Humanity Starを初観測!2018/03/10

ヒューマニティ・スター
みなさんは「ヒューマニティ・スター」という人工衛星が打ち上げられたニュースをご覧になったことがあるでしょうか?アメリカなどを中心に航空宇宙ベンチャー企業がめざましい活躍をしています。そのひとつであるニュージーランドの「Rocket Lab」(本社は米国LA内)が炭素繊維強化プラスチック製小型ロケット「エレクトロン」を今年1月21日10:43(JST)に打ち上げました。

この打ち上げでは三基の実用衛星が積まれていましたが、その他に左画像(※Rocket LabのPRサイトから引用)のような直径90cmのミラーボールも積み込み、周回軌道に乗せていたのです。これこそが「Humanity Star」本体。地球観測などの実用機能を全く持たせない、いわゆる装飾型・エンターテインメント型の衛星には賛否あると思います。日本のベンチャー企業もイベントとして人工流星を降らせる計画があるそうですが、他方ではそんなこととんでもない、大気が汚れる、資源の無駄遣いだという方もいます。ここで賛否の議論はしませんが、みなさんも折に触れて考えてみてください。

20180310ヒューマニティ・スターの通過経路
前置きが長くなりましたが、ヒューマニティ・スターは打ち上げ後しばらく軌道の関係で光って見えませんでした。3月に入り、やっと北半球で徐々に見えるチャンスが巡ってきたのです。当地・茨城では昨日9日から少しずつ空を通過するようになりました。今日は午後の始めまで昨日の嵐のような天気を引きずり、雲が多くて太陽観察すら無理…。でも夕方までに素晴らしい快晴!。よし、今日も金星と水星を見に行こうと準備していたとき、このヒューマニティ・スターのことを思い出したのです。

Heavens Aboveで確認すると右図のようなパス。薄暮中の空に最高で17°しか上がらず、明るさピークも5.8等。普通の人工衛星なら見向きもしない(見えない)パスです。ですが、いまだに世界中のサイトを探し歩いても「見えた」という報告が載ってないので、ものは試しに観察を試みました。この衛星は「星のように明るく輝く」という前宣伝で、いかにも全体が光りそうなデザイン。でもよく考えると、観察者の方向に太陽光を跳ね返すのは64枚の正三角ミラーのうち1枚だけです。計算サイトでの予報光度も暗いものばかり。どう見えるかは実際に観察するまで分かりません。

20180310ヒューマニティ・スター
星図ではしし座のレグルスさえ見つかれば最高高度&最高光度の位置をフレーミングできるので、薄明のなか懸命に探しました。通過時刻5分ほど前にようやく見つけ、カメラをセット。背景が明るいので設定を色々模索している間に時間が来てしまいました。

肉眼でも観察していたのですが、通過位置にキラッ、キラッ、と数秒間隔を置いて一瞬だけ1等星台に光るものを発見。明らかに航空機とは違います。予想(期待)していたことですが、ミラーボールのような人工衛星は予報光度通りに一様に光るのではなく、点滅をします。鏡面と太陽・観察者がベストの角度なら、予報よりはるかに明るくなることも多いのです。「どのような見え方をするか」「どうやっても見えないものなのか」ということが分かっただけでも、今日観察した甲斐があったというもの。

同時進行で、もたつきながら撮影した2つのコマにもヒューマニティ・スターと思われる光が写っていました(左上画像)。この画像だけでは全く分からないと思いますので、星の名前やHeavens Aboveの星図を重ねた画像も下に用意しました。A・B画像の白○印内にある光点がヒューマニティ・スターです。予報より位置・時刻とも若干ずれていますが、この程度は計算誤差や図の歪みの範囲でしょう。別途CalSkyで再計算した位置からは約8′の位置ズレなので、ほぼ予報通りです。今日観察した限りでは「最高光度付近で数回点滅するのみ」でした。毎回そうなるかどうかはまだ分かりません。

興味深いのはC画像(4秒露出を2枚、2枚の撮影間隔は6-7秒、比較明コンポジット)。1回の露出の中に2つの衛星像が写っていました。別の衛星が平行して飛んでいるのか、またはひとつの衛星が露出間に二回点滅しているのか、この画像だけでは判断できません。肉眼ではこの点滅は分離できませんでしたが、おそらく後者でしょう。今後何度か機会があると思いますから、また挑戦します。なおヒューマニティ・スターは9ヶ月ほどで燃え尽きてしまうそうなので、見たい方はできるだけお早めに。

  • 20180310ヒューマニティ・スター

    A.星の名前付き
  • 20180310ヒューマニティ・スター

    B.経路予想星図付き
  • 20180310ヒューマニティ・スター(拡大)

    C.原寸大トリミング

20180310金星と水星
実はこの他、天宮1号のパスもあったのですが、こちらは更に早い時間の上、予想光度が暗かったので、全く視認できませんでした。

人工衛星の一連の観察を終えてから、やっと金星と水星に向き合っても十分間に合いました。それだけ沈むのが遅くなったということですね。水星は金星よりずっと高くなってしまい、数日後に最も離れます。こちらも晴れたら、もう少し観察を続けたいなと思います。

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