思えば遠くへ行ったもんだ、ボイジャー1号2017/12/06

探査機ボイジャー
1977年に打ち上げられ、木星や土星の素晴らしい画像を我々に見せてくれた探査機ボイジャー1号(左/引用:NASA)。現在は太陽系の圏外まで到達してなお稼働中で、Interstellar Missionと称される探査データを日々地球に届けてくれています。ネタバレですが「スタートレック」の劇場版第一弾(TMP)にも“番号違い”で登場しましたね。同機に積まれたゴールデンレコードが2018年1月ごろ一般向けにリリース(アナログレコード版およびCD版)されるとの情報も最近耳にしました。

このボイジャー1号の機能延命のため、37年ぶりにエンジン制御テストに成功したというニュースが一週間近く前に流れました(→NASA原文参照)。ボイジャー世代の私としてはまさかの胸が熱くなる展開。おおよその事情は次の通り。正常な通信のためアンテナを正しく地球へ向ける必要があるのですが、方向制御用小型エンジンの調子が数年前から悪化。そこでエンジニアが知恵を絞ったあげく、軌道修正に使う大型エンジンを10ミリ秒という超短時間噴射することで探査機の回転を試みた、ということでした。

言葉で書くと簡単ですが、タッチパネルもマウスも無い、フロッピーディスクでさえやっと発明されたばかりの40年前の機器制御をいまプログラミングしなくてはならない困難や、細かな制御に向いていない軌道修正エンジンで短時間制御がうまく行く保証が無い(前例が無い)など、課題てんこ盛りだったことでしょう。試験は11月28日に行われ、送信が地球から片道19.5時間もかかる指令コードは無事エンジンを動かすことができたのでした。一連の試験の成功で、ボイジャー1号は少なくとも今後2、3年現役を続けられるようです。

ボイジャー1号の飛行経路(地心位置)
ボイジャー1号は地球から見てどの辺りを飛んでいるのでしょうか?Heavens-Aboveサイトには「太陽系脱出軌道上の宇宙機」メニューがあって、主な探査機の位置が大雑把に分かります。でももう少し正確に知りたいと思い、HORIZONS Webを使って計算をしてみました。結果をステラナビゲーターで表示させたのが右図および下図です。打ち上げ翌日から2018年元旦まで全経路を描きました。途中いくつかの「要所」も示してあります。(※すべて地球から見た見かけの位置なのでご注意。便宜上、視点を地心とした計算です。)

当初は木星・土星探査のため、黄道に沿って飛んでいたことが分かります。土星を離脱する際の姿勢制御で黄道を離れ、以来37年間エンジンは使われていなかったのでした。(※下A図は各惑星接近の頃の拡大星図。最接近日の各惑星位置も描いてあります。)こうして平面に描くと距離感が無くなってしまいますが、実際は奥行き方向にどんどん遠ざかっているかと思うと切なくなります。今日の時点で地球から141.278AU(天文単位)、つまり地球−太陽間距離間の141倍あまりも遠いところにいるのです。かつて日本の小惑星探査機「はやぶさ」が数々のトラブルに見舞われながら地球帰還する旅路が孤独感たっぷりに扱われましたが、ボイジャーの飛行の足元にも及びません。

下B図は右上全体星図のなかで最近の位置を拡大したもの。サインペンの試し書きみたいに楕円状なのは、視点である地球の公転によって相対的に相手が回っているように見えるから。そして描く楕円がだんだん小さくなることは、遠ざかっていることを物語っています。太陽系を脱出してから5年以上経つのに、その間に見かけ上は1.5°も動いてないのです。遠方の天体はこんなにも見かけの動きが遅くなるんですねぇ。この見かけの動きは今年10月下旬に飛来して話題となった天体観測史上初の恒星間移動天体「オウムアムア(1I/2017 U1)」と似ています。記事内の軌道図を見比べてみてください。恒星間移動天体は英語でintersteller objectですから、現在Interstellar Missionを行っている探査機ボイジャーも、もはや惑星探査機ではなく恒星間探査機。すごい時代に生まれて良かった…。

  • ボイジャー1号・木星と土星への接近

    A.木星と土星への接近
  • ボイジャー1号の現在位置

    B.現在位置


今日の太陽2017/12/06

20171206太陽
昨夜から今朝にかけよく晴れました。明け方には零下、今朝からも引き続き晴れています。日中は思ったほど気温が下がらず、正午時点で10度に到達しました。

20171206太陽リム
左は11:10過ぎの太陽。中央に小さな黒点が見えましたが、まだ活動領域の採番はされてないようです。このまま消えてしまうのか…?右上リムのプロミネンスが盛大ですね。左上にも薄くループになったものが見えてきました。