ハワイを襲う冬の嵐と気象衛星2019/02/13


20190210-2100UT_GOES-West
日本の南西諸島や小笠原諸島との緯度差が10°未満であるハワイ。「常夏の国」とも言われますが、富士山より標高が高い地域があるので雪が積もりスキーやスノボができるほどです。世界中の天文台が集まるマウナケアやマウナロアといった火山地帯は4000m級です。もちろん平地で雪が積もったりはしません。4000m弱の山を有する台湾に環境が似ているでしょうか。

いくつかのニュースで流れましたが、2月10日にハワイが冬の嵐に見舞われ、マウイ島の標高約1890mにあるポリポリ州立公園で「ハワイ観測史上もっとも低い土地での降雪」が観測されたということです。左画像はアメリカの気象観測衛星が10日21:00UTに撮影した画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。ハワイ北西海域に、まるでハリケーンのような低気圧の渦が確認できますね。雲そのものは厚くないのですが湿った強風が雪を降らせ、またその風もマウナケア山頂で85m/sという桁外れの凄さでした。高波による沿岸浸水も発生しています。1900m台で降雪があったのですから、もっと標高が高いところにある天文台群も氷漬けになった模様(→SpaceWeatherの記事参照)。

(※参考:アジア圏低緯度地方を襲った2016年1月24日頃の大寒波では、2018年3月19日記事で「連続虹記録8時間58分」のギネス記録を打ち立てた中国文化大学など台北の低地でも雪が積もり、大きなニュースになりました。ハワイ諸島北端のカウワイ島は北緯約22°、台湾の台南市は北緯約23°、日本の波照間島は北緯約24°。降雪が確認された最低緯度って何度くらいなのでしょうね?)

GOES-West撮影範囲
ところで、実はこの嵐の記録がほぼ「初仕事」となったのが、左上画像を撮影したGOES-Westでした。2018年3月1日に打ち上げられたGOES-17(打ち上げ時GOES-S)は調整・チェックを経て昨日2月12日から正式任務に就いたのです。既に運用されているGOES-East(現在はGOES-16/打ち上げ時GOES-R)とともにアメリカ周辺の気象観測を担うことになります。

それぞれの守備範囲は右図の通り(NOAAサイトから引用)。これに日本の気象衛星ひまわりも加えれば、太平洋から大西洋まで完全にカバーできるでしょう。それぞれカメラスペックはほぼ同等なので、ある波長に注目した観測なども連続性が保てるかと思われます。GOES-Westが位置する赤道上空・西経137.2°は、本土だけでなく、アラスカやハワイ、アメリカ領サモアも入るし、マリアナ諸島もギリギリカバーしています。(申し訳程度ですが…。)

低高度で極軌道を周回するTerraやAquaなどの地球観測衛星は地球をくまなく回れますが、撮影頻度は日に1、2回。それに比べ高い位置にある静止気象衛星はどうしても空間解像度が落ちますが、定点観測で一日に何百枚も撮影できるから時間解像度は抜群。こうして撮影画像を一般に公開していることも、防災上の観点から実にありがたいですね。