満月過ぎの月夜を楽しむ2019/09/15

20190915_18476月
昨日は朝から宵まで雲が多く、満月過ぎの月は見えないかに思えました。でも夜半を迎える頃には前夜を凌ぐほどの快星に転じ、素晴らしく安定した月夜となりました。さすがに淡い天体の観察は困難なので、今夜もお月見に徹しました。

左は日付が15日に変わった瞬間を狙って撮ったもの。撮影時の太陽黄経差は184.76°、撮影高度48°あまり、月齢15.18。少し高度が高くなっただけでも写りが随分変わります。(我が家の環境…住宅街のど真ん中…では30°から35°あたりが鬼門で、それより低いと極端に悪化します。)黄経差180°をわずかに越えたので東側(右リム側)が欠け始まっていますが、昨日の記事末・参考欄に書いた通り、今回のほうが丸に近い様です。

細かな大気の揺らぎがあったのですが想像以上に滑らかに撮れたので、色彩が豊かになりました。こういうときは彩度を上げてみると面白いですよ(下A画像)。一見して白黒の濃淡にしか見えない月面が、創世の歴史を感じるような画像に早変わり。素のまま見ても何となくは分かるんですが、一様な「海」も、部分ごとに色彩やその濃淡が変わっていたり、別の模様や光条が覆い被さっていることがいっそうはっきりします。

一般に赤いところほど風化が進んで古い領域、白く明るいところは比較的新しい衝突痕などと言われます。同じ衝突痕でも南のティコと、中央西寄りのコペルニクスとでは明るさが異なっており、衝突時の条件が違うのか、それとも時代が違うせいなのか、地球から見るとそう見えるだけなのか、興味がそそられます。2019年6月28日記事に掲載した月面傾斜量図を下B画像に示しましたが、比較すると光条が地形傾斜に全く寄与していないことが分かるでしょう。またリンクルリッジ(Wrinkle Ridge/溶岩の皺)が新旧領域を分割してるのではないかという発想も、実際に照らし合わせるとそうなっていないと分かるでしょう。むしろ標高に関連付けたほうが良いのかも知れません。

単純な色彩強調でも分かり辛いところは、更に反転してみましょう(下C画像)。補色が強調されるからだと思いますが、微妙な色彩変化や光条の伸び具合などがA画像より視認しやすくなります。ただし、撮影過程で大気差、色収差などにより付いてしまう色や、画像処理過程で発生する偽色も含まれる可能性があるため、本格的に研究する際は見誤らないよう注意が必要です。白黒撮影時に私はシンチレーション軽減のための黄・オレンジ・赤・赤外フィルタを多用しますが、もっと狭めて「月面ナローバンド撮影」を行うのも面白そうですね。

  • 20190915_月の色彩

    A.色彩強調
  • 月面傾斜量

    B.月面傾斜量
  • 20190915_月の色彩

    C.色彩強調+反転


今日の太陽2019/09/15

20190915太陽
夜半前から朝までよく晴れていましたが、午前中はやや雲が出ています。夕方までには曇ってしまう予報が出ており、晴れ間がある内に太陽観察しました。

20190915太陽リム
左は10:10頃の太陽。若干モヤが出ています。活動領域はありません。所々にプロミネンスが目立ちますが、特別大規模なものはありませんでした。

今日日中は30度近くまで上がりそうな勢いですが、朝晩がだいぶ涼しくなりました。観察中にいつも聞こえていたセミの声が、かなり減りました。やっと秋が来てくれそうです。

いきなり2019年の台風16号発生2019/09/15


20190915-2100台風16号
突然ですが、本日21:00に台風16号「ペイパー/PEIPAH」が発生したと気象庁から発表がありました。直前の台風15号発生から10日と6時間後、15号消滅から5日と6時間後の発生になります。

左は発生時の衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。夜間なので赤外線白黒画像です。赤点線円は台風中心の直径1000km円を表します。なおこの台風は9月11日に発表されていた「台風になるかも知れない熱帯低気圧」ではありません。この時発表されたものは後日取り消されて低気圧になり、現在関東の南、小笠原諸島の北域に大きな雲の塊を作っています。

左画像をじっくりご覧いただきたいのですが、21時の時点で房総半島に雨をもたらしている雲の固まりも15日9時に発生した新しい熱帯低気圧です。南から前線を押し上げる様に北上しており、その南には「元・台風のたまご」が鎮座し、更にその南東に台風16号という配置です。16号は15号の様に北西へ進む予報ですが、あまり発達せず本州まで到達しないで終わるとの見方です。それでも他の低気圧や水蒸気の動きを滞らせたり、融合したりしながら間接的に影響が及ぶでしょう。少なくとも小笠原諸島まで台風のまま接近しますから、「日本に影響ない」なんて言うべきではありません。間に挟まれている「元・台風のたまご」の動きや再発達にも注意する必要があるでしょう。脅威の対象が台風だけとは限りませんから。

台風15号が9日に首都圏を直撃し、千葉などを中心に大きな被害が出ました。一週間経つのに、いまだ電力が復旧せず、食料・水・必要物資がままならない地域が多い状況です。15号の元になった熱帯低気圧発生情報を当ブログに掲載したのは、16号より遙かに遠い海域にあった頃でした(→9月4日記事)。この時点で今回の惨状を予見し、用心や防災に奔走した方は何人いらっしゃったでしょうか?本当に心が痛みますが、追い打ちをかける様に今日からしばらくの間は油断ならない気圧配置。少しの雨でも復旧が遅れ、健康被害も発生するでしょう。疲労と緊張とで「防災疲れ」が出ている頃とは思いますが、被災地の方も、そうでない方も、十分お気を付けください。