い出すのがNASA「Astronomy Picture of the Day(通称APOD)」2015年4月3日号に載っていた一枚の画像。これを見た衝撃は忘れられません。リンク先をご覧いただくと分かるように、10時間をおいて同じ位置から撮影した2枚の写真…太陽の内暈と月の内暈、それに前景まで含め半々でピタリとつなげているのです。いつかこのような写真を撮りたいと思ってしまいました。

似た画像がUSRA「Earth Science Picture of the Day(通称EPOD)」2017年6月26日号にも載っています。同じ撮影位置・同じアングル・同じカメラというのは一緒ですが、APODのほうが10時間差の組写真なのに対し、EPODは撮影日が18日も違う組写真です。また写真分割も縦と横で違いますね。EPODは横分割なので、上側に地上が写っておらず、「同じ位置から撮った」ことを信じたとしても方位や高度を微妙にシフトして一致させた疑いが残ってしまいました。(それなら私の上の画像でもできてしまいます。)まぁそこは信じるとして…。

【太陽と月の赤緯が近い日】
日付赤緯差
(°)
太陽黄経差
(°)
月齢
2020年3月11日0.86207.4216.98
2020年4月6日-0.43159.2413.23
2020年10月1日1.27177.7114.17
2021年3月28日-1.13178.2915.19
2022年9月12日0.95209.1716.28
2023年3月9日1.46204.3017.33
2023年4月4日-1.21162.3713.90
2024年3月24日1.06173.2614.25
2024年9月18日-0.56187.8515.54
2025年9月9日1.60205.6217.37
2025年10月5日1.78159.5213.80
2026年3月5日-0.71206.1816.12
2026年9月25日-1.82167.1514.48
2027年3月21日1.50169.6813.23
2027年9月16日1.30188.0215.89
2028年3月11日-0.38188.7115.18
2028年9月5日-1.73198.2716.18
2028年10月1日1.89158.0312.86
2029年3月2日-1.23207.5617.19
2029年9月21日-1.28168.5813.18
2030年9月12日-0.25189.5014.66

  • 自作プログラムによる計算で、2020年から2030年まで下記ふたつの条件を満たす日を調べました。
  • 条件1:12:00JSTの太陽赤緯と翌0:00JSTの月赤緯の差が2°以内であること(太陽より月が北ならプラス)。
  • 条件2:上記時刻における月の太陽黄経差が150°から210°の範囲に入ること(概ね月齢12から17に相当/180°なら満月)。
それぞれの写真で“撮影の難しさ”がどれほど変わるか考えてみましょう。海外の気象事情は分かりませんが、日本に限って言えば、内暈は比較的見つけやすい現象です。昨日のように太陽と月の暈がどちらも出現するというのはそう珍しくありません。前出の組写真のすごいところは暈の大きさが同じ…という点じゃなくて、「同じアングルで撮った太陽と月の位置が一致している」ところなんです。

撮影位置を変えない前提なら太陽や月の日周ルートは「各天体の赤緯」で決まります。つまり赤緯がだいたい一緒なら、定点カメラに対して月も太陽も同じ位置に写ってくれるわけです。暈全体を写すなら短辺画角が最低50°程度の広角レンズが必要ですから、赤緯に1、2°の差があってもあまり目立たないでしょう。太陽と月の動きは日々バラバラなので、各赤緯が頻繁に一致することはないと直感でも分かりますが、完全一致などと厳しいことを言わなければひと月に1回程度はチャンスがあります。

ただしこれは月齢を考えない場合。太陽はともかく、月暈は満月に近くなければはっきりしません。満月期に限ると赤緯差が少ないタイミングは「年に数回」まで減ってしまうんです。また、同一日(24時間内)の撮影ということにこだわらなければ赤緯が近い回数はかなり増えます。月に一回は必ず満月期がやってきますから、何日かずらすことで太陽の赤緯に一致させれば良いわけです。EPODのような「赤緯一致まで待って撮影する」方法なら比較的モノにできるでしょう。だからこそAPODの画像には度肝を抜かれたのです。

向こう10年余りの満月期で「同一日に赤緯が近い」条件を満たしそうな日を計算し、左表に掲載しました。チャレンジしたい方はご利用ください。日付が春と秋に集中していますが、どうしてこうなるか考えてみましょう。空模様までは分かりませんから、これらの日に昨日のような暈が持続しやすい天気がやってくることに期待!!

