雲間に下弦前の月を味わう2019/09/19

20190919_23048月
昨日は朝から曇り始め、昼前には雨が降り出しました。夜には止んだものの夜半まで雲が多めでした。明け方前に確認すると雲間に下弦前の月が輝いています。何となく観察したくなり、望遠鏡を向けてみました。

思った通り大気が揺らめいていましたが、美しい月でした。雲がないところは透明度が高く、微光星も良く見えています。月の近くに明るい流れ星が流れ、キラキラしていたのが印象的でした。

左は3時少し前の撮影で、太陽黄経差230.48°、撮影高度は約66.3°、月齢19.31です。ポシドニウスやティオフィルスなどが夕方を迎え、アルタイ崖も影を伸ばしています。アポロ11号や17号の着陸地点が見頃ですね。月の北極側も良く見えており、ヘルミットやピアリーはおろか、ロジェストベンスキー・クレーターまで確認できたのは意外でした。

20190919月の光環
時々月を薄雲が覆い、その度に光環が現れました(右画像)。結構美しかったけれど、カメラでは絶対に撮れない透明感がありました。こればかりは肉眼に敵いません。人間の目ってすごい。

やがて月の周囲だけ雲が濃くなってしまい、お開きとなりました。雲間にはもうプロキオンやシリウス、ポルックスたちが高くなりつつあり、明け方の空はすっかり冬の装いです。

【ちなみに…】
朝になってから気付いたのですが、明け方写した上の写真に重要な『状況』が写っていました。月面の南側を見てください(下A画像)。光条を伸ばすティコ・クレーターのもっと南の明暗境界付近にシンペリウス(Simpelius)とマンチヌス(Manzinus)が確認できるでしょう。実は、先日インドの月探査船「チャンドラヤーン2」から切り離され着陸予定だった技術実証機ヴィクラムの目的地が、このクレーターの中間付近なのです。

今朝は拡大撮影しなかったので、位相が異なりますが5月16日に撮影した月南極付近の画像を再掲載しました(下B画像)。SimpeliusとManzinusの中間にあるサテライトクレーターSimpelius NとManzinus Cの間(画像の赤点線円)が着陸予定地だったそうです。ご存じの様にヴィクラムは下降中に通信途絶。その後、周回しているチャンドラヤーン2が月面に落下したヴィクラムを発見したとのことですが、具体的な場所は今のところ公開されていません。着陸まで残り2km程度の事故なので、おそらく落下地点は目的地近くと思われます。

今も通信回復に向けた作業が続いていますが、未だ吉報は聞こえてきません。ヴィクラムは太陽電池でエネルギーを供給する仕様で、月が夜を迎えるまでの14日間しか活動できません。(月の夜は越えられないそうです。)あらためて今朝撮影した画像を見ると着陸予定地に影が忍び寄っており、もう24時間も経たないうちに夜が来てしまうでしょう。凛として静かに輝いていた月でしたが、壮絶なドラマが展開されていることを思うと切なくなりました。

  • 20190919月の南側

  • 20190516月の南側



参考:
アーカイブ:月の形(黄経差216度以上、252度未満)

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