太陽下部にタンジェントアーク2020/04/07

20200407下部タンジェントアーク
朝のうち晴れ間があったものの、日が高くなるにつれて雲が出てしまいました。薄日が差すので太陽観察を目論みましたが、午後まで粘ってもすっきり晴れることはなく、とうとう撮影できませんでした。

雲間から太陽下部にハロが見えました。内暈かと思ったけれど、しばらく観察してみても一周つながらず、太陽上部と下部のみしか見えないことからタンジェントアーク(もしくは外接ハロの一部)と判断しました。上部のほうはあまりはっきりせず、下部のみ鮮やかに見えました(左画像)。そう言えば昨夜の月の周りにもクッキリした内暈が出ており、特に上下が明るくなっていました。

聞き覚えのある鳴き声が空にこだまするので、しばらく音を追って目を凝らしていたら、ついに発見!今年初のツバメです。平均すると私の街では3月下旬に渡ってきますが、今年は暖冬なので少し早いかなと思って3月初めから探していました。よもやこんなに遅いとは…どこで道草食ってたのかな?

今年いちばん大きい月と、核分裂したアトラス彗星2020/04/08

20200407_17271月
昨夜から今朝にかけ、まん丸の月が静かに街を照らしました。春の大気は湿気が多く、夜空全体が白っぽく感じます。

今月の満月瞬時は8日11:35、つまり今日の昼です。昨夜空にかかっていた月、正確には「満月の半日前」ということになるでしょう。この満月は今年いちばん大きい視直径とのこと。ただし、あちこちのニュースで表現される「スーパームーン」とは言い難いようです。

1900年からの200年間に起こる全ての満月(計2474回)の中で、今日4月8日の満月視直径は116位。1年の中では最大でも、満月全体からすればスーパーと言えるほど大きくありません。せめて1世紀の中で10位くらいに入らないと「超満月」じゃないですよね。

今日の満月前後に地球との距離がどのように変化するか見てみましょう(右下図)。オレンジ曲線は地球中心(地心)と月中心との距離、青曲線は観察地(測心/ここでは茨城県つくば市の例)と月中心との距離です。どちらで考えても満月瞬時より前に極小が来てますね。つまり8日夜に見える満月よりも昨夜の満月のほうが近くて大きかったと言えます。青線が約1日周期で上下するのは、地球が自転しているため。主に観察地緯度に左右されますが、大雑把に言うと最大で地球直径相当の振れ幅です。

2020年4月満月前後の状態
地球を回る天体と自分との距離が最も小さくなるのは「真正面に来たとき」…つまり南中する頃ということは直感で分かるでしょう。つくば市に限らず、また満月時に限らず、測心距離が極小になるのは概ね月が南中する時刻なのです。…そんなこんなで、文字通り「今年一番大きな月」を23:20過ぎに撮影したのが左上画像。撮影時の太陽黄経差は約172.71°、撮影高度は約54.3°、月齢は14.21でした。満月前なので西側(左側)がちょっと欠けていますよ。

昨日の月の記事にも書きましたが、南極側が良く見える秤動で、スコットやアムンゼンの南極探検家クレーターもよく分かります。ミネラルムーン色調にしたので、各海内の微妙な色の違い、シッカルドやコペルニクスなどひとつのクレーター内にも色の差があることなど分かるでしょう。この時期にしか見えない、ミルクをぶちまけたような光条も様々あって面白いですね。

20200408アトラス彗星(C/2019 Y4)
ところで、アトラス彗星(C/2019 Y4)の核が崩壊し、急激に減光し始めたという情報を頂きました。当初昨夜は満月のため観測を予定しませんでしたが、月面撮影後にそのまま望遠鏡をアトラス彗星に向けました。核崩壊する彗星はヘタすると1、2日で消滅してしまうため、月明かりの影響など構っていられません。

日付が8日になった頃から80分弱露出したのが左画像。取りあえずまだ見えています。4月5日夜の撮影時から違和感があり、彗星像に「芯」が無いなぁと感じていたのですが、光害で写りが悪いせいだとばかり思っていました。まさかの事態…。

