リュウグウの練習台・小惑星163373が接近中! ― 2020/02/11
もしみなさんが「恋する小惑星」(略称・恋アス)の主人公「あおちゃん」のような子に「小惑星を見つけたい」と質問されたら、どう答えますか?星座の探し方や望遠鏡の使い方などを1から丁寧に教えますか?JAXAやNASA、望遠鏡メーカーなど宇宙関連の就職を勧めて質問の矛先を変えますか?実際に捜索を行っている海外の天文台へ連れて行くのもあり?それとも、現実を教えて「そんなの無理だよ」と説き伏せますか?
私なら、まず自力で既知の小惑星を見つけ出すことを何度も体験させるでしょう。明るい小惑星でも良いし、慣れてきたら15等以下の暗い小惑星でも良い。ターゲットは文字通り星の数ほどありますから。将来どうするにせよ、過去にアマチュアが大活躍していた小惑星探しのステップを追体験することは無駄にならないと思うからです。面白さと難しさの両天秤は若い時代にこそ活きるもの。
のっけから話がそれましたが、当ブログ2018年9月2日の記事に「小惑星リュウグウ撮影に備え、似た小惑星で練習しよう」ということを書きました。はやぶさ2の探索対象になったリュウグウは地球近傍小惑星のひとつ。今年2020年の暮れに地球へ接近します。その接近コースがあったからこそ、探査機はやぶさ2も今年初冬に最小限の移動で地球帰還できるわけですね。
地球接近に併せて「自分の機材でリュウグウを捉えてみたい」とお考えの方も多いでしょう。ただ、慣れない方が簡単にできることじゃありません。事前に似たような状況下で練習し、難しさと面白さとを体験するのが大事だと思うわけです。「15等まで撮影できる機材でも14等で高速移動する小惑星は写せない」といったことは体験しなければ分かりません。
前出記事リンク先に練習台になりそうな小惑星をリストアップしてありますが、この中で小惑星163373(2002 PZ39)が正に今週接近しています。左上画像は数日前の2月9日に小惑星163373を撮影したもの。満月夜でしたが、14等台の小惑星が60分間の移動によって線状に写っています。(※この画像縦幅が満月直径にほぼ等しい。)小惑星163373は現在右下星図のようなコースで接近中(ステラナビゲーターによる作図/日付マーカーは21:00JST位置)。観察や撮影には機材に合わせた星図や導入セッティングが不可欠ですが、よほどマニアックな星図ソフトでもない限りこの小惑星はデフォルト表示できないでしょう。ではどうするか?という体験も必要になるのです。
例えばNASA・Horizonsによる軌道計算や軌道要素取得を経て自分の使っている星図ソフト・導入ソフトへ入力してみてください。ここまで行うだけでも、初心者には苦労の連続ですよ。高速移動天体は決まった位置にいませんから、移動に合わせてリアルタイム表示できる環境も必要ですね。
下に、小惑星163373とリュウグウとの各接近時における「見かけ上の移動速度」「光度」の違いを掲載しました。スペックが似ていても、小惑星ごとに、あるいは接近の度に、状況はどんどん変化します。例えば今回の小惑星163373は接近に伴う移動の極大と光度の極大のタイミングが一致しています。速い移動でも明るければ撮影しやすいかも、という判断ができるかも知れません(→やってみなけりゃ分からない!そのための練習!)。いっぽう年末のリュウグウは光度ピークと移動速度ピークが一致していません。今回のリュウグウ接近では小惑星163373ほど極端に速度が変化しないため、接近前の明るくて観察しやすいときに観れば良いことが分かるでしょう。こうした状況判断は誰も教えてくれません(たぶん)。自分自身での観察と考察が重要なんですね。
小惑星163373の地球最接近日は2月15日。そのころは1時間あたり満月直径以上動いてしまいます。19日ごろには金星方向、それ以降は太陽方向に重なって急速に見えなくなります。タイムリミットはわずかですが、ぜひこのチャンスを活かしてくださいね。リュウグウは小惑星163373よりもずっと暗いですよ。「あおちゃん」や「みらちゃん」のような子が現れマジレスが求められたとき、質問や目標の真意がどこにあるのか分かってあげられるようになりたいですね。
私なら、まず自力で既知の小惑星を見つけ出すことを何度も体験させるでしょう。明るい小惑星でも良いし、慣れてきたら15等以下の暗い小惑星でも良い。ターゲットは文字通り星の数ほどありますから。将来どうするにせよ、過去にアマチュアが大活躍していた小惑星探しのステップを追体験することは無駄にならないと思うからです。面白さと難しさの両天秤は若い時代にこそ活きるもの。
