多様な気候を小さな地図から読み取る試み2017/09/02

10日間降水量(20170627-20170706)

(A)10日間・降水量実況値

10日間降水量平年比(20170627-20170706)

(B)10日間・降水量平年比

「暑い」「日差しが少ない」「雨が多い」などと言ってるうちに9月に入ってしまいました。この夏全国から届いたニュースには「日照不足」と「干ばつ」、あるいは「高温注意」と「低温注意」、はたまた「降雨期間最長」なのに「少雨」といった正反対の気象言葉が錯綜し、混乱しました。これらは複雑に絡んでいるので、いったい日本がどこへ向かっているか把握できない方も多いでしょう。

気象は地域性があるので、日本という国を十把一絡げに言い表せません。天気予報を見ていると日本の多様性を感じるのですが、それをある程度理解したいのにどうしたら良いか分からなくなることがあります。そんなとき私が閲覧しているのは次に紹介する小さな気象地図です。

気象庁サイトの「最新の気象データ」というページでは今日の降水や風、気温などの状況をまとめて地図で閲覧できます。今回はそれではなく、同ページの一角にある「天候の状況」のメニューに注目。クリックすると左図のような「ある程度の期間で気温・日照・降水量をまとめた地図」を見ることができます。私たちが把握しやすい間隔で均した天気傾向を推し量れるというわけですね。

期間は5日間、10日間、20日間、30日間、60日間、90日間から選択できます。この地図は平年値に対する比較(比率または差分)を描いてあるので、「例年より多い/少ない」といったことがひと目で分かって便利。気温と降水量に関しては平年比だけでなく実況値の地図もあります。当日の状況を示す地図なら世界中にあまたあるけれど、一定期間の傾向を示してくれる分かりやすい地図を毎日更新してくれるサイトはおそらくここが世界唯一じゃないでしょうか。とても重宝しています。

あらためて左上図を見てみましょう。これは2017年6月27日から7月6日の10日間降水量をまとめたもの。A図が実況値、つまり実際に10日間で降った雨量、B図は同期間の平年値と比較した比率です。期間中に本州以南のほぼ全域で雨が降ったことがA図から分かります。この期間は梅雨前線・台風3号・九州北部豪雨を含んでいますから、多雨を示す黄色やオレンジ、赤マークが目立ちますね。ところがB図を見ると、降水のあった地域が全て平年越えだったわけではないことも分かるでしょう。例えば九州南部や東海、東北太平洋側など。このように「地図同士を比較することで状況を深く理解できる」ことが、この地図最大の魅力と考えています。

実は記事冒頭に書いた国内気象の複雑な状況を、この地図から読み取れないかずっと考えていました。気温・日照・降雨の地図3種を、例えば7月と8月とで比較すれば「傾向の変化」が分かります。でも合計6枚もの地図を見比べるのは大変…。そこで、うまく組み合わせて見やすくする方法を試行錯誤、ある程度結果が出たのでご覧ください。

下記3枚は気温・日照・降雨それぞれ、7月期間と8月期間の地図画像を直接加工したもの。(※月集計ではなく30日集計なので末尾の31日はデータに入りません。)見やすいよう1.5倍にしました。処理過程でふたつの月を独立した色彩グラデーションに変換して組み合わたので、カラー凡例が2次元に広がってます。色が判別しやすいよう黒い背景にしました。こうすることで「7月は○○だったけど8月は△△だった」といった傾向の変化が地図1枚から読み取れます。例えばE図の奄美・沖縄あたりを見ると、全く色が違うでしょう。沖縄は7月・8月とも降水が極めて少ない(青マーク)のに対し、奄美は7月少なかったけど8月は例年の3倍以上降った(赤マーク/台風5号による豪雨)という差です。

  • 30日気温平年比の比較

    (C)30日間・気温平年比の比較
  • 30日日照時間平年比の比較

    (D)30日間・日照時間平年比の比較
  • 30日降水量平年比の比較

    (E)30日間・降水量平年比の比較

これら三種の地図を組み合わせることで、更に細やかな気象傾向が読み取れます。一例として東日本から北海道にかけてを見比べてみましょう。切り取って1枚に並べた右下図をご覧ください。

総合的な比較の例

(F)総合的な比較
まず気温を見るとエメラルドや水色、黄緑など、凡例チャートの右下寄りのマークが全体を占めています。7月気温が平年より高く、8月は平年並みかやや低いと言うことですね。では気温低下に転じた理由は日照不足でしょうか?雨が多くなったからでしょうか?それとも、それ以外の理由?これを知るため残りの地図も見ましょう。

日照の比較では、場所によって傾向がずいぶん違います。目立ったところを幾つか書き込みました。北海道だけ見ても、気温が低い理由が一様に日照不足だったからではないのです。同様に降水量比較を見ると、これまた7月と8月と傾向が多様な組み合わせ。道東は8月に日照も降水も少なくなってますから「8月冷夏は雨と無関係」と分かります。東北地方日本海側は7月8月とも多雨で「7月から雨が降り続く日照不足」、東北地方太平洋側は8月になってから多雨の傾向が強まり「8月から雨が降り続く日照不足」。晴れても涼しかったり雨でも暖かいことがありますが、そんなことも地図から読み取れますね。自分の街や周囲の多元的な気候変動が少しは分かりやすくなるでしょう。西日本はさらに複雑なので、ぜひ読み取ってみてください。

地図を描く大元のデータも公開されてますから、それを読み取って地図描画するプログラムを一本作れば済む話なのですが、せっかく地図画像があるのですから有効活用したいという発想でした。この地図もデータ欠損やマーク位置のズレがたまにあるので完璧には処理できませんが、津々浦々の多様性を把握するのにとても役立つ気がしています。今回は同じ種類を違う時期同士で組み合わせましたが、同じ時期の気温と降水を組み合わせる、といったことも可能です。いずれ機会があればご紹介しましょう。

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