金星と接近する天体たち2018/05/20

20180519宵空
昨夕から今朝にかけ、一時的に晴れ間があったものの雲が多い夜でした。結局快晴になったのは今朝を迎えてからです。そんな昨日の宵に僅かな晴れ間を見つけ、西空の月と金星を楽しみました。

月と金星は17日と18日の晩に見かけ上接近していました(右下図/Stellariumによる)。ただ当地・茨城を含む多くの地域では天気が悪く、ご覧になれた方は少ないと思われます。たいへん美しくて目立つ天体接近だっただけに残念です。昨夕の月は左画像のように、もう随分金星から離れていました。

2018年5月下旬・宵空に輝く金星の周囲
ところでこの接近と同じくらい楽しみにしていた接近現象があります。それは「金星とM35の接近」です。M天体のひとつ、ふたご座の散開星団M35は黄道近くにある星団のため、惑星と一緒に見えることがあるのです。4月下旬にはプレアデス星団(M45)と金星が並んだばかり(関連記事1関連記事2など)ですが、明日5月21日にはM35、来月6月20日にはプレセペ星団(M44)、という具合に立て続けに接近を起こします。

昨夕もかなり近く見えており、僅かな晴れ間に撮影したのが左下画像です。この時点で金星と星団中心との離角は約2.5°。最接近する21日には約0.7°まで近づきます。最接近当日に限らず向こう数日は双眼鏡や望遠鏡低倍率で同一視野に見えますから、晴れたらぜひお楽しみください。

20180519金星とM35の接近
M天体の明るい星雲や星団と惑星が並んで見えるのはそう珍しいことではありませんが、天候を含めて条件良く見える確率はけっこう低いものです。そもそも星雲星団はギラギラ見える訳ではないので、接近していることを知らないまま日にちが過ぎてしまったことも多いでしょう。(私はかなり見逃しています…。)プレアデス星団など目立つものは予報が出ることもありますが、それ以外の予報は見たことがありません。

惑星軌道面の黄道に対する傾斜は、一番大きな水星で約7°、二番目に大きな金星が約3.4°、それ以外は全て3°未満。日本から見た各惑星は視差を考慮しても黄緯がプラスマイナス1桁台止まりです。試しに一般的な小型双眼鏡(視野が約7°)でカバーできる範囲を想定して、「黄道から8°以内にあって、8等以上のM天体」を調べると下A表の20個ありました。さそり座やいて座付近の20番台などは南に低く、南の方向が良く開けていないと見えない場合もあるでしょう。また内惑星である水星や金星はそもそも太陽からあまり離れませんから、宵の西空や明け方の東空にしか見えず、低空の薄明薄暮という悪条件の観察が強いられることも多いでしょう。

ついでに、金星がM天体に接近するケースを2018年から2020年まで計算してみました(下B表)。M天体は広がりがあるので、接近と言っても厳密なものではなく、数日間にわたって楽しめるでしょう。ただし金星と太陽の離角が20°を割り込むと薄明が強過ぎて、金星は見えるのに星団は見えないといった状況になる可能性が高いです。逆に東方最大離角付近でプレアデス星団に大接近する2020年4月4日のようなケースでは、これ以上望めないほど最高の条件で、さぞ素晴らしい光景となるに違いありません。近い内に他の惑星や月も含めて前後数十年レベルが俯瞰できるM天体接近カレンダーをアーカイブに加えたいと考えています。

  • 【表A:惑星接近の可能性があるM天体】
    天体名等級黄経
    (°)
    黄緯
    (°)
    M46.4248.491-4.876
    M86.0270.865-0.947
    M97.7260.3024.580
    M176.0275.0337.165
    M187.5274.7826.223
    M196.8257.135-3.466
    M216.5271.0630.935
    M225.1278.315-0.723
    M236.9269.2414.421
    M244.6274.0214.897
    M256.5277.4743.985
    M286.8275.557-1.545
    M355.392.0280.910
    M443.7127.2021.563
    M451.659.8874.086
    M547.6281.948-7.614
    M626.5257.214-7.328
    M676.1131.742-5.665
    M807.3246.414-1.628
    M1048.0193.756-6.724

    • 黄緯プラスマイナス8°以内(J2000.0)かつ8等級以上としました。
    • 元位置はwikipediaのリストによります。ここでは理解しやすいよう黄道座標系に変換しています。
  • 【表B:金星とM天体の接近】
    接近日時天体名最小離角
    (°)
    惑星・太陽離角
    (°)
    2018年1月1日 9:57M220.252.03
    2018年4月25日 7:04M453.5125.61
    2018年5月21日 19:39M350.7231.97
    2018年6月20日 16:55M440.4238.55
    2018年8月22日 6:26M1044.7545.86
    2019年1月14日 8:12M804.9546.77
    2019年1月26日 21:24M91.7245.82
    2019年2月3日 19:05M231.9744.92
    2019年2月5日 10:47M83.3144.70
    2019年2月5日 12:56M211.4244.69
    2019年2月7日 22:29M242.6944.37
    2019年2月8日 12:51M184.0544.29
    2019年2月8日 17:02M175.0144.26
    2019年2月9日 13:28M283.6644.14
    2019年2月10日 23:10M251.9643.94
    2019年2月11日 21:49M222.7043.81
    2019年7月5日 21:59M350.9110.91
    2019年8月3日 12:44M440.553.23
    2019年11月7日 15:24M801.0622.20
    2019年11月9日 9:37M44.2322.62
    2019年11月16日 7:31M192.5424.26
    2019年11月27日 7:24M80.3926.81
    2019年11月27日 10:15M212.2726.83
    2019年12月1日 2:30M280.0927.67
    2019年12月3日 7:32M220.7928.17
    2020年4月4日 7:17M450.2945.70
    2020年8月10日 20:17M354.4045.77
    2020年9月13日 15:38M442.5443.28
    2020年9月18日 0:00M675.0442.65
    2020年12月21日 11:40M802.7122.93
    2020年12月30日 2:26M194.2220.91

    • 表Aの天体中心位置について、金星が見かけ上5°以内に接近する場合の最小離角をピックアップしました。計算は自作プログラムによる概算です。


参考:※過去にM天体と惑星や月が接近したのを捉えた記事の一部です
火星とM22が大接近(2018/04/02)
火星と天の川のコラボが素晴らしすぎる(2018/03/24)
月と土星、ついでにM23も接近(2017/01/25)
月・金星・土星・M9が夕空で接近(2016/11/03)
プレセペ星団に近づく金星(2015/06/10)
今日も水星と星団たちの競演です(2015/05/01)
明け方の月とM23の掩蔽(2015/02/15)

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