のっけから話がそれましたが、当ブログ2018年9月2日の記事に「小惑星リュウグウ撮影に備え、似た小惑星で練習しよう」ということを書きました。はやぶさ2の探索対象になったリュウグウは地球近傍小惑星のひとつ。今年2020年の暮れに地球へ接近します。その接近コースがあったからこそ、探査機はやぶさ2も今年初冬に最小限の移動で地球帰還できるわけですね。
地球接近に併せて「自分の機材でリュウグウを捉えてみたい」とお考えの方も多いでしょう。ただ、慣れない方が簡単にできることじゃありません。事前に似たような状況下で練習し、難しさと面白さとを体験するのが大事だと思うわけです。「15等まで撮影できる機材でも14等で高速移動する小惑星は写せない」といったことは体験しなければ分かりません。
前出記事リンク先に練習台になりそうな小惑星をリストアップしてありますが、この中で小惑星163373(2002 PZ39)が正に今週接近しています。左上画像は数日前の2月9日に小惑星163373を撮影したもの。満月夜でしたが、14等台の小惑星が60分間の移動によって線状に写っています。(※この画像縦幅が満月直径にほぼ等しい。)小惑星163373は現在右下星図のようなコースで接近中(ステラナビゲーターによる作図/日付マーカーは21:00JST位置)。観察や撮影には機材に合わせた星図や導入セッティングが不可欠ですが、よほどマニアックな星図ソフトでもない限りこの小惑星はデフォルト表示できないでしょう。ではどうするか?という体験も必要になるのです。
例えばNASA・Horizonsによる軌道計算や軌道要素取得を経て自分の使っている星図ソフト・導入ソフトへ入力してみてください。ここまで行うだけでも、初心者には苦労の連続ですよ。高速移動天体は決まった位置にいませんから、移動に合わせてリアルタイム表示できる環境も必要ですね。
下に、小惑星163373とリュウグウとの各接近時における「見かけ上の移動速度」「光度」の違いを掲載しました。スペックが似ていても、小惑星ごとに、あるいは接近の度に、状況はどんどん変化します。例えば今回の小惑星163373は接近に伴う移動の極大と光度の極大のタイミングが一致しています。速い移動でも明るければ撮影しやすいかも、という判断ができるかも知れません(→やってみなけりゃ分からない!そのための練習!)。いっぽう年末のリュウグウは光度ピークと移動速度ピークが一致していません。今回のリュウグウ接近では小惑星163373ほど極端に速度が変化しないため、接近前の明るくて観察しやすいときに観れば良いことが分かるでしょう。こうした状況判断は誰も教えてくれません(たぶん)。自分自身での観察と考察が重要なんですね。
小惑星163373の地球最接近日は2月15日。そのころは1時間あたり満月直径以上動いてしまいます。19日ごろには金星方向、それ以降は太陽方向に重なって急速に見えなくなります。タイムリミットはわずかですが、ぜひこのチャンスを活かしてくださいね。リュウグウは小惑星163373よりもずっと暗いですよ。「あおちゃん」や「みらちゃん」のような子が現れマジレスが求められたとき、質問や目標の真意がどこにあるのか分かってあげられるようになりたいですね。
【参考:小惑星163373と小惑星リュウグウの地球接近データ】
小惑星番号 | 前回 | 今回(2020年) | 次回 |
---|---|---|---|
163373 (2002 PZ39) | 2018年8月18日 8:24 (57.6999LD) | 2020年2月15日 11:05 (15.0234LD) | 2027年7月4日 10:39 (127.2343LD) |
162176 Ryugu(1999 JU3) | 2016年7月24日 20:22 (154.2734LD) | 2020年12月29日 0:46 (23.5555LD) | 2025年6月3日 19:59 (145.1271LD) |
- 日時と最接近距離を掲載しました。日時は太陽系力学時(TDB)です。地球表面で使われる地球時(TT)と大きな差はありません。
- データはJPL Small-Body Database Browserによります。
- LDとは地球と月の平均距離(Lunar Distance=384400km)。
- 地球近傍小惑星は一周期毎に地球へ接近するわけではありません。また接近距離もまちまちです。