アラビア海のサイクロン2018/05/27

20180525サイクロンMekunu
最近のことですが、インド洋の北西部にあたるアラビア海でふたつのサイクロンが立て続けに発生したとのこと。それぞれアラビア半島付近へ接近上陸、大きな被害が出ているというニュースを幾つも目にしました。

ひとつはTropical Storm「SAGAR」。5月19日時点でアデン湾の奥まで到達しつつ中心風速50ノットまで弱まり、その後消滅したようです。もうひとつのCyclone「MEKUNU」は昨日26日に風速100ノットという強い勢力のままアラビア半島へ上陸、今日はCycloneからTropical Stormに弱まりつつもまだ影響が残っているようです。

左画像は一昨日25日オマーン付近へ上陸する寸前の「MEKUNU」を地球観測衛星「Aqua」が捉えたもの(NASA WorldViewより引用)。また右下地図はJoint Typhoon Warning Centerの情報を元に描いた「MEKUNU」の経路。上陸付近では大規模な洪水で死者・行方不明者が出ています。

2018サイクロンMEKUNU経路
アラビアにサイクロンが接近・上陸すること自体が稀な出来事のようで、更に今回のような強い勢力を保ったまま…というのは周辺諸国にとって観測例が無いような事態。当然どんなふうに防災するのか、あるいは嵐が去った後の二次被害(土砂災害や疫病など)の知識がほとんど無いと思われます…。ものすごく心配ですね。

ところで、「砂漠が多い地方に大雨をもたらすようなサイクロンなんて来る訳がない」という字面だけで納得しそうですが、ほんとうにそうなのか、どれほど稀なのか、具体的に観測データを調べたくなるのが私の性分。Joint Typhoon Warning Centerにあったインド洋サイクロンのベストトラックを1日がかりで総当たりし、地図化してみました。

1971年から2017年までの間に北インド洋(インド洋のうち赤道から北側)で発生したサイクロンは314個(下A図)、その中で東経60°より西まで進行し、かつサイクロン存在中に少なくともカテゴリー1(中心付近の風速が64ノット以上)になったサイクロンは11個ありました。年平均26個ほど近海で台風が発生し、半数近く接近・上陸する日本と比べて、いかがでしょうか。

ひとくちにインド洋と言ってもかなり広範囲で、発生・進行するサイクロンはベンガル湾側が多いようです。ただ、アラビア半島に強いまま接近するケースがひとつも無いと言ったことはなく、下B図のように今回より強い状態での接近は何件かあります。2000年より前は1984年、1996年、1998年の3件。数年間来ないこともあれば、1年でふたつも強いものが接近することも。サイクロン自体が少ないので「稀さ」を強調しても意味の無いことで、むしろ「世代間で防災知識や警戒心が引き継がれないまま忘れ去られるほどスパンが長い」という問題点こそ憂慮・対処すべきでしょう。これ、日本の火山防災などにも言えることですが…。

  • 北インド洋のサイクロン

  • 北インド洋のサイクロン(抜粋)



  • Joint Typhoon Warning Centerのベストトラックアーカイブは1945年から存在していますが、サイクロン規模の分かる「中心付近の風速」まで記録してあるのは1971年頃からです。従って今回の調査対象は1971年以降2017年までとしました。
  • 2017年のデータはまだアーカイブされていませんので、この年のみインド気象局のアーカイブを使用しました。


  • 参考:
    マダガスカル島に強いサイクロン接近(2018/03/16)

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