まぁ長年彗星観察しているとこんな事は何度も起こるので、今更気になりません。これまでもブログ内で「今が旬だから見えるうちにどんどん見ましょう」と言い続けてきました。しかしながら、動向が観測しづらい満月期は避けて欲しかったなぁ…などと思ってしまいました。もう明るくなる見込みはありませんが、分裂核がすぐに蒸発しないならひょっとすると何日か、あるいは何週間か見え続けるでしょう。できるだけ追いかけてみようと考えています。

アトラス彗星(C/2019 Y4)の比較
【念のため比較】
拙い写真ですが、3月25日夜と4月5日夜に撮影した画像を比べました(左画像)。どちらも同一機材による[2分露出+15秒間欠]×40コマ→彗星位置コンポジット、縮尺は統一してあり、元画像の1/2です。気象条件や画像処理の差があるため写りの良し悪しは無視してください。注目するところは核集光のまとまり具合です。

3月に撮ってある画像はどれもはっきりした点像でした。でも4月5日の核は尾の方向に伸びています。(※彗星のコントラストを持ち上げ過ぎないように処理するとよく分かります。)よくよく見ると3月25日も点像ではありませんが、恒星軌跡と同一方向なので、これは1コマ間の彗星移動だと分かります。でも4月5日の伸び方向は恒星軌跡に一致しません。上の8日未明画像では更に顕著です。

3月23日記事のグラフに示したように、現在アトラス彗星の見かけの速度は落ちています。背景の恒星の長さを見ても分かるでしょう。顕著なガイドエラーもないことから、普通に考えれば1コマ間の彗星移動ブレは以前よりも減るはずで、より集光して然るべきなのです。にもかかわらず4月5日や8日の核が細長いのは、光学系や撮影方法由来ではない原因…つまり彗星そのものの変化と考えるほうが自然と思われます。


参考:
アーカイブ「大きい満月」
アーカイブ「小さい満月」
月面南極のアムンゼン・クレーターを確認(2019/05/17)
アトラス彗星(C/2019 Y4)に関係する記事(ブログ内)

今日の太陽2020/04/08

20200408太陽
朝のうち晴れ間があり、透明度は悪いけれど太陽観察ができました。でも昼には空全体が曇ってしまいました。関東の所々で小さな雨の領域があるようです。

20200408太陽リム
左は10:15頃の太陽。黒点のない活動領域12759はしぶとく残っていますが、他に目立つ領域はありません。プロミネンスは左下リムに這うようなものが出ていますがはっきりしませんでした。

日に日に暖かくなります。スギ花粉の飛散は例年より軽くて済みました。もうピークは終わったでしょう。桜もだいぶ散りました。

ますます弱々しいアトラス彗星2020/04/09

20200408夜・アトラス彗星(C/2019 Y4)
昨夜も前夜と同じようにまっ白な空でした。宵の気温も5度近く高めです。早々に満月過ぎの月が登ったため、月明かりは避けようもありません。前夜とは逆に、先にアトラス彗星(C/2019 Y4)の高度が高いうちに撮影を済ませ、真夜中ごろ月を撮るスケジュールを組みました。

左は20:20頃から90分の露出をかけたアトラス彗星。前夜より高高度なのに、いっそう光が弱々しく感じました。ピリリと光る核は見当たらず、彗星頭部全体が棒状銀河のごとく鈍く光っています。でもまだ緑のコマは健在ですね。どこまで生き延びるでしょうか?

20200408_18728月
真夜中に南中を迎える少し前、今度はまん丸の月を撮影しました(右画像)。太陽黄経差は約187.28°、撮影高度は約47.6°、月齢は15.22です。ひと晩前の撮影から24時間あまり経ち、満月を半日ほど過ぎました。このため、東側(右側)が欠け始まっています。気温がグングン下がって大気の状態が乱れ始まり、シャープな像ではありません。

この月も昨日並みに地球に近いですが、昨日の記事に示したグラフを見ると分かるように約1000kmほど遠くなりました。もちろん肉眼で見ても全く分かりませんが、直径を画像上で比較すると8ピクセルほど小さくなっていました(元画像の月は約3300ピクセル)。

月の赤緯はゆっくり下がりつつあって、約1週間後には南東に低く輝く木星・土星・火星のあたりまで南下するでしょう。こうなると私の観測場所からは隣家に隠れて見えなくなります。

参考:
アトラス彗星(C/2019 Y4)に関係する記事(ブログ内)