小惑星2012TC4が地球すれすれまでやってくる2017/10/01

接近小惑星の地心距離(20170901-20171030)
少し前に流れたニュースですが、2012年10月4日にパンスターズ天文台で発見された小惑星2012 TC4が今月10月12日、地球すれすれを通ります。

この小惑星は地球に近づく危険のある小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroids)のひとつで、「アポロ群」というグループに属します。直径12mから27mの間と推定され、608.7日(=約1.67年)で太陽を一周します。

奇しくも発見直後の2012年10月12日14:30頃に地球から約96200kmのところを通過しました。地球−月間の平均距離384400km=1LDに換算すると、そのときの接近距離(地球中心との距離=地心距離)は0.25LDになりました。というよりも「地球に接近したから発見できた」と言うべきでしょうか。CNEOSによれば、今回の接近は0.13LD(約50800km)。前回の半分ほどです。驚いたことに、接近日時は前回とほぼ一緒の10月12日14:42頃になるとのこと。きっちり3周後ですね。こんな偶然あるんでしょうか。なお地表にぶつかるかどうかは地心距離から地球半径を差し引いて考えなくてはなりません、念のため。

実は1LD以内に近づく小惑星は結構あります。左上は昨日9月30日までに発見された小惑星のうち、プラスマイナス30日の間に1LD以下までやって来る小惑星の接近距離を示したグラフ。今日までに6個もあり、明日も1個(0.23LDまで接近)、そして12日の2012 TC4へ続きます。報道されていないだけなのです。接近小惑星をいち早く見つけ出してくれる天文台があるから良いだろうとは思いますが、天文台は地球を守れません。例えば上記8個の小惑星を調べると、接近後に発見されたものもいくつかあるようでした。悲観的に言うなら「今の体制ではまだまだ手遅れ」なんですね。もちろん地球衝突コースが見つかったとしてもなすすべはありません。

小惑星の大きさを見積もる手段もまだ不十分。直接観測できる大きなものばかりではないですから、発見初期段階では軌道から位置を計算、光度観測から絶対光度を計算…といった古典的方法が今も用いられます。小惑星の表面がどれくらい光を反射するか分かりませんので、絶対光度・反射率・直径の関係(下図A−D参照)を使い、小惑星が取り得る反射率(だいたいalbedo=0.05から0.25程度)を仮定して推定直径にも幅を持たせています。(※一般ニュースやSpaceweather.comなどに載る直径は中間値albedo=0.15で推定した限定値が多い。でもそれが正しいとは言えません。)ちなみに下図A−Dのグラフの形は全く同じです。絶対光度が5等暗いと推定直径は10分の1、反射率が0.2違えば直径は倍以上差が出ます。上記8個の小惑星は全て絶対光度25等未満。わずか数mから数十m、黒いか白いかも分からない岩石を、できるだけ遠いうちに見つけなくてはならないのです。ひゃあぁぁ…。

11日から12日の日本から見える時間帯で16等程度、最接近時刻(南半球でしか見えない)でも13等前後と予想され、アマチュアの小さな望遠鏡では全く見えませんが、小惑星2012 TC4が12日前後に空のどこを通るか、ステラナビゲーター星図を下に掲載しました。ご参考まで。

  • 小惑星の絶対光度・反射率・直径(10-15等)

    A:絶対光度10-15等
  • 小惑星の絶対光度・反射率・直径(15-20等)

    D:絶対光度15-20等
  • 小惑星の絶対光度・反射率・直径(20-25等)

    C:絶対光度20-25等
  • 小惑星の絶対光度・反射率・直径(25-30等)

    D:絶対光度25-30等

  • 2012TC4星図1

    10月12日 12:00まで
  • 2012TC4星図2

    10月12日 12:00−16:00
  • 2012TC4星図3

    10月12日 16:00以降


参考:
NEO最大級の小惑星フローレンスが今夜地球に接近(2017/09/01)

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