超大型台風10号が西日本接近2019/08/13


20190813-0900台風10号
台風10号は昨日12日15:00から「超大型クラス」になり、さらに強風域を拡大しながら西日本へ迫っています。

左は本日9時の衛星画像(画像元:NICT・RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。ナチュラルカラー処理のため、水色の雲は活発に上昇した氷粒状態、白やグレイの雲は低層の水粒状態を表します。赤点線円は台風中心の直径1500km円を表しています。

画像を見ると「台風の目」がとても大きく、直径が250km程度になっています。「風速50m/hを超える強い台風」「勢力が長期に及ぶ」「北緯20度から30度、海水温26度から29度の海域で発生」という『環状台風(Annular Typhoon)』の特徴に良く一致しています。台風の目の中にも小さな渦(メソ渦)が見られ、インナーバンドの雲渦全体がヘキサゴンになっているのも特徴的ですね。(※環状台風の特徴を持つ近年の例としては、2015年25号2017年5号2018年19号などがあります。)

20190813-0900台風9&10号スペック
台風10号の移動速度も一時期自転車より遅かったですが、やっと「並の台風」になりつつあります。遅い移動による災害リスクは少し減ったでしょうか。右図は8月9日の記事に掲載したスペックのうち、速度と移動距離のグラフです。もちろんまだまだ油断はできません。

2000年以降に発生した台風で「超大型」になったものは2001年4号、2001年11号、2004年23号、2007年14号、2011年6号、2017年21号の6つです。近年は台風が凶悪になっている…などというイメージが強いですが、きちんと統計を取ってみると「巨大化しつつある」といった傾向はありません。根拠なくボンヤリ抱いてるイメージで物事を語ってしまうのは科学的に望ましくありませんね。

ひとくちに台風と言っても存在期間中に様々な状態へ変化します。例えば存在期間が全く同じ台風がふたつあって、片方は「ずっと大型で、3時間だけ超大型になった」、もう片方は「大部分の期間が超大型だった」という場合、統計上どちらも同等に「超大型」とすることには疑問を覚えます。成長衰退過程を無視して、個数のみ論じることは意味がないでしょう。

気象庁ベストトラックを使い自作プログラムで集計した図を、下にふたつ掲載しました。この図ではひとつひとつの台風スペックを1時間刻みで調べ、調査項目(今回の場合は強風域直径)のレンジに対して度数を与えてゆく方法を採っています。B図を見ると、台風が長時間「超大型」を保ったのは2000年より前のほうが多かったことが歴然とします。同じ発想で、度数を使った細かい分析は2017年8月2日記事(台風の移動速度分布)や、2018年11月1日記事(日々の台風存在度数)などにもあります。

  • 強風域直径分布

    A.強風域直径分布(直径別)
  • 強風域直径分布(年別)

    B.強風域直径分布(年別)


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