【補足】
上では内暈を中心に考えましたが、「太陽と月が同じルートを通る」ことで分かる対比は他にもいろいろ考えられるでしょう。道に並ぶ街路樹やビル街の影なども、上記表の日付に太陽と月とで適切なオフセット時間をおいてタイムラプス撮影すれば、光源や影の方向が一緒なのに「昼」と「夜」という大きな違いがあるトリック動画だって撮影可能です。あるいは、上記表の日付にダイヤモンド富士が見える場所なら、半日後に近い場所からパール富士も見えるということです。頭を柔らかくして面白いアイディアを考えてくださいね。


とても太陽に近かった金星の内合2020/06/05

金星の内合・通過経路
昨日6月4日3時JST少し前ごろ、金星が内合(黄経内合)を迎えました。金星が内合するとき、太陽から北へ大きく離れていれば「宵の明星」と「明けの明星」とが同時に見える期間が存在する、ということを2017年3月21日の記事に書きました。今回も北側コースだったのですが、かなり太陽に近かったため、ほぼ瞬時に宵の明星から明けの明星へ切り替わった感じです。

では、どれくらい近いところを通ったのでしょうか?これを調べるべく、自作プログラムで計算し図化してみました(左図)。中央のオレンジ円が太陽(直径0.5°固定)、最小枡が1°×1°の黄経差(横軸)と黄緯差(縦軸)を直交座標で表します。

2000年以降2040年までに起こる全ての内合について、太陽に対する金星の地心位置差を計算。黄経内合日(JST)を中心に10日間の位置関係を描きました。経路を示す線上の大きい丸マーカーは各日0:00JSTの位置で、最小マーカー間隔は3時間おきです。地球に対する内合現象ですから金星は常に左から右へ移動し、日付が矢印マークで描いてある日のどこかで内合になるわけですね。今回の経路は本当に太陽至近を通過していました。こういった比較図は見たことがないので、あらためて納得できました。

20040608金星日面通過
こうして可視化すると理解しやすいのですが、内合に伴う経路は周期性を持ったグループに分かれます。8年ごとに5つあるグループを行ったり来たりしてますね(→国立天文台・暦Wiki「日面経過」の後半参照)。昨日の内合は「太陽に一番接近するグループ」に属し、この計算範囲では太陽に重なってしまった2004年(右画像)と2012年(左下画像)に次いで近かったことになります。こんなに近いため内合前後の観察は困難だったでしょうが、見事な自作望遠鏡で撮影してしまった猛者の記事がspaceweather.comに載っていました。あぁ、これやってみたかった!

20120606金星日面通過
太陽観測衛星SOHOのLASCOカメラでも、近かった様子をうかがい知る事ができました。下A−D画像はSOHOサイトからの引用で、3日UTから4日UTにかけて撮影されたC3カメラとC2カメラの画像。LASCOカメラは太陽を遮蔽板で覆っているため、中央に影ができます。今回金星が太陽にもっとも近かったときは、狭角写野であるC2カメラの遮光板にさえ隠された時間帯がありました。(E図は各カメラ写野と2020年の天体通過予報。)逆に見ると、「ほぼ影の面を向けている金星がこんなに輝いて写ってる」といった驚きもありますね。次回の「太陽にとても近い金星内合」は2028年6月1日です。

  • 20200603-0906UT_LASCO-C3


    3日9:06UT(C3)
  • 20200603-1624UT_LASCO-C2


    3日16:24UT(C2)
  • 20200604-2000UT_LASCO-C2


    4日20:00UT(C2)
  • 20200604-2342UT_LASCO-C3


    4日23:42UT(C3)
  • 2020SOHO-LASCOカメラ通過天体


    2020年天体通過予報


今日の太陽2020/06/05

20200605太陽
昨夜は夜半まで雲が少なく、満月前の月が綺麗でした。残念ながら今は南中高度が低い時期のため、撮影はせずに肉眼で楽しみました。夜半からは雲が多くなってしまいました。 二十四節気の「芒種」を迎えた今日はいつもより雲が少ないまま推移しています。昼前から屋外はとても蒸し暑く、また風が強めです。

20200605太陽リム
左は13:30過ぎの太陽。薄雲越し+風でブレながらの撮影です。北半球の中央子午線上には活動領域12764、左下リム近くには明瞭な黒点を伴った12765が見えていました。両方とも広範囲に渡り対流が見られ、すばらしいですね。左上には小さいけれどはっきりしたプロミネンス。右リム2時方向にもやや高いプロミネンスが出ています。

梅雨の気配はありませんが、まだしばらくは天気が安定しません。週に2回程度は活動領域を追いかけたいのですが、さて…。