珍しい雲の渦列2018/03/21

20180317カルマン渦(済州島)
数日前に衛星画像を見ていたら、とても珍しい(と自分が感じた)ものを見つけました。左画像をご覧ください。済州島から左に向かって渦模様が列を作っていますね。今年2018年3月17日に地球観測衛星MODISが撮影したものです(NASA-WorldViewから引用、以下同様)。

一定の流れがある途中に山や柱など小さな障害物があると、風下に渦の列ができます。唐草紋やラーメンどんぶりの雷紋に似ていますが、渦が軸線側に巻いているのが特徴の一つ。(渦を巻かず、腕が交互に伸びることもあります。)これを研究した人の名を取って「カルマン渦列」と呼びます。カルマン渦列はポールに掲揚した旗を波状にはためかせたり、電線をブーンと唸らせる原因にもなります。空気だけでなく水でもOK。川に架かる橋脚の根元に見えたり、味噌汁を箸でスッと混ぜるだけで見えることも。絵の具や墨でマーブリングの経験がある方なら思いがけず生まれたカルマン渦列を見たことがあるかも知れません。必ずしも目に見える訳ではないので、雲や味噌の粒子などがそこにあることで初めて渦が認識できます。

単独峰があり、冬季に一定の季節風が吹く済州島は風下に向かって雲のカルマン渦列ができる名所です。「名所なら別に珍しくないのでは?」と思われるかも知れません。私が左上画像を見て感動したのは「渦のできる方角」なのです。済州島から西南西へ向かうカルマン渦列を初めて見ました。

過去の衛星画像で済州島や屋久島付近のカルマン渦列を探してみてください。ほぼ間違いなく南や南東の方角に延びているでしょう。下のA画像は2017年12月27日のものですが、これが一般的な方角なのです。シベリアから吹き出す風が冬の日本海を埋め尽くす「筋状の雲」を作ることは有名ですが、この筋の方向に沿って渦ができるのですから、大陸と反対向きになるのは当然ですね。念のため衛星画像を過去2年分見直しましたが、南−南東向きが数十件ほど見つかったのに対し、西向きのベクトルが明瞭だったのは左上の3月17日だけでした。気圧配置のなせるワザと言ってしまえばそれだけなのですが、どうして頻度が少ないのか興味が湧きました。

世界各地の季節風が一定量見込めるところでカルマン渦列を見つけることができます。有名どころではアフリカ大陸北西にあるマデイラ諸島・カナリヤ諸島近海(B画像・2017年6月6日)。ここは済州島など比べものにならないほど多様に発生しています。アイスランド北東のヤンマイエン島も北極やグリーンランドからの風で綺麗なカルマン渦ができていることがありますよ(C画像・2018年3月1日)。日本付近でも済州島や屋久島だけでなく、千島列島でもできていることがあります(D画像・2018年3月11日)。綺麗なカルマン渦列を見つけたら、地形の起伏やどんな風が吹いているのか調べてみてください。

  • 20171227カルマン渦(済州島)

    A.済州島
  • 20170606・カルマン渦(カナリヤ諸島)

    B.カナリヤ諸島
  • 20180301カルマン渦(ヤンマイエン島)

    C.ヤンマイエン島
  • 20180311カルマン渦(千島列島)

    D.千島列島


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