銀河系の中心を観る2019/04/16

20190416銀河系中心
昨夜から今朝にかけてとても良い天気でした。月を観たかったのですが、観察に支障をきたすほどの強風が夜半過ぎまで残ったので、大きな機材を用意するのは諦めました。大気の揺らぎも相当大きく、天頂のアルクトゥルスが瞬いていたほどです。上空の1等星がまたたくことは滅多にないのですが…。

何かできないだろうかと思案を巡らせたところ、明け方月没後のわずかな時間にそそり立つ天の川が見えそうだと気付きました。散歩がてら見晴らし良いところで天の川全景を…とも思いましたが、先日に話題となった楕円銀河M87のブラックホールの件を思い出し、「私たちの住む銀河系の中心を撮れないか」と考え直しました。

いままで幾度となく天の川を撮ってきましたが、中心を意識して撮影したことはありません。世に出回っている多くの天体写真も、銀河系中心の撮影を意図したものは見たことないですねぇ。ほとんどは天の川全体か、さもなくば天の川に沿って散在する見栄えの良い星雲、星団、暗黒星雲、分子雲そのものを対象としてます。写真映えするものが何もない銀河中心が主役になることはなかったのでしょう。かわいそうに…。

ふとベランダに出ると、ちょうど月が沈もうとしていたところで、しかもさそり座の尻尾付近が南中しかけています。出かけるまでもなくベランダから撮影できそうだったので、小型赤道儀を用意してカメラを南天に向けました。そうして撮影したのが左上画像です。我が家からは南方向に凄まじく眩しい街灯があり、街の光害中心も同じ方向です。またベランダからは北極星が見えないため、極軸合わせも工夫が必要。今回は月没から明け方まで30分もないため余裕はありません。大雑把に機材を置いて連写しただけです。撮影はなんとかできましたが、ほぼまっ白な原画から銀河を拾い出すのは至難の業でした。光害が少々取り切れていませんがご容赦を。

20190416銀河系中心
写野画角は85mmレンズ+APS-Cの範囲を少しトリミングしたエリア。天の北を上方向にしてあります。どこに何が写っているかは右のマーカー付き画像をご覧ください。赤茶色のモクモクした光が銀河系を形作る微光星で、私たちが「天の川」と呼んでいるものです。銀河系の中心をあらわす「いて座A*」が画像中央付近にあります。ここにも巨大なブラックホールがあるそうですよ。すぐ南東側の赤い散光星雲はシャープレスカタログの「Sh2-16」。今年は木星が近くにいるので、このエリアは街中でも導入しやすいでしょう。

いて座A*をはさんで右上側(木星側)と左下側とでモクモクが分離しているように感じますが、実際は一連の集合体です。左上から右下にかけて暗黒星雲が横切っているため、暗く見えるのです。でも、右上側と左下側の明るさがこんなにも違うなんて驚きました。

前述したように、残念ながらいて座A*付近を可視光観察しても、目標になるような天体は何もありません。M87のような宇宙ジェットも出ていません。でも、間違いなくこの方向に銀河系の「真ん中」があるんですよね。白み始めた街の向こうを見ながらそんな風に意識すると、何だか不思議な気分になりました。

参考:いて座A*の位置(Wikipediaによる/2000.0年分点)
  赤経…  17h 45m 40.03599s      赤緯…  -29° 0′ 28.1699″
※Sgrはいて座(Sagittarius)の略称。

【参考:バーナード・カタログ】

バーナード・カタログ星図
主要な星団や星雲、銀河などは幾つものカタログが作られていますが、黒い雲のような暗黒星雲も「バーナード・カタログ」という一覧が作られています。暗黒星雲は微光星の密集域や明るく広がる星雲の手前に存在するものしか見えないため、カタログに掲載されている349の暗黒星雲はすべて天の川に沿っています。

左上図は今回撮影したエリア付近にあるバーナード・カタログ掲載の星雲域を、ステラナビゲーターによって描いたもの。丸く描いてある領域が暗黒星雲の場所で、中央付近の数字はバーナード・カタログ番号です。一般にメシエ・カタログ○○番目の天体をM○○と言うように、バーナード・カタログの天体もB○○と表記します。上の画像と照らし合わせてみてください。

画像上辺中央に輝く木星は4月16日0:00の位置で、恒星は10等まで、またカタログに大きさが示されてないものは直径1°円を描いてあります。(※星雲が丸いわけではありません、念のため。)B85はM20「三裂星雲」を分割している暗黒帯、B88はM8「干潟星雲」を分割している暗黒帯を指します。また上画像の範囲外ですが、木星の右下にあるB72は有名な「S字状暗黒星雲」です。


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