今日の太陽2017/12/26

20171226太陽
昨日日中は強風ながらよく晴れましたが、夜になって少し雲が湧き始めました。夜半前までは良い星空だったので撮影を始めたら、ものの30分ほどですっかり曇り、明け方までほぼそのままでした。今日朝からはよく晴れています。北海道沖の強い低気圧の影響か、今日も風が強めです。

20171226太陽リム
左は11:40前の太陽。活動領域12692は健在です。今日もまた小さなプロミネンスがたくさん。しかもところどころ昨日より高さがあるようです。

2019年の今日は夕日に注目!2017/12/26

茨城県からのダイヤ富士
冬に入ると関東や東海などの太平洋側は晴天に恵まれることが多くなるでしょう。空気が乾燥するので小さな揺らぎは多くなるけれど、透明度が抜群に良くなりますね。そんなときは数百キロ離れた遠くの山々まで見通せることさえあります。

このシチュエーションを最大に活かせるのが「冬のダイヤモンド富士」。雲や霞に邪魔されること無く、富士山頂から登る朝日、あるいは沈む夕日が見える確率も上がるというもの。

当地・茨城県の県南も冬期はダイヤ富士エリア(日没側)に入っていますので、「見えた」「撮った」という話をよく耳にします。茨城は富士山まで150kmから200kmありますから、太陽に対して相対的に富士山が小さくなり、左上画像のように山頂を覆い尽くすダイナミックなダイヤ富士を楽しむことができます。どこでダイヤ富士が見えるかは、右メニューのトピックス「ダイヤ富士」を参考にしてください。

さて、ここからが本題。鬼に笑われそうな気の早い話題なのですが、2年後の今日、つまり2019年12月26日の日本時間夕方に金環日食が起こります。残念ながら日本からは金環になりませんが、「部分日食」なら全国的に見えるでしょう。

20191226金環日食・日食図
右図は当日の日食図。世界のどこで日食が見えるかを描いた地図です。紫の三本線の内部が金環日食の見える範囲。(※三本線の北側が北限、南側が南限、中央が日食中心線です。グアム島がドンピシャですね。)周りにあるオレンジ線も意味がありますが、日本にかかるように描かれた葉っぱみたいな三本線に注目してください。

葉っぱ形の線は、難しい言葉でそれぞれ日没復円線、日没食甚(しょくじん)線、日没初虧(しょき)線と言い、以下の意味があります。

  • 日没復円線……日没の瞬間に日食が終わる
  • 日没食甚線……日没の瞬間に日食が最大になる
  • 日没初虧線……日没の瞬間に日食が始まる

復円線より西の西日本では日没までに部分日食の全行程を見ることができます。初虧線より東では日食を見ることができません。復円線と食甚線に挟まれた東日本や北海道では、一番欠けた状態から元に戻りつつある途中で地平に没する様子を楽しむことができます。(※欠けたまま沈むことを日没帯食と言います。)

さあ、ここまでお話ししたらピンと来る方も多いでしょう。そう、この日よく晴れていれば、関東の一部では「ダイヤモンド日食富士」という、一生に一度あるかないかの貴重な光景を体験できるわけです。よくまぁこんなに良い条件が重なったもんだ……。

20191226都庁からの日没日食シミュレート
こんなに早くお知らせしたのは、これだけの現象を充分堪能できる環境で眺める(撮影する)には、周到なロケハンが必要だからです。天気ばかりはどうしようもありませんが、貴重なチャンスを最大に活かすにはどこから眺めたら良いのか…それを、2年かかって探していただきたいと思ったのです。

もちろんこれは富士山に限った話ではなく、お近くで「ダイヤモンド郷土富士」とか「ダイヤモンドシンボルタワー」とか狙ってもいいし、高度が低いので、よくある「夕日を捕まえた」日食ver.とか「日食釣ったどー!」的トリック写真だって可能です。みなさんの土地ならではの場所、シチュエーションを見つけておいてください。

来年の同じ日に晴れればリハーサルができます。(あっ、もちろん今日の夕方だってOK!)ご自身の使える移動時間、太陽の減光対策、機材の写角や撮影条件、想定した場所に視界を遮るビルや樹木が無いかなど、ぜひ実際の候補地で確かめましょう。因みに左上図は新宿の都庁てっぺんから見ることを想定したシミュレーション(カシミール3Dによる)。富士山と太陽はやや離れてますが、これはこれでイイ感じかも!

【ワンポイント】
天体を撮り慣れている方やカメラマニアには説明するまでもありませんが、太陽は意外に小さいです。地上から見た直径(視直径)は約0.5°ですから、ご自身の使っているカメラ+レンズでどれくらいに写るか計算してみましょう。色々な計算法がありますが、アバウトで良ければマニュアルやカタログに書いてある「35mmフィルム換算の焦点距離(mm)」から導くのが手っ取り早いです。太陽は焦点距離の約100分の1の像になる、という知識を使います。

例えば私の使っているズーム付きコンデジのカタログには焦点距離が「8.8(W)− 36.8mm(T)[35mmフィルム換算:24(W)−100mm(T)]」と書いてあります。Wはめいっぱい広角側(wide/ワイド端)、Tはめいっぱい望遠側(tele/テレ端)の意味。このカメラの最大ズームで太陽を撮ると、実際のカメラのセンサーサイズにかかわらず「35mmフィルム(=約35×24mmのセンサー)上に、レンズ焦点距離100mmの約100分の1、つまり直径1mmの太陽像が写る」と解釈できるのです。

20121207ダイヤ富士
くどいですが言い直せば「35mmフィルム換算100ミリレンズで太陽撮ったら長辺の35分の1」となるわけですね。無論「500mmなら35分の5」、「3000mmなら35分の30」(→短辺はみ出てます)。この比率さえ分かれば、(トリミングしない限り)センサー上だろうとモニター画面だろうとA3プリントだろうと一緒です。レンズを「35mmフィルム換算」で統一して考えれば、コンデジでも、一眼デジカメでも、携帯でも、同じです。単位を必ずmmに揃えてくださいね。見かけの大きさがほぼ同じであるお月さまでも使える知識です。(右画像は180mmレンズ+APS-Cの例。35mmフィルム換算では約270mmレンズ相当です。)

こんなふうに「太陽をどの程度の大きさで写すか」を最初に決めると、一緒に写す別の被写体を何にするかが自ずと絞られるでしょう。至近距離の人物の全身と一緒に撮影するような太陽像は日食が起こっているか分からないほど小さいです。太陽をそれなりに大きく写したいなら、一緒の被写体も小さく(遠く)する必要があります。たくさん経験を積んでください。なお、太陽光は夕日でも、またカメラ越しでも直接見てはいけません。十分注意してください。撮影ではなく純粋に日食観察する場合は、「ピンホール式太陽投影機」(→こちらの記事内に製作方法掲載)などをご利用ください。ピンホール投影機を使うと、上述の100分の1という理屈を直接体験できます。