氷の渦と雲の渦2017/03/27


20170326流氷
3月も間もなく終わるのに、昨日、今日と寒気が流れ込んだ日本はすっかり寒の戻りでした。当地・茨城の気温もずっと一桁台。近くのアメダスポイントで一時的に降雪が記録されたほどです。私の住まいで雪は気付きませんでしたが、台風のように風雨が荒れ狂っています。

こんな日にアレですが、更に寒い(冷たい)話題です。左は気象衛星が昨日3月26日12時に撮影した北海道からカムチャッカ半島にかけての領域(画像元:NICTサイエンスクラウド)。いわゆるオホーツク海の近辺ですね。毎年樺太の東を南下してくる流氷は1月下旬から2月にかけて北海道至近にやってきますが、衛星画像でもちゃんと分かります。雲とは色合いが違いますね。海岸から視認できた日を「流氷初日」、やってきた流氷が接岸したり沿岸にあった海氷に接着した日を「接岸初日」と言うそうです。毎年の初日や平均日、流氷の状態などは海上保安本部海氷情報センターを始め、沿岸各市のサイトなどで発表されています。

冬の気象衛星画像の楽しみが、この流氷観察でした。宇宙から見下ろす海氷は実にダイナミックで「巨大な氷塊が動き回る」ことに心躍らされます。特に北海道近海にやって来ると宗谷海峡などから流れ込む海流にかき乱され、大小様々な蛇行や渦が生まれます。それが時々刻々と変化し、見ていて飽きません。昨日は大変よく晴れており、左上画像のように雲に邪魔されず流氷が良く見えました。絵の具や墨で描く「マーブリング(墨流し)」、あるいはコーヒーに垂らしたミルク模様にそっくりですね。この模様は北海道の北東側海域だけでなく、例えば国後島と択捉島との間から南に押し出された流氷でも見えますね。またカムチャッカ半島東側を南下する流氷やロシア沿岸で見えることもあります。たまに整った形の渦を作ることもあって(下A画像)、「流氷渦」とか「流氷大回転」と呼ばれています。

冬のこの海域では低気圧と高気圧とが実に複雑な入り組み方をして、雲のほうにも大小様々な渦が見えます。(雲の場合は数千キロに及ぶ巨大な寒冷渦になることもありますね。)下B画像は約1ヶ月前の様子ですが、雲と氷との模様の対比がすばらしい。2月だと流氷の接岸状況も違うことが分かるでしょう。下C画像は1週間前の同領域。この日前後もよく晴れており、数日間の流氷変化が観察できました。冬のあいだ北半球の光量が足りないことは気象衛星画像でもはっきり分かります。春分を過ぎ、ようやくオホーツク近海も鮮明に見えるようになりました。ただ、この眩しい太陽光は流氷との別れのサインでもあります。間もなく、自然が描く複雑な模様は儚く消え去ることでしょう。

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